エンタープライズ:インタビュー 2003/02/27 19:46:00 更新


Interview:「Unbreakable Oracle」は高信頼のコモディティコンピューティングを実現

日本オラクルの一連のイベント、「東京版」OracleWorldが開催されているさなか、Oracle9iマーケティングを担当するレネ・ボンバーニ副社長が来日した。Unbreakableテクノロジーは、LinuxとIAサーバを企業市場のメインストリームに押し上げる役割も果たしている。「LinuxやIAサーバに肩入れ? それは顧客の明らかな恩恵になるからだ」とボンバーニ氏は話す。

米国同時多発テロ直後に行われたOracle OpenWorld 2001 San Franciscoでオラクルは「Unbreakable」という強烈なメッセージを発した。それ以来、同キャンペーンは1年半も継続されている。Oracle9i製品だけでなく、LinuxとIAサーバにも高い可用性をもたらすオラクルのUnbreakableテクノロジーは、コストパフォーマンスに優れた新興のプラットフォームには追い風となる。日本オラクルの一連のイベント、「東京版」OracleWorldが開催されているさなかに来日したOracle9iマーケティング担当副社長のレネ・ボンバーニ氏は、「LinuxやIAサーバに肩入れ? それは顧客の明らかな恩恵になるからだ」と話す。

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「すもうレスラー」のニックネームで日本の開発者にも知られているボンバーニ氏


ZDNet あなたはOracle9iのマーケティングを担当されていますね。「Unbreakable」というオラクルのメッセージは何をアピールするものなのでしょうか。そして、それはうまく行っていますか。

ボンバーニ Unbreakableのキャンペーンは、2001年11月のOracleWorld San Francisco以来、1年半も継続されています。これはオラクルで最も続いているキャンペーンであり、そのことからもわれわれはとても成功していると考えています。

 Unbreakableというメッセージには2つの側面があります。ひとつは「Can't break it」という可用性、もうひとつは「Can't break in」というセキュリティの高さです。われわれは、データのコンソリデーションを提案しています。そうなれば、計画外だけでなく計画された停止も許されなくなります。ダウンしてはいけないのです。

 そのためには、単にOracle9i製品(Oracle9i DatabaseおよびOracle9i Application Server)をアンブレーカブルにするだけでは不十分です。われわれは、Oracle9i Real Application Clusters(RAC)を提供することによって、Linuxもアンブレーカブルにしています。Linuxが主に動作するIAサーバでも、デルコンピュータ、ヒューレット・パッカード、そしてインテルらと協力し、インフラだけでなく、システム全体をアンブレーカブルにする取り組みも行っています。

ZDNet ここ数年、オラクルはLinuxやIAサーバに対してかなり肩入れをしているように見えます。

ボンバーニ それは顧客にとって明らかに恩恵となるからです。Linuxと32ビットのIAサーバは、低コストで信頼性も十分あり、しかも高性能です。この点について反論の余地はないでしょう。これにOracle9i RACを組み合わせれば、低コストで止まらない、そして安全なシステムが構築できます。

ZDNet 「32ビット」に限ったことですか? 64ビットのインテルアーキテクチャも次第に浸透すると思います。

ボンバーニ オラクルは1995年にOracle 7.3で64ビット化しています。つまりわれわれにとって、64ビットは決して新しいものではありませんし、Itanium 2向けのOracle9iも(米国市場では)既にリリースしています。ただ、敢えていえば、32ビットのIAサーバの方が、遥かに価格性能比が高いということです。

 コモディティ化した32ビットコンピュータをたくさんクラスタ接続すれば、もうIBMのzSeriesのような巨大なSMPマシンなど不要です。

DB2ではデータ統合はできない

ZDNet 少しライバルについても話を聞きたいと思います。マイクロソフトのSQL Serverは広範に使われていますし、IBMのDB2もシェアを拡大しています。特にDB2はフェデレーション(連盟化)機能を打ち出し、Oracle9iとの違いをアピールしています。

ボンバーニ フェデレーションは新しいものではありません。それはコンソリデーションへのステップに過ぎません。Oracleもマルチベンダー環境のハブになることができますが、最終的なゴールはコンソリデーションです。彼らの提案の問題点は、フェデレーションから先に進めないということです。

 そもそも彼らがなぜフェデレーションと言うのでしょうか? それはプラットフォームごとに5つの異なるDB2があり、さらにInfomixなどを加えるとその数は14に上るからです。これではコンソリデーションは不可能です。Xperantoプロジェクトの成果も14すべてのデータベースで利用できるわけではないのです。

 彼らの主要アプリケーションが現時点ですべてのバージョンのDB2と連携できないのをご存じですか? 彼らのDB2に対するコミットメントは疑わしいと言わざるを得ません。

 マイクロソフトのExchangeもそうですね。1998年のCOMDEXでSQL Serverを使うと発表しましたが、いまだに実現されていません。また、「Trust Worthy Computing」(信頼できるコンピューティング)を掲げていますが、1月下旬に大規模な「SQL Slammer」の問題を引き起こしました。大手ソフトウェアメーカーであれば、それなりの振る舞いをすべきだし、より良いソフトウェアを開発すべくプロセスを見直すべきです。

ZDNet オラクルは、国際セキュリティ評価基準であるISO15408に準拠した各種の検査をパスし、認証を受けていることをしばしばアピールしています。その意義を教えてください。

ボンバーニ われわれは、国際セキュリティ評価基準に基づく評価を受け、それにパスして認証を受けた数が15に上っています。IBMはゼロ、マイクロソフトは1つに過ぎません。欧米の政府や州政府は、公的なサービスを提供するシステムには、この基準に基づく認証を受けていることを求め始めています。いずれ、製品を納入するための条件となるでしょう。

 われわれは、1週間前、Red Hat LinuxとOracle9iの組み合わせで評価を受けることを発表したばかりです。しかも、非軍事の商用では最高位となるレベル4での評価を申請しました。

Javaデベロッパーの教育にも投資

ZDNet 今回の来日は、「Sun Super Tech Days」で講演するためでしたね。参加した印象を教えてください。

ボンバーニ 私はデベロッパー向けの「Oracle Technology Network」(OTN)を立ち上げました。まるで私の「子ども」のようなもので、いまだ離れがたい存在ですし、実際に今も私が担当しています(笑い)。

 カンファレンスに参加してみて感じたのは、Javaのハイプ(過熱した期待感)は去ったということです。それは良いこともあり、悪いこともあります。

 良いことは、Javaがメインストリームになったということです。逆に悪いことは、みんなが採用したことによって、かつての「クール」さがなくなり、.NETほど新しくないという印象を与えているということです。

 J2EEも.NETもインプリメントの違いはありますが、大規模な開発のリアーキテクチャという共通の課題に直面しています。もちろん、J2EEの方が先にその課題に取り組んでいるわけです。

 新しいアーキテクチャでは、データロジック、ビジネスロジック、プレゼンテーションロジックにアプリケーションを分離させるわけで、デベロッパーにとってはそうした手法を習得するのに多くの時間が必要になります。オラクルはJava標準の将来を確信しており、その責任を果たすべく、多くのリソースを投じてデベロッパーへの教育プログラムを提供しています。多くの時間がかかりますが、これをやるほかに道はありません。われわれは、E-Business Suite 11iをJavaで構築しました。その開発ノウハウをOTNで公開し、共有できるようにしています。

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[聞き手:浅井英二,ITmedia]