新たな太陽光発電の出力予測手法を活用 三次調整力②の必要量を低減へ:第58回「需給調整市場検討小委員会」(2/3 ページ)
応札量の不足などを背景に、三次調整力②などの調達費用の高騰が課題となっている需給調整市場。需給調整市場検討小委員会の第58回会合では、三次調整力②の必要量そのものの低減や適正化に向けて、新たな太陽光発電の出力予測技術の活用が提案された。
三次調整力②の必要量算出の基本形
先述の通り三次②とは、FITインバランス特例を使用する再エネの出力予測誤差に対応するための調整力であり、その必要量は過去2年分の誤差実績をもとに算出している。
これまでは、出力帯別予測誤差の過去最大相当である「3σ相当値」を算出して、事前に三次②必要量テーブルを作成し、翌日の各ブロックにおける出力予測量(日射量予測)に応じて、三次②必要量テーブルの出力帯の値を選択することで、日々の必要量を決定していた。
ただし、三次②価格高騰発生後の2024年7月以降、応札不足対策の一つとして「効率的な調達」を開始し、再エネ予測値が大きく下振れした場合は「余力活用」により追加調達することを前提として、市場での調達量を「1σ相当値」に減らす取り組みを行っている。
三次②必要量低減に向けたNEDO事業の先行反映
2021〜2024年度のNEDO事業において、日本気象協会と産業技術総合研究所は、翌日・翌々日程度先を対象とした日射量予測の高度化技術を開発してきたが、当該事業が完了する前にも、一般送配電事業者ではその成果の一部を段階的に導入してきた。
その一つが、複数の気象モデル予測値の統合である。個々の気象予測モデルには、大気のカオス性と気象モデルの不完全性に起因する不確実性が存在するため、発生頻度は低いものの、予測が大きく外れる日も生じることとなる。調整力必要量低減の観点では、この「大外し」を減らすことが重要であり、複数の気象モデルを最適に組み合わせる(統合する)ことにより、平均精度の向上と大外しの低減が期待されている。
初期に複数モデルを導入した5エリア(東京・北陸・関西・中国・四国)合計では、三次②の必要量が17%程度低減可能と試算されている。
また、わずかに異なる大気の状態(初期値)から多数の予測を行い、その平均やばらつきの程度といった統計的な性質から、最も起こりやすい現象を予測する手法として、「アンサンブル予報」がある。
気象会社はアンサンブル予報に基づく日射量の「信頼度階級予測」として2種類(高 (A)、低 (B))を設定する。一般送配電事業者は、その信頼度階級予測をもとに過去の再エネ予測誤差実績を2種類に分け、2つの三次②必要量テーブル(Aテーブル・Bテーブル)を作成しておき、翌日の信頼度階級予測によって、必要量テーブルを使い分ける手法である。
2023年度には、アンサンブル予報の導入前と比較して、三次②必要量が28%程度低減したことが報告されている。
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