CEATEC:「叩き込むように進めてきた」──内閣IT担当室

経済の建て直しのほうが急務といわれつつも進む「IT革命」。実際の施策を検討するIT内閣担当室にも,同様のジレンマはあったようだ。

【国内記事】 2001年10月2日更新

 「CEATEC JAPAN 2001」で内閣官房情報技術担当室(IT担当室)の参事官,加藤洋一氏がセミナーを行い,IT革命の推進状況について語った。加藤氏はまず,“革命”について産業革命の例を挙げながら,「技術だけでなく,社会全般に対して大きな影響を与えるもの」と定義。ITが日本の経済を建て直すツールになると訴え,政府はIT革命を「英断を持って進める」と強調した。

内閣官房情報技術担当室の加藤洋一参事官

 政府主導のITへの取り組みは,1999年に当時の小渕内閣が提唱した「ミレニアム構想」が発端となり,2000年7月に設けられた「IT戦略本部」と「IT戦略会議」で本格化する。内閣総理大臣を本部長とするIT戦略会議は閣僚などで構成され,一方の出井伸之ソニー会長が本部長を務めるIT戦略会議は民間主導だ。その翌月には,加藤氏が所属する内閣官房IT担当室が設けられている。

 2000年11月に「IT基本法」と「IT基本戦略」をまとめた2つの組織は,2001年にIT基本法に基づく「IT戦略本部」に統合される。本部長は内閣総理大臣,メンバーは閣僚と民間有識者の両方だ。このIT戦略会議が提出した「e-Japan戦略」は,現在進められている各プログラムの基本コンセプトとなった。

 e-Japan戦略の「5年以内に世界最先端のIT国家とする」という目標は,同年3月の「e-Japan重点計画」で具体性を帯びる。重点計画では,e-Japan戦略で挙げた4つの課題(高速ネットワークのインフラ整備,電子商取引ルールの整備,電子政府の実現,人材の育成)に「セキュリティの確保」を加え,「さらに,各分野を横断する課題を4つ示した。これらは,政府が迅速かつ重点的に実施すべき施策」という,いわばアクションプランだ。

「e-Japan重点計画」の概要

 IT政策を語るときに必ず引用される「2005年度までに1000万世帯がFTTHなどの超高速インターネットに,3000万世帯がADSLなどの高速インターネットに低廉な料金でアクセスできる環境を整備する」という数字をぶちあげたのもこのプラン。インパクトのある数字にばかり注目が集まっているが,官民の役割分担を明示し,“いつ”までに“誰が”(担当省庁)やるかを記述した点が目玉となっている。

 さらに,2001年6月には「e-Japan2002プログラム」が決定した。これは「e-Japan重点計画を加速化するため,計画に欠けていたものを加え,2002年までにやるべきことを切り分けたもの」(加藤氏)。2005年までの目標を掲げながら,2002年までの計画を策定した理由は,2005年までの中間であるため。加えて,日韓共催のワールドカップが開催され,「海外の人が大挙して押しかけ,世界から日本のITを評価される年でもある」(加藤氏)という。体裁だけを先に整えようとする姿勢は,いかにも官僚的な印象を受けるが,同時にプログラムでは周辺法制度にまで突っ込んだ検討の必要性を説いている。

 たとえば住宅。既存マンションに新たな回線を敷設する場合,区分所有法のもと,管理組合の4分の3以上の賛成がなければならないことが障壁となっているが,こうした点を再検討することも含まれた。「3000万プラス1000万のインフラを敷設するには,このような制度インフラの整備も必要だ」(加藤氏)。同時に,教育機関へのインターネット接続を拡大するため,ADSLなど具体的なツールを挙げている点なども同様だ。

予算獲得がカギ

 2002年までの目標を達成するにあたり,注目されるのは平成14年度の予算だ。予算を確保できなければ,計画倒れにもなりかねない。各省庁がIT施策を実行するに必要な予算を明確化するため,要求に先立って調整基準が設けられた(9月14日にIT戦略本部が了承)。これをもとに,各省庁から260項目,3500億円程度の要求があったという。このうち,電子行政関連が2500億円を占める。「電子政府は,国民ひとりひとりにITのメリットを明示することができる。また,政府がIT需要を作り出すことにもつながる」(加藤氏)。計画では,2002年までに約3000の手続きをオンライン化するとしており,省令など,より簡単な方法で対処できる部分から可能な限り前倒しする方針だ。

「とにかく,IT革命を進めるためにふさわしい予算編成が必要だ。1800億円程度,調整率は51%程度を確保する」(加藤氏)。

 一方,IT戦略会議は,9月14日に行われた第6回の会議で「e-Japan重点計画,e-Japan2002プログラムの加速・前倒し」を採択した。特に即効性の高い施策に対してテコ入れするのが目的で,現在はNTTを除いて情報開示の義務がないダークファイバーの利用促進,電子政府の前倒し実施などが含まれている。

 加藤氏は,これまでの流れを説明し,「遅ればせながら,叩き込むようにプランを進めてきた」と述懐する。その間にはITバブルの崩壊もあり,ITより経済の建て直しが急務という意見も少なくはない。同氏も「ITで経済が立て直せるのか,思い悩むこともある」と漏らしていた。IT革命の成果が数字となって見えるのは,早くても2002年以降。それまでは,逆風と戦いながらの難しい舵取りが続く。

関連記事
▼ 経済産業省のトップダウンは大丈夫?
▼ 5年後には100Mbps常時接続が家庭に──政府「IT基本戦略」を決定
▼ IT革命は“センス”が大事

[芹澤隆徳,ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


モバイルショップ

最新スペック搭載ゲームパソコン
高性能でゲームが快適なのは
ドスパラゲームパソコンガレリア!

最新CPU搭載パソコンはドスパラで!!
第3世代インテルCoreプロセッサー搭載PC ドスパラはスピード出荷でお届けします!!