中東情勢がもたらす燃料調達への影響 今後の電力・ガス供給の見通しは?:第5回「次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会」(3/3 ページ)
中東情勢の影響により化石燃料の調達見通しが不透明化する状況を受け、「次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会」の第5回会合では、石油備蓄・LNG在庫の現状や、中東情勢を踏まえた火力発電の政策的対応について報告が行われた。
今後の燃料・電力逼迫に対する備え
2020年度冬季に発生した電力需給逼迫は、LNGを中心とする火力発電燃料の逼迫による供給力(kWh)の不足が原因であった。これを踏まえ、電力広域的運営推進機関では、kWh面の需給状況(発電用燃料在庫)の見通しを公表する「kWhモニタリング」を2021年度から開始している。
広域機関では、高需要期である夏季と冬季において、発電事業者の燃料在庫・調達状況を確認し、把握した燃料在庫の状況から導出される日本全体の発電可能量(kWh)と過去データから予測される需要量を比較することで、2カ月先までのkWh余力(燃料在庫)の見通しを隔週で公表している。2025年度冬季のモニタリングは、3月31日までを対象とした2月20日公表分で終了しており、例年であれば夏季にモニタリングが再開される。
ただし2026年度については、中東情勢が長期化・深刻化するリスクも想定し、高需要期である夏季にむけて燃料在庫水準の把握と、燃料不足に伴う電力需給逼迫の兆候を早期に捉えるため、速やかにkWhモニタリングを再開し、4月上旬頃よりその結果を公表する予定としている。
現時点、LNGについては、代替調達の取り組みなどにより、短期的な供給に支障を生じる状況にはないものの、官民で危機感・緊張感をもって対応していくため、「電力・ガス需給と燃料(LNG)調達に関する官民連絡会議」を開催し、官民での情報共有の強化、安定供給に向けた取り組みなどを確認している。
また、国内事業者にLNGの安定調達に支障を来す事態が生じた場合に備え、国は2021年に、「地域連携スキーム」及び「全国連携スキーム」を整備済みである。万一、事業者間の取り組みだけでは対応できない場合、資源エネルギー庁が電力・ガス会社間のLNG融通の仲介を行う仕組みとされている。
石炭火力の供給力(kWh)の活用
化石燃料火力発電は、供給力及び調整力を供出する重要な電源であるが、CO2を排出するという課題を抱えている。このため第7次エネルギー基本計画では、火力全体で安定供給に必要な発電容量(kW)を維持・確保しつつ、非効率な石炭火力を中心に発電電力量(kWh)を減らしていく方針が示されている。
これを踏まえ、供給力(kW)の確保を目的とする容量市場では、2025年度から非効率石炭火力を高需要期のみの稼働へ誘導する措置を開始している。具体的には、設計効率が42%未満の石炭火力を対象とし、設備利用率が50%を超える電源の容量確保契約金額を20%減額し、発電電力量を抑制するインセンティブを与えている。
現下の中東情勢を踏まえると、今後の調達の不確実性が高まっているLNGを節約するためには、石炭火力の稼働を高めることが有効と考えられる。このため、緊急的な対応として、2026年度は容量市場における非効率石炭火力の稼働抑制措置を適用しないこととした。これによるLNG節約効果は約50万トンと試算され、これはホルムズ海峡を経由するLNG年間輸入量400万トンの1割強に相当する規模である。
2026年度の電力需給見通し
広域機関が取りまとめた最新の2026年度供給計画によると、2026年度は夏季・冬季のいずれも、全エリアで厳気象H1(10年に一度の厳しい暑さ/寒さ)を想定した電力需要に対し、最小予備率時において、安定供給に最低限必要な予備率3%を確保できる見通しであることが報告された。
東京エリアでは、夏季(7月1日〜9月18日)を対象とした「kW公募」が行われており、契約後には最大約120万kW(エリア予備率2.0%程度)の供給力の追加が見込まれるが、現時点これは表2に未計上である。
他方、柏崎刈羽原発6号機(定格出力136万kW・エリア予備率2.2%程度)は3月27日時点では営業運転に至ってないが、営業運転を前提に、表2では供給力として計上済みである。柏崎刈羽6号機が営業運転しない場合であっても、kW公募電源の計上により、東京エリアも予備率3%を確保できると考えられる。
今般の中東情勢は、当面の電力・ガスの安定供給に支障をきたす状況にはないことが確認されたが、今後も官民で緊密に連携し、代替調達も含めた安定供給の確保が求められる。
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