「電圧」の問題による不安定化が課題に──電力系統運用の現状と対策:第5回「次世代電力系統WG」(4/4 ページ)
再エネ電源の増加や需要家側設備の影響により、「電圧」に起因した系統の不安定化リスクが指摘されている。そこで資源エネルギー庁の「次世代電力系統ワーキンググループ」では、適正な電圧維持を通じた系統の安定運用に向けた対策について検討が行われた。
ローカル系統の電圧安定性の低下
FIT制度により急速に導入が増加した太陽光発電(PV)は、当初「力率100%(電圧調整なし)」で系統に接続していたが、電圧上昇の対策として、高圧PVは2014年以降、低圧PVは2017年以降、力率一定制御(遅れ力率:高圧90%、低圧95%)が開始された。
PVの多くは配電系統に接続しており、配電系統における無効電力消費の増加によって、他エリアと比べ相対的にPV接続量の多い東電PGエリアでは、ローカル系統(配電系統の上位系統)では電圧が下がりすぎる問題が生じてきた。
東電PGによるシミュレーションの結果、154kV栃那線系統では、PV発電量が多く需要の少ないゴールデンウイーク期間に送電線1回線事故が発生した場合、「電圧安定性」の崩壊を原因とした広範囲な停電が発生するおそれがあることが明らかとなった。
このため東電PGは、154kV栃那線系統の運用容量を、従来の「熱容量の限度:982MW」から、2026年度以降は「電圧安定性の限度:690MW」に見直すこととした。2026年度ゴールデンウイークは想定潮流(902MW)が運用容量を超過すると見込まれるため、出力制御を実施する予定であり、当該系統に接続済みのノンファーム電源が制御対象となる。
なお東電PGでは、混雑系統に接続する新設の高圧PV(2025年11月以降に接続検討申込み)については、力率100%で接続するよう連系要件の見直しを行った。
太陽光発電用PCSによる電圧フリッカの問題
電圧フリッカは従来、アーク炉や溶接機などの使用により系統電圧が振動し、照明にちらつきが生じるなどの問題として知られていた。
配電系統に接続する太陽光発電は、配電系統の保安確保を目的として、パワーコンディショナー(PCS)の「単独運転検出機能」により、系統に無効電力を注入している。これにより、PV導入量の多い配電系統では全国的に電圧フリッカが発生したため、フリッカ対策PCSが順次、市場投入されてきた。なお、これは日本固有の機能であるため、太陽光を起因とする電圧フリッカ現象は海外では発生していない。
東電PGエリアの那珂変電所系統では、PV導入拡大によるアップ潮流の増加と無効電力注入の総量拡大により、配電系統だけでなくローカル系統においても電圧フリッカが発生している。
東電PGでは、当該系統に接続済みのPV所有者に対して、PCS設定変更やGW期間中の一時解列を要請するとともに、設定変更に応じない場合は、接続契約の解除等を検討することとしている。
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