守りのITを攻めにつなげる! 日東電工の「グローバルで戦うための」業務改革会社を強くする「BPaaS」とは?

企業にとって経費精算や購買業務は現在、リソース・コストともに大きな負担になっている。そんな中、IBMのBPaaSを活用し、業務変革に成功したのがNittoだ。Nittoはどのようにして、コスト削減と生産性向上を実現したのか?

» 2018年01月09日 10時00分 公開
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 経費精算や購買業務をしない企業はいない。しかし、事業の成長や複雑化によって、そうした業務のリソース・コストは大きな負担になっている。企業を支えるはずの業務が、むしろビジネスパーソンの悩みのタネになり、成長を阻む要因になってしまうのだ。

 日本のモノづくりでトップを走る日東電工(以下、Nitto)も、そんな悩みを抱く企業の1つだった。だがNittoはトップダウンで業務変革を進め、すさまじいスピードでコスト削減と生産性向上を実現。会社のリソースを主力事業や新規事業に振り分け、さらなるビジネスの成長を果たそうとしている。なぜNittoは業務改革を成功に導けたのだろうか?

事業拡大のため、間接部門にメスを

 Nittoは、世界の各エリアでシェアNo.1製品を展開するモノづくり企業だ。液晶パネル用偏光板、半導体ウエハー保護フィルム、電子部品の製造工程で使われる熱剥離シートなど、ハイテク産業に欠かせないトップシェア製品をそろえている。

 Nittoが掲げる戦略は「グローバルニッチトップ」と「エリアニッチトップ」。ニッチな分野に特化することで、グローバルで勝ち抜いていく方法論だ。さまざまな「ニッチ」をつかむために、事業の多軸化を進め、取り扱う製品は1万3500種類以上。現在、世界27カ国に約100社のグループ会社を展開しており、売り上げの海外比率は約7割と、グローバル企業への歩みを着実に進めている。

 堅調な成長が続くNitto。だがNitto 専務執行役員 CIO経営インフラ統括部門長の表利彦氏は「経営的な危機感を覚えている」と語る。

 理由は事業ポートフォリオの偏りだ。2017年3月期の売上高を事業別に見ると、オプロトニクス事業(ディスプレイ材料等のエレクトロニクス商材)が売り上げの約50%、インダストリアルテープ事業が約40%を占めている。理念として掲げる「多軸化」と反し、特定の事業カテゴリーが多くを占める構造になっている。

 「ニッチトップ」を目指すNittoは、収益の軸を増やすために、より多くの事業に力を入れる必要がある。しかしそこで壁になったのが、間接業務の膨大なコストだ。

日東電工 専務執行役員 CIO 表利彦氏

 「複合ビジネスモデルの企業として、より多軸化へと事業のかじを切らねばなりません。しかし現状のまま業務が複雑化すれば、間接業務のコストが膨大になる懸念がありました」(表氏)

 Nittoでは、間接部門のオペレーションを各拠点で自由に定めていた。業務システムは独自に採用され、業務プロセスは物流と商流が複雑に絡み合う。拠点をまたがったグループ間の取引も少なくなかった。

 事業ポートフォリオの多軸化が進めば、業務プロセスがその分複雑化し、間接部門の負荷が高まるのは明らかだ。事業の成長を支える経営インフラを強化することが先決だった。

 「新業務を設計するにあたり、間接部門でNittoが独自性を出しても、競合他社に勝てるわけではありません。ならば、世間のベストプラクティスを積極的に取り入れたほうがいい。間接業務はグローバルに集約させ、シェアードサービス化やBPO(Business Process Outsourcing:業務プロセスのアウトソーシング)活用を進める方針としました」(表氏)

「BPaaS」で業務プロセスをアウトソーシング

 業務改革はトップ直下の元、部門を横断した「サムライプロジェクト」を編成して進められた。業務システムの刷新では、製造や技術部門などを「攻めのIT」、間接部門の一部分の業務以外を「守りのIT」と位置付けた。特に「守りのIT」の部分では、既存の基幹システムに追加する形で、SAPジャパンの調達・購買クラウド「SAP Ariba」や、コンカーの出張・経費管理クラウド「Concur Travel & Expense」を採用した。

 これらクラウドサービスの導入に加え、業務プロセスのアウトソーシングを実現したのがIBMのBPaaS(Business Process as a Service)だ。従来のBPOでは、間接部門の業務プロセスに合わせてシステムをカスタマイズするが、BPaaSは業務プロセスを標準化し、SaaS(Software as a Service)などのシステムに合わせた後にアウトソースする。拠点間に生まれていた業務プロセスの差異を無くすことを目的に、間接業務をクラウドサービス上に集約した。

 「システムを『導入すること』が目的ではありません。システムと業務は表裏の関係にあり、業務を適切な形に整えることでシステムが有効に機能します。IBMには、各部門へのシステム導入である『縦軸』と、業務プロセスの標準化などの『横軸』の双方を整理してもらっています」(表氏)

 Nittoの「サムライプロジェクト」は、構想段階から海外メンバーも含めて行われた。グローバル展開後のゴールを共有することで手戻りを防ぎ、改革を迅速に進めるためだ。また、トップダウンのプロジェクト体制は強い推進力も生んだ。業務の変更も段階的に行うこと無く、システム導入と同時に即時実施されたという。構想から本番導入まで半年というスピードで実現したのも、体制の強化によるところが大きい。

 「間接部門の集約を提案した当初は、内容を全く理解してもらえませんでした。トップを含めて推進する中で、徐々に周囲の意識が向上してきたことを実感します。新システムは2017年1月から日本で稼働を開始し、現在中国へと展開を進めています。今後は長期に渡って改革を支えるために、トップダウンのプロジェクトから専任の統括組織の編成へと、体制を変えていく必要があるでしょう。AIやRPA(Robotic Process Automation:ロボットによる自動化)も積極的に採用していきたいですね」(表氏)

アウトソースは「守り」から「攻め」へ

 Nittoの業務を変えたIBMの「BPaaS」。実は提供するIBM自体、BPOによって成長を加速させてきた企業だ。

 IBM自身も年間約8兆円(2016年度)もの調達を行う事業会社であり、間接業務のコスト削減は大きな課題だった。かつては拠点ごとに個別のルールで購買が行われ、業務プロセスが標準化されていなかったのだ。そこで1993年、IBMは「One IBM」を掲げ、事業や地域の枠を超えて世界を1つの国とする「グローバル標準購買プロセス」を導入する。世界300以上あった調達拠点を4つに集約し、全社的に購買量を集約させることでスケールメリットも生まれた。同様に、経理や財務、人事についても集約や標準化を行い、BPOも積極的に利用している。

IBMもBPOによって改革を成し遂げた企業の1つ。自社で積み上げたノウハウを生かしサービスを展開している

 BPOによって最も期待される効果はコストの削減だが、IBM コグニティブ・プロセス・サービス アソシエートパートナーの毛利光博氏はこれを「守りのアウトソース」と表現する。

日本IBM GBS事業 コグニティブ・プロセス変革 アソシエイト・パートナー 調達リーダー 毛利光博氏

 「人手不足により優秀な人材の確保が難しいいま、間接部門の業務をアウトソースすることで社内のリソースをコアビジネスへ振り分けたい、と相談されるケースが増えています。コスト削減を中心とした『守り』から競争力確保を目的とした『攻め』へ、BPOの目的が変化しているのではないでしょうか」(毛利氏)

 近年は、業務に求められるスキルレベルが高くなってきている。そのため、従来のBPOではカスタマイズのコストが非常にかかってしまうケースがある。その一方で、資産を保有することなく利用できるクラウドのSaaSパッケージが充実したことで、短期間でプロセスの標準化を進めることが可能になった。

 BPaaSのメリットは、今後ますます大きくなっていく。クラウドの利用によってシステム側には多くのデータが集まることになり、業務内容の可視化や、ビッグデータの解析を踏まえた高度なサービスも期待できるのだ。AI(人工知能)などを活用し、より自動化を進めることもできるだろう。

BPOとSaaSを組み合わせたBPaaS。今後の「進化」にも期待できる

日本企業で業務改革が進まない理由

 経費精算や購買業務など、業務が多岐にわたる間接部門のコストを圧縮したい――そう考える企業は少なくない。「宝の山」を掘り起こすべく、数々のソリューションが生まれ、多くの企業がこの課題に取り組んできた。しかし、目覚ましい効果を得られた企業は多くない。改革が進まない理由はどこにあるのだろうか。

 「欧米企業ではCPO(Chief Procurement Officer:最高購買責任者)として購買権限を一括管理する役員が置かれていますが、日本の場合は事業部ごとに購買を行うケースが多く、全社的な購買権限を持つ組織を設けていない場合がほとんどです。また、改革には権限のみならず、ユーザーを説得するためのスキルセットも必要になります。私どもがBPaaSを導入する際は、アウトソースに加え、統括組織の立ち上げからお手伝いさせていただいています」(毛利氏)

 また、コンカー ソリューション統括部 部長の柏原伸次郎氏は、経費の「ルール」にも一因があると話す。

 「欧米の先進企業に比べ、日本企業は経費の規程が細かく、拠点ごとのローカルルールも多く存在します。その結果、経費精算システムの入力項目が多岐にわたり、チェックには『職人』のようなスキルが必要となるなどの弊害が生まれています。ルールやプロセスが統一されていれば、チェックも自動化でき、集約やアウトソーシングが容易になるはずです」(柏原氏)

 では、IBMのBPaaSによって間接業務はどのように変わるのだろうか。例えば、「SAP Ariba」では、物品やサービス材を問わず調達・購買業務全般をクラウド化できると共に、280万社以上が参加する取引プラットフォーム「Ariba Network」への接続が可能となる。日本企業も約2万社が参加しており、入札を募ることで調達コストの削減が期待できる。

 SAP Ariba APJ COO オフィス バリュー・パートナーの小野寺富保氏はBPaaSとSAP Aribaが連携するメリットについて「過去の積み上げ」を挙げた。

 「調達購買を効率化してきたIBMの経験則やナレッジを踏まえ、SAP Aribaが世界トップクラスのプラットフォームを提供してプロセスを確立する。言わばBPaaSは、世界のベストプラクティス同士が融合したサービスなのです」(小野寺氏)

 また、経費精算SaaS「Concur」と連携すれば、モバイルでの申請・承認や交通系ICカード連携といった利便性向上のほか、分析機能を用いれば不正検知も可能だ。外部サービスと連携すれば、タクシー配車やホテル手配、レンタカー利用などの経費もConcurに自動送信される。

 「導入にあたり、どの部署がどのように責任を持つか、と悩まれるお客さまが少なくありません。利用者をはじめ、経理、人事、マネジャー職など、経費精算に関わる人間というのは意外と多いのです。BPaaSとの連携では、豊富な導入経験を持つIBMが導入をサポートするため、メリットを感じていただけると思います」(柏原氏)

さらに成長するBPaaS

 IBMのBPaaSは、先端テクノロジーを用いたソリューションも意欲的に取り入れている。IBMのコグニティブ技術である「IBM Watson」(以下 Watson)もその1つ。

 例えば「明日までにプレゼンで使うプロジェクターが欲しい」といった状況でも、モバイルアプリ上で購買プロセスが直ちに完了する。Watsonの自然言語処理を用いて、ユーザーのメールから自動的に要求を読み取り、対話型で機器の候補を絞り込んでくれる――という、熟練のコンシェルジュが常にそばにいるような未来が実現するのだ。パスワード管理などのヘルプデスク業務の自動化や、業務のリスク検知や戦略立案に役立てることもできるだろう。

 「BPaaSは2段階の成長を遂げると考えています。先端テクノロジーの取り込みによる機能面の進化が第1段階。BPaaSが広く普及した後、データ活用が重視されるのが第2段階です。各社でアウトソーシングが進めば、業務内容で他社との差が生まれなくなります。蓄積されたデータからいかに洞察を引き出すかが、差別化の重要な鍵となるでしょう。アナリティクスやコグニティブの人材育成が、今後大きな価値を生むことになるかもしれません」(毛利氏)

 「業務の効率化」は企業の永遠の課題である。しかし場当たり的な効率化には限界があり、やがて成長機会を失うことにもなりかねない。IBMのBPaaSは成熟したSaaSパッケージを導入するだけでなく、業務プロセスそのものにもメスを入れる。高く跳ぶために、足腰から変えていくのだ。コスト削減の「守り」から、人材活用の「攻め」へ。BPOの実績を積み上げてきたIBMだからこそ、BPaaSによって見える景色がある。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2018年2月8日