エンタープライズ:ニュース 2003/05/28 21:30:00 更新


Webサービスからオンデマンドへ、IBM戦略に見るEJB移行の先にあるものは

EJB採用にはハードルがある。そう巷ではささやかれる中で、その意味を正確に理解している人は少ないだろう。IBM、長島氏からのコメントは、この疑問に対し明確な指針を与えてくれるはずだ。

 「IBM Software World 2003」開催の2日目、カンファレンスと合わせIBMソフトウェアブランド「WebSphere」の戦略発表が行われた。この中で日本アイ・ビー・エム、ITアーキテクト・長島 氏からは、Webサービスの定義から最新動向、そしてIBMにおけるJ2EEビジネスにおける戦略ビジョンが語られた。

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「Webサービス」について詳細なコメントをされた長島 氏


 テーマとされたのは、「近未来のオンデマンド環境において、WebサービスやJ2EEがどのような位置づけにあるのか」であり、「Webサービス」と「オートノミック」、「オンデマンド」が密接に結びついている見解が語られ、とても興味深いものとなった。

 まず最初に長島氏から分析されたのは、現在におけるJ2EEへの取り組み、そして教育面における問題点だ。

 「従来までの技術者向けセミナーや教育などは、実装設計やプログラミングについてはカバーされているものの、実際にオンデマンド環境へ乗せるためのコンポーネントを作成する上では、分析や設計面から関わらなければならない。この前提でなければ、コンポーネント再利用は不可能だ」と指摘する。

 この見解の前提となるものは、近未来のグリッドコンピューティング上におけるオンデマンド環境実現に他ならない。また、「コンポーネントはプラットフォームを選択してはならない、インターフェイスが業界標準として統一されていなければ、オンデマンドは実現できない」ともコメントされた。

SOAPイコールWebサービスではない

 従来、2000年にSOAP(Simple Object Access Protocol)が登場した際には、「今後のWebサービスにふさわしいもの」として業界をけん引する存在となった。しかし、現在では1つのプロトコルでしかないという見解が強くなっている。長島 氏もこの点を強調され、「SOAPは、Webサービスの中で単なる通信規約の1つであり、WebサービスとSOAPはイコールではない。WDSLで記述されているコンポーネントそのものがWebサービスであり、このコンポーネントとのやり取り手順は限定されない。この点こそが特徴だ。SOAP、EJB、Javaネイティブな呼び出しなど、オープンさがある点が重要だ」と強調する。

 また、「Webサービスの"Web"とは単なる言い回しであり、eビジネスでのサービスを業界標準として規約していくものだ」と、再確認すべき事項として挙げられた。

 これらの条件が伴わなければ、異なるプラットフォームでインターフェイスが統一されているというJ2EEの持ち味とされるオープンスタンダードは成り立たない。さらに、最新動向の1つとして、業界標準として2002年に発表された「BPEL」についても触れられ、プロセス間ワークフロー処理によるビジネストランザクション実行において、セキュリティ面の強化が行われていることも語られた。

 Webサービスは、フェデレイテッド(長島 氏からは、例えとして米国での州関係と似ており、州で動いているものの連合関係がある意味だと説明された)でなければ、うまく機能しないという。

EJB移行の果てにはグリット上のオンデマンドが見える

 「オンデマンド」というキーワードからはグリッドが脚光を浴びがちだが、長島 氏は実行環境として最も近い領域の技術としてグリットがあるだけだという。このような連携される関係を考慮すると、必然的に人間が管理・把握することが難しくなることも解説され、これによりオートノミックが登場し、自己修復などの技術がミドルウェアやハードウェアに必要となるわけだと語る。個々のビジネスプロセスはWebサービスで形成され、標準のインターフェイスを持つことが条件となるのだ。

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 ビジネストランザクションを形成する上で、「グリットの上で動作するアプリケーションこそがWebサービス」となることは、今後意識していかなければならない事項だという。

 IBMにおいても、J2EEベースへの移行案件として、現在ではレガシーなシステムにおいてOLTP+バッチ呼び出しが圧倒的に多いという。しかし、オンデマンドを実現する上では、バッチ処理は極力減らし、オンライン処理を行っていかなければならないと強調する。新しいOLTP上で構築していくことが必要となるのだ。

 このような背景から既存システム(レガシー)からのJ2EEへの移行には、バッチ処理を残しつつ移行する従来型か、EJBと呼ぶ新OLTP環境かを選択する必要があるわけだ。しかし最近では、EJBベースでの事例も見られ始め、国内においても東京三菱銀行に代表されるよう積極的な動きがある、と強調された(関連記事)。

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▼IBM Software World 2003 & IBM developerWorks Live! with WebSphere 2003

[木田佳克,ITmedia]