インタビュー
2003/06/04 12:00 更新


Interview:Opteron投入は企業サーバ市場参入の重要なステップ――日本AMDローガン氏

AMDは4月23日、企業サーバ向け64ビットプロセッサ「Opteron」を発表した。CPGマーケティング本部長のローガン氏に、Opteronのマーケティングと今後について聞いた。

 日本AMDは4月23日、かねてからの目標であり新たな市場への第一歩となる、企業サーバ向けの64ビットプロセッサ「AMD Opteronプロセッサ」を発表した。AMDのOpteronのマーケティング戦略や、メーカーの反応について、日本AMDコンピュテーション製品グループマーケティング本部のサム・ローガン本部長に聞いた。


ZDNet 念願のOpteronが発表になりました。この狙いについて教えてください。

ローガン まずお話ししておきたいのは、AMDの基本戦略です。新しいビジネスを始めるときに必要なのは“集中”ということです。以前、AMDのプロダクトラインには12事業部がありましたが、どんどんパソコンのマイクロプロセッサに集中していきました。その際に、全部の市場に対応するのは無理だと考えて、勝てるところに集中したわけです。

 そういう意味で、我々のエントリーポイントは低価格のデスクトップパソコンだったと言えます。そこから広がってきて、低価格のノートブック、メインストリームのデスクトップと進めてきました。まず1つのセグメント、1つのプラットフォーム、1つの市場を作ってから、フォーカスを広げていくわけです。

 いまは次の新しいステップで、Opteronではサーバ市場に入りたいと考えています。実は以前、K6やAthlonのホワイトボックスサーバも出していますし、Athlon MPもありますが、Opteronはハイエンドサーバも含めた企業サーバ市場に初めて入り込もうという製品です。

日本AMDコンピュテーション製品グループマーケティング本部のサム・ローガン本部長

日本AMDコンピュテーション製品グループマーケティング本部のサム・ローガン本部長(手に持っているのはOpteronプロセッサ)


ZDNet このOpteronがAMDにもたらすものはなんですか。

ローガン コンシューマー向けのAthlonは、リテール市場において、いまは30数%、時期によっては50%ものシェアを占めるようになりました。逆に言えば、リテールでこれ以上売り上げを伸ばすのは難しくなっています。Opteronでは企業向け市場に参入することでビジネスを拡大できます。

 日本のコマーシャルユーザーのITマネージャーは、「○○(メーカー名)のクライアントを何台、○○のサーバを何台」というふうに購入します。米国では、コマーシャルユーザーにシステムを納入するのは、大メーカーよりもシステムビルダーが多く、システムビルダーは自前のブランド製品はないので、ITマネージャーは「インテル系クライアントを何台、インテル系サーバを何台」というような発注の仕方をします。米国で企業向けの大きな市場を取ろうとしたときに、サーバ向けのプロセッサを持つ必要があるわけです。これまでは、デスクトップPCやノートブックPCには製品を持っていましたが、サーバも含めたトータルソリューションという意味では提供できなかったので、扉が閉ざされていたのです。

 Opteronがラインアップに加わったことで、いままで我々が入れなかったところへ参入することができるようになったのです。

ZDNet これまで本格的なサーバ向け製品を出していなかったAMDの最初の製品ということで、Opteronの性能や信頼性への疑問を持つメーカーもいるのではないですか。

ローガン AMDの中には3つの製品グループがあります。まずフラッシュメモリなどを扱うメモリグループ、エンベディッド系のグループ、そして僕のいるコンピュテーション製品グループ(CPG)です。CPGのトップには、DECやインテルで働いた経験を持つダーク・マイヤーです。マイヤーはDEC時代、EV5、EV6などのテクノロジーを開発した経験を持ち、キャッシュアーキテクチャーやバスアーキテクチャーの業界のファウンダーと言うべき存在です。マイヤーは現在、ベーシックアーキテクチャーを決めるところからのキーマンで、ビジネスユニット全体を見ています。開発、製造、マーケティング、品質保証など、営業以外の全てを統括しています。AMDにとってサーバ市場は新しいものですが、その製品を作っているのは、サーバの豊富な経験を持った人々です。

 Opteronの技術がエンジニアなどから高く評価されていることは間違いありません。いままでは新しい製品を開発したときに、お客様から「これは何がいいんですか」と聞かれていたわけです。デスクトップでもノートブックでも。ところがOpteronに関しては逆になりました。これまで日本AMDがつきあったことがないシステムビルダーのお客さんがどんどん話を聞きにいらっしゃいます。「いい製品があるでしょう。紹介してください」と。

 いい製品を売ることはうれしいですが、お客さんから「こういう製品が欲しかった」と言われることはとてもうれしいことです。

 K7(Athlon)を開発したとき、お客さんの中には、これはサーバのためのアーキテクチャーですよね、パソコンにはもったいないんじゃないですか、というような人もいらっしゃいました。Athlonは、サーバ向けとしても対応できる製品と考えていたのでAthlon MPを出しましたが、さらに市場の要望をキャッチアップするためにOpteronを出すことになったわけです。

ZDNet Opteron発表時に、大手メーカーで採用表明したのは、大手メーカーではIBM、Fjitsu-Simensの2社で、ちょっと少ないようですが。

ローガン メーカーには実際の製品開発を行うエンジニアリング部隊と、マネージメント部隊があるわけですが、エンジニアリング部隊にはOpteronを高く評価していただいています。ただし、サーバのような高機能製品にAMDのプロセッサを使うと、インテルに対してのリスクが生じるので、マネージメント部隊はうまくバランスさせようとしています。そのため、製品までには少し時間がかかってしまいます。

 我々がデスクトップPC向けプロセッサ市場に入ったとき、大手メーカーの採用は同じように遅れました。最初に採用していただいたのは、プロトンやフリーウェイなどのホワイトボックスPCです。Opteronに関して、日本のシステムビルダーはすぐに反応し、採用を表明いただいています。そうしたシステムでパフォーマンスの高さが認められれば、大手メーカーも出さざるを得なくなると思います。

ZDNet Opteronにはシングルプロセッサシステム向けの100シリーズ、2ウェイシステム向けの200シリーズ、8ウェイまでのシステム向けの800シリーズの3種類が発表になりましたが、200シリーズだけがまず出荷されました。これはなぜでしょうか。

ローガン データクエストやIDCのサーバ市場のデータを見ると、2ウェイシステム、4ウェイシステム、8ウェイ以上のシステムと分類したとき、2ウェイシステムが8割以上を占めているのです。まず大きな市場をターゲットにしようといいうことです。4ウェイシステム、8ウェイシステム向けを先にという考え方もありますが、そういったサーバを作るにはノウハウが必要です。まず2ウェイシステムを作ることで、そこでいろいろメーカーにも学んでもらったほうが、4ウェイシステム、8ウェイシステムに対応しやすくなると考えました。

ZDNet シングルシステム向けのOpteron 100シリーズは9月に発表予定のAthlon 64と、サーバ市場で競合するということはないのでしょうか。

ローガン AMDではOpteronはサーバ向け、Athlon 64はデスクトップPC向けとポジショニングしています。プロセッサのコアは基本的に同じものですが、キャッシュサイズ、ピン数が異なります。またAthlon 64はハイパートランスポートが1チャネルしかありませんが、Opteronは3チャネル持っています。ローエンド低価格サーバということになれば、Athlon 64が入ってくる可能性はありますが、性能面を考えればOpteronということになるはずです。

ZDNet 最後に、Opteron発表会で、日本AMDの吉沢取締役が、サーバ向けプロセッサ市場のグラフを見せながら「RISC、IA32、IA64(IPF)というように分類されているが、来年にはここに『AMD 64』が入ってくる」と発言されておられましたが、シェア目標はどのくらいでしょうか。

ローガン 社内的にはもちろん目標はあるのですが、米国で株式を公開している関係で、具体的な数字は言えません。

 申し上げられる数字としては、先日の発表時点で、販売チャネルに出回っているOpteronは2000個を超えていました。今四半期にはその数十倍の需要があると考えて、それだけの数を製造する予定になっています。

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[聞き手:佐々木千之,ITmedia]

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