エンタープライズ:ニュース 2003/07/22 21:47:00 更新


グリッドコンピューティング成功の鍵はライバル企業の協力

IBMがWebSphereでグリッド対応を図るなど、ITベンダー各社のグリッドコンピューティングへの取り組みは本格化している。各社とも標準化に関しては協力しており、それが業界の成長に欠かせないという認識で一致しているようだ。(IDG)

 大手企業向けベンダーのIBM、Sun Microsystems、Hewlett-Packardらはほとんど毎日のように、顧客獲得のために他社のテクノロジーを攻撃している。

 しかし、7月21日にサンフランシスコで開催された、The Open Group主催のグリッドコンピューティング会議に集まったベンダー各社は、グリッド標準で協力することが、この分野の究極的な成功に不可欠であると語った。

 「とても、とても重要なことは、そしてこれはこの業界にとって非常に期待できる証拠なのだが、ほとんどの部分において全員が参加しているということだ」とIBMのグリッドコンピューティング担当ジェネラルマネジャー、トマス・ホーク氏は語る。「そう。われわれは全員が競合する企業から来ている。毎日、市場ではライバル企業を叩こうと躍起になっている。しかし、一日の終わりには一致協力して、業界標準を作り出そうと取り組み、顧客に最良の機能を提供しようと努力しているのだ」と同氏。

 「絶対的に重要なのは、これがオープンソースの、コミュニティにおける取り組みとして行われているということだ」とHPの主任科学者、グレッグ・アストフォーク氏は語る。「プロプライエタリなグリッドが複数存在するようになったら、われわれは全員が敗北してしまう」と同氏。

 Sunのグリッドコンピューティング担当ディレクター、ウォルフガング・ゲンチ氏も標準の必要性について話す。

 グリッドコンピューティングは高性能の科学・エンジニアリングアプリケーション向けにコンピューティングパワーを制御するための手法として、1990年代に登場した。しかし商業分野においては、グリッドコンピューティングはまだ始まったばかりだ。その理由の一部には、ツールとアプリケーションがまだ登場し始めたばかりだということもある。

 実際、カンファレンスの出席者は多くがベンダーであり、潜在ユーザーではない。壇上ではみんなが声を一つにして熱弁をふるうが、実際には、潜在ユーザーにグリッドコンピューティングの必要性を説得するという問題が潜んでいる。個人的に話したある出席者は、グリッドハッカーが説得力のあるビジネス事例を取り上げ、そのプロセスが効果的かつ安全に管理されていることを示す必要があると述べた。潜在ユーザーは、そうなってから初めて、このテクノロジーをもっと学ぼうと思うはずだと、この出席者は主張した。

 グリッドコンピューティングの背後にあるアイデアは、企業が自社のコンピューティングパワーを一つのリソースとしてプールし、いつでも、どこでも、個別のシステムが部門別に分かれていても、企業全体であっても、世界中に分散していても利用可能にする、というものだ。

 ベンダーはGlobal Grid ForumやGlobus Projectなど、数多くの取り組みに参加して、グリッドコンピューティングの技術仕様を開発している。

 また、グリッドを目的としたテクノロジーのリリースは既に開始されている。たとえば、IBMは21日、最新版のWebSphereにグリッドコンピューティング機能を追加し、サーバのクラスターが単一の環境として動作するようになった。

 Argonne National Laboratoryのグリッドコンピューティング専門家で部門次長兼上級科学者のイアン・フォスター氏は、潜在ユーザーは、グリッド技術が進化し成長していくのに合わせ、この分野で何が起きているのかを知っておく必要があり、製品を注意深く観察し、オープンソリューションを強く主張しなければならない、と述べた。

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[Patrick Thibodeau,IDG News Service]

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