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» 2018年02月14日 10時00分 公開

「部下は何も考えていない」と思っていませんか?:リーダーは「部下のための10分」を作れ! チームを変えるコーチングの力

欧米では一般的になっている「コーチング」。日本企業ではどのような力を発揮するのか? 日本ユニシスの川端絵美さんに聞いた。

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 米国で発展し、欧米のエグゼクティブの間では一般的に取り入れられているコーチング。日本では1997年に紹介され、組織マネジメントに置ける人材開発手法として認知度が高まってきた。しかし「実践したことがない」「実態が分からない」という人も多いのではないだろうか。

 コーチングは、エグゼクティブの成長や変化を促すだけでなく、チームにも良い変化を与える可能性を持っている。そんなコーチングについて、日本有数のコーチング・ファームで数々のクライアントを担当し、現在は日本ユニシスで教育関連の施策立案と運営を担当している川端絵美さんにうかがった。

川端絵美さんに聞く「チームを変えるコーチング」

対話によって行動を変容させる「コーチング」

――まず、コーチングとはどのようなものなのか、教えていただけますか。

 コーチの語源は「馬車」です。大切な人や大切なものを、目的地に送り届ける役割を担う馬車の意が転じて、相手の目標達成を支援する人をコーチと呼ぶようになりました。米国でコーチングが普及され始めたのは1970年代だと言われていますが、今では世界中で、さまざまな目的、流儀でコーチングが行われています。

 一言で「コーチング」と言っても多くの捉え方があるのが実態ですが、私はコーチングを「相手の目標達成に向けて相手の自発的な行動を促す対話の手法」と定義しています。「自発的」という部分がポイントですね。報酬を与える、恐怖で支配するといった方法で目標に向かわせることもできるでしょう。そうではなく、コーチングはその人が本当にやりたいことを明らかにし、目標達成の道筋を自ら考え進んでいく自発性を引き出すための対話です。

――「コーチ」という言葉には、何かを教えてくれる人、引っ張っていってくれる人、というイメージがあります。

 そうですよね。スポーツのコーチにはそういう要素が強いと思います。でも、ビジネスにおけるコーチングではアドバイスはしません。コーチングのメインとなる対話の技術要素は「質問」です。他にも傾聴、フィードバック、承認などのスキルも使いますが、まずは質問がないとコーチングが成り立ちません。さまざまな角度から、相手の視点が及んでいないと思われるところや、相手の本当の思いが隠れているような部分に向けて質問を投げかける。それにより、相手が「物事がうまく進んでいないのは実はこういう背景があったのかもしれない」「私が本当にやりたいことはこういうことだったんだ」「もしかしたらこういう考え方もあるかもしれない」と気付いて行動する。その行動に対し、次回のコーチングで振り返る。そういったことを繰り返し、行動変容を起こしていくのです。

 実は、私たちは日常のなかで、自分自身に何百個もの問いを投げかけ、自分の行動を決めていると言われています。朝起きてからずっと、「今日の天気は?」「今日は誰と会う?」「だとしたら何を着る?」……といった質問を自分にして、それに答えるというかたちで行動を選択している。でも何もせずにいると、その問いのパターンは一定になっていくんです。同じ問いを投げかけ、同じ行動を選択する。仕事においても同じで、そうするとなかなか変化を起こせなくなる。成長も止まってしまいます。そこでコーチングを受け、自分にはない視点からの問いを投げかけてもらうことで、自分の枠を超えていくわけです。

――米国では、エグゼクティブにコーチを付けるのが当たり前になっていると聞いたことがあります。日本でも、コーチングを取り入れる企業は増えてきているのでしょうか。

 増えていると思います。日本企業におけるコーチングの導入形態には大きく2つのパターンがあります。1つは、主に欧米で普及しているトップ層に向けたエグゼクティブ・コーチング。エグゼクティブがコーチからの問いを受けることで、自分の考えを整理し、視野を広げ、自身のミッション達成を図るためにあるコーチングです。コーチが「壁」となりエグゼクティブが「壁打ち」をしているようなイメージです。

 日本にはある一定の役職にもなると「もう俺はここで終わりだからこのまま波風立てずに過ごすよ」というタイプのエグゼクティブもいますが、欧米ではエグゼクティブ1人が担う責任は大きく、成功すれば相応の対価も得られる代わりに失敗すれば即クビというケースもあります。自身のパフォーマンス向上に貪欲なエグゼクティブであればあるほど、コーチングは選択肢に入ってくるのだと思います。

 もう1つは、主にマネジャー層がコーチングを学び、社内にコーチングの対話ができる人を増やすことで組織風土を変えていくというパターン。私が前職で見た限り、日本の導入事例としては後者が多かったですね。日本ではエグゼクティブ1人に投資をするより、現場の力を広い範囲で高めていこうという志向があるためだと考えています。

部下のための純粋な時間を取れているか

――後者の企業はどういう目的で、コーチを社内に増やそうとしているのでしょうか。

 企業によってさまざまですね。例えば「コミュニケーションロスをなくすことによる生産性向上」「組織のタコツボ化を解消し組織を超えて貢献しあう文化をつくる」など、企業の業績向上において必要な組織の変化を起こそうという狙いがあります。会社や上司に「組織を変化させろ」と言われて受身で取り組むのではなく、部下側が主体的に考え自発的に行動を起こしてほしいと考えるので、コーチングがフィットするのです。

 またこの取り組みを通じて自ら考え自ら動くということを経験し、それを業務の現場においても発揮してもらいたいという意図もあります。今のマネジャーは本当に忙しい。プレイヤーとしての役目も持つマネジャーも多い中、部下がいつでも指示を仰いでくるようだと大変です。また、日々変わり行く環境において、過去の成功体験による指示がいつでも有効とは限りません。状況の変化にスピーディーに対応しチームとして成果をあげていくために、自律的な部下を育てたいというのは、マネジャー共通の思いなのだと思います。

 ちなみに日本ユニシスでは、4年ほど前からコーチングを取り入れています。それは、マネジメント層が部下に対してコーチングの対話をおこなうことを推進し、最終的には事業そのものを変革するリーダーの育成につなげよう、という目的からです。

――事業を変革する、とは?

 日本ユニシスは今年創立60周年を迎えますが、これまではシステムインテグレーターとしてお客さまのITインフラを構築し、守っていくことを軸に事業を展開してきました。もちろん、それは大事な事業として継続しつつ、社会やお客さまのビジネスがどこに向かっていくのかを予見し、お客さまに最もふさわしい形のソリューションやサービス、さらには業界を越えたビジネスエコシステムをつくり出す企業に変わろうとしています。こういった新しいビジネス、イノベーションを生み出す企業風土、人財を増やそうとしているのです。

 とはいえ一足飛びにイノベーションを起こせるようになるわけではなく、まずは自分が置かれた環境の中で小さな行動変革を起こしていくことが重要だと考えています。そのためには、業務の在り方や組織の状態、自身の振る舞いなどに関して客観的に見つめ「もっと工夫できる余地はないか」「自分達は本当にお客さまに貢献できているのか」「自分はリーダーとしてどう成長すべきか」など、めまぐるしい日常の中では考えないようなことを考える機会が必要になる。そこで、上司が部下とコーチングを実践し、問いを投げかけ、考えさせる文化を根付かせていこうとしているんです。

日本ユニシスもコーチングによって変わろうとしている

――それは、とても気の長い挑戦ですね。

 はい、確かにそうですが、特別な人間だけがイノベーションを起こすのではなく、組織のあちこちからイノベーションが生まれる風土を目指し、地道な取り組みを続けています。そのために多くの施策を展開していますが、今年度はシステムエンジニアの部門に所属するマネジメント層約300人を対象にコーチングのワークショップを開催し、当社でコーチングを活用する意義は何か、具体的な業務の場面を想定しコーチングが機能するのはどんなケースか、などについてディスカッションをしました。

 この場で最も伝えたかったメッセージは「部下のために時間を取りましょう」です。コーチングにおいては主体は部下です。部下の目標達成のために上司が時間を割く。コーチングのスキルが伴わないからまだできない、としり込みしがちですが、スキルは後からどうにでもなります。コーチングになっていないとしても、上司が部下の成長を願って部下のために時間を取る、ということが行われていれば、当社の社員の多くはその上司の思いに答えようとするのではないかと考えています。

――まずは時間を取るところからがスタート、ということですね。意外と「部下のための時間」は取られていないかもしれません。

「部下のための10分」が関係性を変える?

 私自身、このことを前職のコーチング・ファームに入社して知った時、衝撃を受けたんです。その前に十数年勤めていた会社で、10分でも上司が私の成長のためだけに時間をとってくれたことがあっただろうか、と考えてしまいました。上司と1対1で話すことはありましたが、それは現状や進捗(しんちょく)など、「上司が聞きたいことを聞く」もしくは「仕事を成し遂げる」ための時間なんですよね。部下のための時間を取るには、上司が「こいつは必ず伸びる」と信じていること、つまり部下へのリスペクトがあることが前提となります。コーチングの文化が浸透したら上司部下の関係性が変わる、日本の会社は大きく変わるのではないか、と思いました。

 コーチングを学んだ当社のあるマネジャーは、「これまで、自分の部下は何も考えていない、と思っていた。でもコーチングで相手のための質問をし、部下が話すまで我慢して待つことを心掛けていたら、だんだんと話してくれるようになり、実は色んな思いや深い考えがあることが分かった。相手が考えていないのではなく、私が考えさせていない、話させていないだけだったと気付いた」と言っていました。この経験を通じて部下への信頼感を高め、仕事をより広い範囲で任せられるようになりました。部下のほうも、自分のやりたいことを上司に伝えられるようになり、また権限も与えられ、より仕事における達成感を感じられるようになっています。

質問と褒め言葉で組織の文化を変えていく

――コーチングの手法が導入されると、チーム、ひいては企業全体が大きく変わりそうですね。

 でも、コーチングは万能のマネジメント手法ではないんですよ。「重要で緊急性の高いこと」には向いていません。火事が起きている現場で、「どうしてこの火事が起きたと思う?」と聞いている余裕はないですよね。それと同じで、スピーディーな決断が求められる場面では、質問ではなく上司のティーチングや指示が優先されるべきでしょう。

 逆に、「重要だけれど緊急ではない事柄」、つまり今すぐ解決できなくても問題ないけれど、3年後、5年後も手を付けていなければ致命的になるようなテーマには、コーチングが向いていると言われています。例えば人材育成やキャリア形成、チームの文化を変えていくといったことですね。

――コーチングでチームの文化が変わった、という事例はありますか?

 リーダーの問いかけは、組織の文化にとても大きな影響があると考えられます。私は前職で数多くの会社を訪問する機会がありましたが、「よく部下にする質問」や「よく上司にされる質問」を聞くと、会社によって面白いほど違う答えが返ってきます。そして組織で多用されている質問と、社員の状態にはなんとなく関連がある気がします。例えば「今月の数字は大丈夫だろうな?」という類の質問が多い組織では、なんとなく自信のなさそうな、上司の反応を常に伺うような社員が多い。恐らくこういった組織では、社員の頭の中は日々の売り上げのことでいっぱいで、他のメンバーへの貢献やサービスの品質向上などは二の次になりがちなのではないでしょうか。

 有名な企業で言うと、ザ・リッツ・カールトンでは、従業員の間で始終「今日も俺たちのホテルは世界一か?」という問いが飛び交っているそうです。その問いに従業員一人一人が向き合い、世界一のホテルにするために自分ができる行動を起こすことで、リッツは顧客を感動させるサービスを提供し続けているのだと思います。

 「何を承認するか」も組織の文化を表します。相手の変化や成果を言葉で伝えることをコーチング用語で「アクノレッジメント」と言います。例えば、「会議で発言を積極的にしていたね」「後輩によく声かけをしているね」といった、その人の行動に関して気付いたことを伝える。自分の行動を上司から承認されることで、チームで求められる振る舞いがどういうものかを認識し、その行動をもっと増やしていこう、と思うようになる。行動変容が起こるわけです

――質問や褒め言葉が、組織や企業の文化の形成につながるんですね。

 コーチングの技法を習得しようと思うと大変なイメージもあると思います。いきなり本格的にコーチングをスタートするのではなく、マネジャーの方々は、部下の成長のためにどれくらい時間をとっているか、自分が日々の仕事のなかで部下にどんな質問をしているか、何を褒めているか、といったことから意識してみてはいかがでしょうか。そして、起こしたいチームの変化に向けてどんな質問や承認の仕方がありうるのかを考えてみる。活力があって創造的なチームをつくる第一歩になると思います。

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