Review:「あほ甲冑年」って何? ATOK15ベータ版をちょこっといじる

【国内記事】 2001.11.02

「あほ甲冑年」――ジャストシステムから編集部に届いた封筒をウキウキしながら開けて「ATOK15 for Windows」のベータ版をインストールした。初めに変換したのが「あほかっちゅうねん」。リアル関西人によるベータ版テストは,こうして幕を開けた……。

 少年時代を神戸で,学生時代を京都で過ごした私は,今でも満足に東京弁を操ることができない。そんな私が,ATOK15の関西弁サポートを聞いて躍り上がったのは言うまでもない。このソフトさえあれば,すべての話し言葉を変換してくれるというのだ。

 あまりチャットをする機会はないが,友人と交わすメールは関西弁で書く。私が電子メールを使い出したころのATOKは,「わからん」(“分からない”という意味)を「輪からん」と変換していたように記憶している。こうした部分は,今回のバージョンで改善されている。ATOK15では,一般モードだと「和下欄」と変換するが,話し言葉関西モードにすると,「分からん」になるのだ。似た言葉では,「知らん」(知らない)も完璧だ。「氏欄」にならない。素晴らしい!

 レビュー第1弾が「あほ甲冑年」だったものの,少しはATOK15の関西弁機能の一端を見ることができた。では次に,ジャストが解説書に記している例文を入力してみる

ATOK15 I
記者のMS-IME
明日一緒に行かへん 明日一緒に居か辺
分厚い本買うてきた 分厚い本稿てきた
日記は書かへんよ 日記派か可変よ
勉強してはります 勉強して貼ります
ちゃうんちゃう 茶運茶う
わりかし気になる 割りか式になる
それすげえな それすげ恵那

 解説書に書かれているのだから当たり前だが,見事に変換できている。特筆すべきは「買うてきた」で,これはそのまま関西弁で「こうてきた」と入力したものだ。これをちょっと複雑にして,「買うてきはるんとちゃいまっか?」もうまく変換できる。

 なお,それぞれの意味は,「明日一緒に行きましょう」「分厚い本を買ってきた」「日記は書かない」「(目上の人が)勉強している」「違うのではないだろうか」「結構気になる」「それは凄いね」だ。

 しかし,ATOK15の奮闘もここまでだった。「あほちゃい万年パーでんねん」(万年→まんねん:あほではありません。パーなのです)「地すうたろか」(地→血:血を吸ってあげようか)「あの厨房どついた留年」(厨房→中坊,留年→るねん:あのガキをどついてやろう)……とイタい変換の連続だ。

 中でも「あの厨房どついた留年」には参った。これでは,「留年している学生が,あのキッチンをどついた」という表現になってしまう。

注:「どつく」は,「殴る/蹴る」など,物理的な暴力を振るうことを指す。東京弁にはうまい訳語がなさそうなので,そのまま表記した。

 では,このレベルで挫折したATOK15に,さらなる試練を与えてみよう。次なる変換対象は,「じぶんいっつもどこでばばすんの?」(あなたは,いつもどこで大便をするのですか?)。この高尚な表現をATOK15は「自分いっつもどこで馬場寸の?」と変換してしまった……。

 ちょっとスパルタが過ぎたようなので,やさしい例文を与えることにした。名曲「大阪で生まれた女」の歌詞をそのまま使いたいのだが,著作権に引っかかるかもしれないので,「おおさかでうまれたおとこやさかい」(大阪で生まれた男ですから)を変換してみる。結果は「大阪で生まれた男や境」。

 ATOK15,ベータ版とはいえ,轟沈……。

 そのほか,「礼子ー」(レイコー:アイスコーヒー)「一ビル」(いちびる:格好をつける,えらそうにする)「ちゃい万野や」(ちゃいまんのや:違うんですよ)「小夜か」(さよか:そうですか)などが変換できなかった。

 このように,ATOK15のベータ版は,関西弁対応を高らかに謳いあげるレベルに達してはいない。しかし私は,製品版を楽しみにしているし,今後の機能強化に期待している。そして,製品版が出たら,さっそく使おうと思う。

 そもそも,大昔のワープロは,連文節変換すら満足にできなかったのだ。これは,関西弁対応のファーストバージョンだ。

「関西弁に対応したろやないかい!」というジャストの心意気を,暖かく見守ってやろうやないですか。

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[こてこて関西人のI記者 ,ITmedia]