エンタープライズ:インタビュー 2002/12/06 19:24:00 更新


Interview:ハイパフォーマンスコンピューティングに照準を当てるデル

デルはHPCC(High Performance Computing Cluster)を説明するプレス向けのブリーフィングが行った。来日した米デルのエンタープライズグループ、ソフトウェア開発部門の担当副社長、ピーター・モロウスキー氏に、HPCCの位置付けと今後の戦略について聞いた。

 エンタープライズコンピューティング市場へのシフトを鮮明にしているデルコンピュータ。先日のOracle World(OW)では、クラスタリングソフトウェアのOracle9i RACとLinux OSを利用した2000ノードのハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)システムを、ニューヨーク州立大学バッファロー校に導入したことをマイケル・デルCEOが紹介している。日本では12月4日に、HPCC(High Performance Computing Cluster)を説明するプレス向けのブリーフィングが行われた。来日した米デルのエンタープライズグループ、ソフトウェア開発部門の担当副社長、ピーター・モロウスキー氏に、HPCCの位置付けと今後の戦略について聞いた。デルモデルによる低コスト性を強調する点ではこれまでどおりだ。

 同社はHPCCの定義を、「コモディティ化したハードウェアとソフトウェアを活用して大規模並列計算を実現するクラスタシステム」としている。これは、コスト効率の高さを特徴とする同社のサーバ製品を多数搭載して、スーパーコンピュータの約10%のコストで同程度の処理を行おうというもの。

dell.jpg
モロウスキー氏

ZDNet HPCCの利用形態にはどんなものがありますか?

モロウスキー HPCCは、並列処理によるパフォーマンス向上を目的とするケースと、HA(ハイアベイラビリティ)システムを構築してフェールオーバー処理などを行う可用性を重視したもの、リソース配分などのロードバランシングを行うものの3つを考えています。

ZDNet 導入するユーザーにとってのメリットは?

モロウスキー 価格性能比の高さが第一に挙げられます。また、プロセッサや内部インタフェース、ストレージ、メモリ帯域幅など、改善される技術をすぐに導入できることもメリットになります。これまでは、将来のシステム拡張を見越してハードウェアを購入する必要がありましたが、HPCCならば初期投資が小さく、必要な分だけのマシンを買い足していくという運用が可能になります。システムを追加するだけでパフォーマンスがリニアに向上する拡張性も、アピールポイントです。

ZDNet プレスセミナーでは、HPCCで多数のサーバを稼働させる場合の内部接続について、ギガビットイーサネットやQuadrics、Myrinetが紹介されていましたが、InfiniBandなども含めて、どれか期待しているものがありますか?

モロウスキー 内部接続については、どれが有望かといった見方ではなく、相対的に考えています。

ZDNet 先日は、ブレードサーバとしてデル初となるPowerEdge 1655MCをリリースしました。HPCCでは多数のサーバを運用することになり、ハードウェアとしてはいわゆるブレードサーバのような、モジュラー型サーバに注目が集まると思いますが。

モロウスキー モジュラーサーバは、ラック密度の高さを生かして、Webサーバなどの利用に適しています。柔軟性の高さからもHPCCでも利用していきます。

ZDNet ブレードについては、IBMはPower4搭載、ヒューレット・パッカードは4ウェイのブレードをリリースするという話があります。Webサーバだけでなく、データベースなどの「重い処理」もブレードに任せようという動きがあります。

モロウスキー デルはカスタマーニーズを第一に考えていますので、HPやIBMなどの動きにはあまり捕らわれません。顧客が何を求めているかということが基準です。

ZDNet IBMは、オートノミックミックコンピューティングを提唱しています。また、HPも、情報システムを利用した分だけ、そのシステム環境の提供者に支払うユーティリティコンピューティングを打ち出しています。極端に言えば、一般のユーザーにとってはハードウェアを買うという概念がなくなることになるとも言えますが、デルはこれについてどう考えていますか?

モロウスキー ユーティリティコンピューティングを実現するには、まだ技術的にクリアしなくてはいけないことが沢山あります。例えば、電気やガスのように利用するなら、どれだけコンピュータを使ったかを測定できるメーターが必要です。また、サービスレベルをどう保証していくのか、法的な整備も必要になってきます。

それに、ユーティリティモデル自体は特に真新しいものではありません。ASPなどと基本的に変わらないもので、別の言い方をしているだけです。現段階では成功するかどうかは分かりません。顧客が望むならば、デルもそれをやるだけのことです。

ZDNet HPCCの事例を幾つか教えてください。

モロウスキー 最も面白い事例はアイマックスです。同社は、IMAX DMR技術を通じて、映画のプラットフォームを提供しています。RedHat Linux搭載のPowerEdgeを利用して、映画「Apollo 13」をIMAXの15/70フォーマットにデジタルリマスターしました。35mmフィルムと比べて、15/70フォーマットの画像は極めて綺麗になりました。従来は、35mmフィルムをデジタルに変換するだけで膨大なコストが掛かっていましたが、HPCCによって低コストでの構築が可能になりました。



関連記事
▼デル、同社初のブレードサーバ「PowerEdge 1655MC」を発表
▼デルCEO、Oracle9i RACとPowerEdge、Linuxによる低コストシステムをアピール
▼Interview:デル幹部、「2003年、サーバの主流はブレード/ブリックへ」

関連リンク
▼デルコンピュータ

[聞き手:怒賀新也,ITmedia]