エンタープライズ:ニュース 2002/11/12 13:51:00 更新


基調講演:成長軌道回帰の起爆剤は「Unbreakable Linux」や「Collabolation Suite」

11月11日、カリフォルニア州サンフランシスコでオラクルの年次ユーザーカンファレンス「OracleWorld 2002 San Francisco」が開幕した。オープニングの基調講演には、CFOを務めるジェフ・ヘンリー氏が登場し、財務の観点からオラクルの強みや経営の健全性を約5000人の聴衆にアピールした。

 意外にも「OracleWorld 2002 San Francisco」の基調講演のトップは、オラクルのCFO(最高財務責任者)を務めるジェフ・ヘンリー氏だった。

 11月11日、カリフォルニア州サンフランシスコのモスコーニセンターでオラクルの年次ユーザーカンファレンスが開幕した。オープニングの基調講演には、ホスト役のマーク・ジャービス上級副社長兼チーフマーケティングオフィサーに招かれ、ジェフ・ヘンリーCFOがステージに上がった。同社の収益性向上に責任を負う彼は、財務の観点からオラクルの強みや経営の健全性を約5000人の聴衆にアピールした。

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昨年の来日時には顧客企業のトップを集めてセミナーを行ったヘンリーCFO

 なお、オラクルでは期間中、2万3000人以上の顧客や開発者、パートナーらが参加すると見込んでおり、同社の年次ユーザーカンファレンスとしては「過去最大」の規模になるとしている。

 米オラクルの2003年度第1四半期(2002年6月〜8月)は景気後退のあおりを受け、売上高(94億ドル)、利益(22億ドル)どちらも前年同期比で14%減という厳しい内容ながら、営業利益率は36.1%まで向上させた。「Oracle E-Business Suite」を顧客に売り込む同社は、自らインターネットベースのエンタープライズアプリケーションによってビジネスプロセス統合を実践し、コスト削減に成功している。

 ヘンリーCFOは、昨年5月に来日したとき、「企業全体の収益性向上に責任を持つCFOにとって,インターネットは多くのチャンスを与えてくれる。私の30年のキャリアの中でもこれほどのチャンスはない」と話している。

 2001会計年度(2000年6月〜2001年5月)には、E-Business Suite 11iで統合されたCRMやSCMのアプリケーション群を導入し,顧客へのサポートやサプライヤーに対する見積り依頼などをWeb化することによって,10億ドル以上の大幅なコストの節約が可能なことも実証した。

 そうした厳しいコストの節約を陣頭指揮したヘンリー氏だが、基調講演後のプレスQ&Aセッションでは、「今後、大規模なレイオフは予定していない。暦年の2003年前半(オラクルの2003年度下半期)には業績も上向く」という明るい見通しを示した。

「R&D投資も積極的に行っている。何よりもこの市場には成長性があるからだ」とヘンリー氏。

急増するLinux版Oracleのダウンロード

 再びオラクルが成長軌道に戻る起爆剤として、ホスト役のジャービス上級副社長は、オープニングの基調講演で「Unbreakable Linux」や「Oracle Collabolation Suite」を紹介した。

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「Unbreakable Linux」を強調したジャービス氏

 Unbreakable Linuxは、セキュアで堅牢なOracle9iをアピールする「Unbreakable Oracle」のメッセージをLinuxに拡大したもの。6月初めにはオラクル、デルコンピュータ、そしてレッドハットの3社が共同でLinuxソリューションを提供していくことも明らかにしている。

 Oracle9i DatabaseとOracle9i Application ServerのLinux版が提供されているのはもちろん、Release 2ではOracle9i Real Application Clusters(RAC)もサポートされ、クラスタ構成によって高い信頼性も手に入れた。つまり、WebキャッシュからWebサービス、あるいはJ2EEアプリケーション、そしてバックエンドのデータベースに至るまで、それぞれに冗長性を持たせることができるわけだ。ローコストなLinuxとIAサーバの組み合わせに堅牢さが加われば、RISCプロセッサベースのUNIXサーバが独占してきたデータセンター市場にも風穴が開けられる。

 ジャービス氏は、IBMのローエンドメインフレームである「zSeries 800」(4CPU×8ノード)の360万ドルと比較し、Dell PowerEdge 6650(4CPU×8ノード)が32万5000ドルと1/10以下で済むことを強調した。

「ウインテル」という言葉が表すように、こうしたIAサーバ市場は長らくマイクロソフトに牛耳られてきたが、Linuxの登場によってオラクルはソフトウェアプラットフォームの盟主の座を手繰り寄せようとしている。

 32CPUクラスタ構成時のTPC-Cベンチマークでは、Microsoft SQL Serverが12万1319tpmであるのに対して、Linux版のOralce9i RACは13万8362tpmを叩き出し、パフォーマンスで上回るほか、1tpm当たりのコストも安いという。

 プレスQ&Aセッションでジャービス氏は、10月にLinux版Oracle9i(開発者版)のダウンロードが5万5000に達し、同社にとっては最大のセグメントになっていることも明かした。

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[浅井英二,ITmedia]