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「電圧」の問題による不安定化が課題に──電力系統運用の現状と対策第5回「次世代電力系統WG」(3/4 ページ)

再エネ電源の増加や需要家側設備の影響により、「電圧」に起因した系統の不安定化リスクが指摘されている。そこで資源エネルギー庁の「次世代電力系統ワーキンググループ」では、適正な電圧維持を通じた系統の安定運用に向けた対策について検討が行われた。

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需要家が設置する「力率改善用コンデンサ」の対策

 発電所から需要家に向かって電力を供給する際、電気が送電線や変圧器等を通過するにつれ、抵抗成分により徐々に電圧が低下していき、需要家に到達する電圧が適正に保てないおそれがある。

 需要家側に「力率改善用コンデンサ(SC)」を設置することにより、需要地から無効電力を供給し、電圧を上げることができるため、旧一般電気事業者は1940年代から需要家にSCの設置を促してきた。

 SCは重負荷期に適正な電圧を維持できるよう設置したものであり、工場等が稼働しない夜間や休日にSCが投入されたままの場合、無効電力が系統に流入することとなる。分散型電源の普及が進んだ現代の軽負荷期には、SCが供給する無効電力が過剰となり、系統の電圧上昇が過大となる問題が生じている。

 このため、「高圧受電設備規程」を改定し、一般送配電事業者は需要家(需要者)にSC量の適正化・過剰SCの開放等を要請・協議しているが、SC開放に応じる需要家は現時点少数である。

 また、工場等の稼働状況に合わせてSCの量を調整する「自動力率調整装置(APFC)」の設置を促してきたが、小規模な高圧需要者のAPFC設置率はまだ低い状況にある。


図6.需要家のSC投入量適正化の状況 出典:中部電力PG

「力率割引制度」の見直し

 需要家のSC量の適正化を妨げる要因の一つが、現行の「力率割引制度」である。力率割引は、系統電圧低下の対策として需要者へSC設置を促進するため、1942年に導入されたが、その体系は80年間変更されることなく、進み力率がどれほど大きくても最大割引率が適用される制度となっている。

 この割引体系が需要者に対して安全サイドとしてSC容量を大きめとするインセンティブとなり、軽負荷時の電圧上昇を助長する結果となっている。そのため、遅れ・進み双方向で力率が適正値に保たれるよう、速やかな力率割引制度の見直しが必要とされている。


図7.力率割引制度のイメージ 出典:中部電力PG

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