業務プロセスを変革したら、チームが強くなった――リコーの挑戦煩雑な「マニュアル作成」を効率化

煩雑かつ緻密な作業が必要とされる「グローバルに展開する製品のマニュアル作成」。そんな業務を「Confluence」を導入し劇的に効率化したのが、リコーのオフィス機器のサービスマニュアル作成チームだ。業務プロセスを変えることで、リコーのチームはどのように変わったのか?

» 2017年05月22日 10時00分 公開
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マネーの達人

 英語をはじめとして各国語への翻訳が必要な、グローバルに展開する製品のマニュアル作成。作成にあたっては、設計部門や社内のチェック部門、各国の販社など関係者も多く、煩雑かつ緻密な作業が必要とされる。

 そんなプロセスをITツールによって劇的に効率化したのが、リコーのオフィス機器のサービスマニュアル作成チームだ。導入したのは、アトラシアンの情報共有ツール「Confluence」。業務プロセスを変革することで、チームとしての意識はどう変わっていったのか。

 変革プロジェクトに携わった、オフィスプリンティング事業本部商品戦略センター所長の高井直也氏、CIP事業本部 CP事業センター CP第一事業推進室 販売推進グループスペシャリストの巴正司氏、オフィスプリンティング事業本部 商品戦略センター販売計画室の濱田啓太氏の3人に話をうかがった。

時代の変化に合わせ、プロセスを見直す必要に迫られた

オフィスプリンティング事業本部商品戦略センター所長の高井直也氏

 リコーのマニュアル作成チームの業務負荷がピークに達したのは、2013年にオフィスの複合機のラインアップを、カラー・白黒ともに一新したときだった。その数年前から、少しずつ新機種をリリースする間隔は短くなっていた。他社に対する差別化、社会の変化に合わせて、製品開発のスピードを上げていたのだ。それまで構想を立ててから1年以上かけて新製品を世に出していたのを、数カ月短縮。それにあわせて、サービスマニュアルを準備する期間も短縮されていった。

 「それまでは、試作〜量産開始までの期間に我々はマニュアルの英語ドキュメントを作成し、量産している間に多言語への翻訳をしていました。しかし、スピード感をもって新製品をリリースするために、この試作〜量産の期間を短縮する開発サイドの改善が行われ、そうすると、我々のドキュメント作成の時間も同じだけ短くなる。そこに業務負荷が集中してしまっていたんです」(濱田氏)

 13年時点での、マニュアル作成プロセスは非常に複雑だった。

 テクニカルサービス部門が、マニュアル作成区と呼ばれる部門に、作成を委託する。そこで作られたマニュアルを設計部門がチェック後ドラフト版を作成。これを北米、欧州、アジアの各販社に送付し、各販社から修正依頼がWordファイルやPDFファイルでバラバラに送られてくる。それと同時に社内の英語ネイティブも修正を入れている……。

 「複数のところからくる修正に、バラバラに対応しなければいけない状態でした。結果的に最新版がどれなのか分からなくなり、1つ前の状態に『先祖返り』するなどのミスが発生したり、どこからどんな修正が来ているかを一括管理できておらず、修正漏れがあったり……。品質が安定していないというのが、大きな問題でした」(巴氏)

 モデルのマイナーチェンジならまだしも、まったく新しいモデルを複数同時発表するとなると、マニュアルも1から複数作成することになる。現場は混乱を極めた。そして山場を乗り越えた後、現状のプロセスの限界を痛感し、やり方を一新するという決断に踏み切ったのだ。

 「考え方をガラッと変える必要がありました。これまでの方針は、なるべくたくさんの人に関わってもらい、なるべく多くの情報を共有するというもの。余裕があった時代は、それでよかったんですよね。そして東京の本社から出す情報は、マニュアルのドキュメントとして完成されたものでなければならないと考えていた。でも、そんなことはない。これからは、必要な情報だけを、必要なタイミングで、必要な人に届ける。マニュアルとしてパッケージ化されたものでなく、新しい情報は小出しで共有する。そう考えて、根本から業務を見直すことにしました」(高井氏)

コラボレーションすることで、効率化と品質向上を同時にかなえる

 プロセス刷新のために導入されたのが、アトラシアンの情報共有ツール・Confluenceだ。

 Confluenceを使えば、サーバ上にある一つの文書をチーム全員で共有しながら編集ができる。これで、一つの文書に対して、いくつもの版が存在するという状況はなくなった。WikiWorksという文章作成・編集機能に特化したアドオンを入れることで、Wordで書いているようなスムーズなインタフェースを利用でき、現状と修正前を比較して確認することもできるようになった。

 さらに、東京本社で英語版のマニュアルを完成させ、それを各販社で各国語に編集する、というプロセスを改めた。英語版のマニュアル作成時から、北米、欧州、アジアの各販社のメンバーと一緒に作業するようにしたのだ。そして英語版マニュアルの作成に量産終了時まで時間をかけ、発売後に各国語への翻訳をすると決めた。

CIP事業本部 CP事業センター CP第一事業推進室 販売推進グループスペシャリストの巴正司氏

 しかし、10年以上続いてきたプロセスを変えるのは、容易ではなかった。大きかったのが各販社からの猛烈な抵抗だ。「今までは量産前に完成版のマニュアルをくれていたのに、それが量産後にまで遅れるなんて」「作業を分担して、東京本社が楽をしようとしているのではないか」……。高井氏らは、各販社の担当スタッフと話し合いの場をもち、「これからは、コラボレーションして皆でマニュアルを作り上げていきたい」と説得した。

 「各販社に対して、我々はメーカーとして何をやるべきか、ということを改めて考えたんです。それは、設計者の思いを伝えることと、正確な数値、技術情報を伝えること。そこができていればいいと割り切ることにしました。『マニュアルの文章を作成して、英訳する』という部分は、我々の本分ではない。だったらそれが得意なところに力を貸してもらおうと」(高井氏)

 はじめは変化に消極的だった各販社も、Confluenceでコメントを書き込み、共有しはじめると、一気に協力的になった。これまでは、マニュアルが完成してから「ここの翻訳はもっといい訳がある」といった指摘のメールを出していたのが、今度は作成時にコメントを入れれば、それをすぐマニュアルに反映する。共同作業をしているという意識が高まり、以前より、コミュニケーションが活発になった。

 「各販社のメンバーはこれまで、我々が作ったマニュアルをレビューするという意識だった。それが、プロセスを変更してからは『自分も一緒にマニュアルを作る一員なんだ』という当事者意識が生まれたのだと思います。足りない部分があれば、それは自分のせいでもある。各販社の教育担当も、マニュアル準備や現場の教育がスムーズになったという声が届いています」(巴氏)

修正数とコストが減少、モチベーションはアップした

 全員が気軽にコメントを書き込めるため、お客様と接するサービススタッフの要望も吸い上げやすくなった。集まったコメントは、Confluence上にナレッジとして蓄積され、それを次のマニュアル作成でも生かすことができる。こうして効率化と品質の向上、両方がかなえられていった。

 プロセスを変革した結果、リリース後のマニュアル修正件数も減少。それまで、10件以上発生していた修正が、1件前後に抑えられるようになった。作成コストも2割減。業務負荷も、マニュアル作成期間を長くとれるようになったため、ピーク時の負荷が平準化できるようになった。そして何より、業務に対するモチベーションが変わったという。

オフィスプリンティング事業本部 商品戦略センター販売計画室の濱田啓太氏

 「それまでは、量産前に早くマニュアルを完成させなければというプレッシャーのなか、情報が不確定なまま作成せざるを得なかった。その結果、リリース後の修正が多発していました。変更・修正対応で残業も増えるし、マイナスな仕事をやっていると精神的な負担が大きかったですね。プロセスを変えてからは、量産時の変更情報は全て反映することができ、修正件数が減りました。また、皆でコラボレーションして一つのものを作り上げるという意識が生まれ、前向きに取り組めるようになったんです」(濱田氏)

 今回のプロセス変革により、大事なのはパッケージとしてのマニュアルではなく、情報そのものであると認識できるようになったという。巴氏は今後、マニュアルという概念すらなくなる可能性があると語る。

 「Confluenceで情報を共有、蓄積するようになって、情報に対する考え方が変わってきました。必要な情報を小出しで随時共有するほうが、現場の役に立つ。それであれば、マニュアルはもういらないですよね。必要な情報に、適切にアクセスできるツールがあればいい。あとは、情報の発信元が東京本社だけである必要もないと気付きました。各国の販社が独自で作っている資料やそこに集まる情報も、どんどん共有していけばいい。それぞれの得意分野を生かして、よりよくコラボレーションしていければいいと考えています」(巴氏)

 さらに、製品のサービスを提供するにあたり、教育が本当に必要なのかという問いも生まれてきた。

 これまでは、製品の全てを把握しているのは開発をおこなっている東京の本社であり、問題があれば全て情報は本社に集められるようになっていた。しかし、「ネットワーク関係のトラブルに関しては現場の人間のほうが詳しい」という状況が生まれてきた。ピラミッド型で上下に情報をやり取りするのではなく、横につながって問題を共有して解決策を探る。本社に報告するよりも、同じような仕事をしている別の国のチームメンバーとSNSで連絡をとったほうが早いかもしれないのだ。

 今回のリコーのマニュアル作成におけるプロセス変革は、国の壁を超え、本社と販社という枠も超えてコラボレーションが成立した例として、他業務の参考にもなり得るはずだ。

チームの進化形

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提供:アトラシアン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2017年9月24日

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