エンタープライズ:コラム 2003/06/25 19:13:00 更新


Opinion:マイクロソフトが呼び掛ける「Do More With Less」の大合唱

2カ月遅れで開催された東京のWindows Server 2003ローンチイベントは、日本のIT業界の大同団結を呼び掛けるかのようだった。今、企業の関心は、コストを削減しながらも競争優位を確保する「IT基盤改革」に寄せられている。

 来週の年度始めから青い目の新社長を迎えるマイクロソフトが、日本のIT業界の大同団結を呼び掛け、その中心に座ろうとしている。

 Microsoftの日本担当副社長、マイケル・ローディング氏は、「Windows Server 2003」日本語版のローンチで、繰り返し「業界挙げての取り組み」を強調した。ローディング氏は、7月1日からマイクロソフト日本法人を率いることになる。

 都内のホテルで行われた日本語版のローンチイベントは、カリフォルニア州サンフランシスコでの米国イベントから遅れること2カ月。ローディング氏は、「あえて日本での発表を遅らせ、業界を挙げた準備を進めてきた」と話す。

 Windows Server 2003におけるパートナーとの連携は、前バージョンであるWindows 2000とは比較にならないほど強化されている。例えば、ハードウェアに対するプリインストールが11社75モデル、認定ソフトウェアは32社40製品に上る。Windows 2000のとき、それぞれ10モデル、7製品だったことを考えれば、取り組みの成果がよく分かる。

 OEMなどを担当する眞柄泰利取締役によれば、販売パートナーも350社に上り、マイクロソフトでは7000人にトレーニングを済ませたほか、秋までにはその数を1万5000人まで引き上げるという。

 この日のローンチイベントでは、販売パートナーを代表して大塚商会の大塚裕司社長がステージに招かれたが、彼の言葉は、日本のインテグレーター、あるいはIT業界全体を代弁しているといっていいだろう。

 「厳しい経済状況が続いているが、競争優位の源泉となるIT投資は不可欠。気合と根性だけではもう持たない」と大塚氏。

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「大塚商会のWindowsシステム事業が、強い日本復活の一助になれば」と話す大塚氏


 大塚商会は今春、新社屋のオープンに伴い、Windows Server 2003をベースとしたユニファイドメッセージングシステムを構築した。そのROI(投資利益率)は246%に達し、わずか13カ月で投資を回収できるという定量的な分析結果も出ているという。

 大塚氏は、自社での実績を背景に、Windows Server 2003を投資効果の高いシステムとして25万社の顧客企業に販売していくと話す。

Windows Server 2003でIT基盤を刷新

 企業によるIT投資の見直しは、バブルで膨れ上がっていたIT業界を大きく揺さぶっているが、基盤の改革、そして次なる成長への地殻変動も至るところで起こっている。

 多くのIT部門が直面するTCO削減に対する要求は、とどのつまり、予算の実に7割が費やされる既存システムの運用保守の効率化を待ったなしで彼らに迫っている。Webサービスに代表されるようなオープンスタンダードや、業界標準として台頭するインテルアーキテクチャに企業のIT部門が関心を寄せているのもそのためだ。

 今春、日本アイ・ビー・エムからマイクロソフトに移籍し、エンタープライズ事業を担当する平井康文取締役は、この日のプレゼンテーションの中で、ガートナー データクエスト部門の予測値を示しながら、国内ITサービス投資は2007年まで緩やかに右肩上がりが継続するという明るい見通しを紹介した。ハードウェアの成長率は、ソフトウェアやサービスのそれに及ばないものの、IDC Japanの予測によれば、メインフレームやRISCサーバがマイナス成長となる中、IAサーバだけが2004年以降、台数ベースで5%以上の成長率を維持していくという。

 IT業界で地殻変動が続く中、有力なITベンダーはどこも、エンタープライズシステムを構築するための「スタック」を整備している。SolarisをベースにJ2EEサーバをはじめとするSun ONEサーバ製品群をオープンなAPIによって積み重ねるように統合するSunの「Orion」が分かりやすい例だろう。

 MicrosoftのWindowsプラットフォームは、IA-32および64ビットのItanium Processor Family(IPF)をハードウェアプラットフォームとし、Windows Server 2003、SQL Server、Exchange Serverをはじめとする20を超えるサーバ製品が統合される。この場合の統合は、例えば、Exchange Serverと、Windows Serverに組み込まれたActive Directoryとの連携を考えればいいだろう。オープンとはいえないものの、極めて緊密な統合が図られている。

 米国でのローンチでは、Windows Serverのプロダクトマーケティンググループでグループマネジャーを務めているバリー・ゴフ氏が、「インフラの構築はわれわれに任せ、企業はビジネスロジックにフォーカスできる」と話していた。

 独占的な地位を築いているMicrosoft Officeスイートとの連携・統合も強みとなるのは間違いない。今後、文書共有やコラボレーションを実現するWindows SharePoint Servicesや、デジタル著作権管理(不正改ざん防止にも役立つ)のRights Management機能がWindows Server 2003のアドオンとして追加リリースされるが、それらとOfficeとの連携は、新しい価値をユーザーにもたらすことになる。

 平井氏の短いプレゼンテーションでは、米国でのローンチほど、こうした「包括的な統合インフラ」というメッセージは打ち出されなかったものの、「運用管理者」「開発者」、そして「エンドユーザー」の3者それぞれに向け、コストを削減しながら、競争力を高めてくれるWindows Server 2003のソリューションをうまくアピールした。

 彼は64ビットWindows環境を採用した富士写真フイルムを紹介し、「大規模なWindowsのエンタープライズシステムが現実のものとなっている」と話す。まさに日本のIT業界を挙げて、「Do More With Less」の大合唱が聞こえてきそうだ。

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[浅井英二,ITmedia]