エンタープライズ:ニュース 2003/08/20 17:46:00 更新


日本IBM、グリッドやWebサービスへの対応を強化した最新版WebSphereを出荷

動的な負荷分散機能を搭載し、WS-I Base Profile 1.0にも準拠したWebSphereの最新版が登場した。グリッドを将来に見据えながら、Webサービスも「つながる」から「使える」段階に入る。

 日本アイ・ビー・エムは8月20日、最新版「WebSphere Application Server V5.0.2」の出荷を開始した。昨年11月にリリースされたV5からわずか「.0.2」の改訂だが、グリッドやオートノミック(自律型)コンピューティングの実現に向けた機能強化やWebサービスへの対応強化が図られている。また、29日からはJava統合開発環境である「WebSphere Studio V5.1」の出荷も始まる。

 都内のオフィスで行われた発表会で、WebSphere事業部長を務める山下晶夫氏は、「新しいWebSphereによって、グリッドを将来に見据えながら、Webサービスがいよいよ“使える”段階に入った」と話した。

 新しいWebSphere Application Serverでは、クラスタを構成する各WebSphere Application ServerのCPU使用率を監視し、動的に負荷分散を行う機能が追加され、グリッドやオートノミックコンピューティングへの大きな第一歩を踏み出している。前バージョンでテクニカルプレビューだったPerformance Advisorも正式機能となり、監視によって取得したデータを基に、最適化のためのアドバイスを受けることができるようになっている。Tivoli Performance Viewrを使えば、データをグラフィカルに表示できるほか、将来的にはオートチューニングの実現も視野に入っている。

 もう一つの目玉が、Webサービスへの対応強化だ。商用サーバとしては、初めて「WS-I Base Profile 1.0」に準拠し、異なるベンダーのSOAPエンジンとの相互接続性を高めている。

 この日の発表会では、WebSphere Studioで開発し、WebSphere上で稼動させたWebサービスをマイクロソフトのVisualStudio.NETに取り込み、Webフォームを作成するデモも行われた。従来でもWebサービスに精通した技術者が手作業で調整すれば接続は可能だったが、そうした必要もなくなるという。

 また、「Web Services for J2EE」(JSR109)のサポートも大きな特徴だ。これにより、WebサービスアプリケーションをJ2EEアプリケーションとして扱え、そのポータビリティが高まり、また、Webサービスアプリケーションから見れば、J2EEの各種インフラ機能(例えば、JMSなど)を利用できるようになる。

 さらに安全なWebサービスを実現するためのWS-Securityや、信頼性を高めるSOAP over JMSもサポートしている。

 29日から出荷が始まるWebSphere Studio V5.1も、Webサービスへの対応強化が図られている。ツールとしてもWS-I Base Profile 1.0に準拠しているため、WebSphere StudioでWebサービスを開発し、VisualStudio.NETでそれを呼び出すアプリケーションを面倒な手作業なしで開発できるようになっている。

 また、新しいWebSphere Studioでは、UML(Unified Modeling Language)ビジュアライゼーション機能も搭載された。クラス図からJavaコードを生成するだけでなく、Javaコードからクラス図を生成するリバースエンジニアリングも可能で、いきなりコードを書き始めてしまう開発者らにとっては、UMLへ第一歩を踏み出す手助けとなるという。

 なお、日本IBMでは、最新版の出荷開始に伴い、移行支援サービスを提供することも明らかにしている。WebSphere V3.0/V3.5から最新版WebSphereへの移行だけでなく、BEA WebLogic Server環境から移行したい顧客もターゲットとしている。

関連記事
▼WS-I、ソフト構築用の初のガイドライン発行
▼新しいWebSphereで企業向け「グリッド」を売り込むIBM
▼IBM、WebSphereポートフォリオを拡大
▼IBM、自社製品のグリッドコンピューティング対応を拡大
▼WebSphereで始めるJ2EEプログラミング

関連リンク
▼日本IBM

[浅井英二,ITmedia]