エンタープライズ:ニュース 2003/09/11 16:38:00 更新


基調講演:Oracle 10gスイートをデモで総ざらい

エリソン会長がOracle Database 10gの出荷責任者に指名したサーバテクノロジー担当のチャック・ロズワット氏。基調講演に登場した同氏は「Oracleの“10gスイート製品”総ざらい」をテーマに話をした。

 エリソン会長がOracle Database 10gの出荷責任者に指名したサーバテクノロジー担当エグゼクティブ・バイスプレジデント、チャック・ロズワット氏。Oracle Worldの3日目の午前、爆弾騒ぎの前に行われた基調講演に彼が登壇した。テーマは、「Oracleの“10gスイート製品”総ざらい」。いずれも実際にベータ版によるデモを見せながら、新製品を内側から知ってもらおうというのが狙いだ。

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講演したチャック・ロズワット氏

 「ここ数年、多くの企業のIT部門は、より低コストでより高いサービスレベルのシステム開発を行うプレッシャーにさらされている。また、IT業界のオピニオンリーダーたちは、複雑な仕組みをネットワークの向こうに押しやり、標準的なIT資源を利用しながら事業環境の変化に機敏に対応するユーティリティー・コンピューティングを説いている。 今やプロセッサ、ストレージ、ネットワークといった要素技術が劇的に進化し、地盤は整った。Oracleの技術を使って、新しいコンピューティングモデル、新しいコンピュータ資源の利用法を示す時がきた」と、ロズワット氏はまず、10g製品群開発の背景を語った。

 そして次々に製品のデモを展開したのだが、最初に登場したのは今年じゅうに出荷すると明言した、Oracle Database 10gの自動ストレージ管理機能(ASM)だ。これまではデータベース上にディスクを追加するのはなかなか煩雑な作業が必要だった。

 ステージ上では、まずASMに10ギガバイトの4つのディスクを割り当てたデータベース・アプリケーションのモニターが示され、その場でOracle Enterprsie Manager 10g(OEM 10g)を使い、ボタンをクリックするだけでディスクを追加する作業を公開した。直ちにASMが自動的に5つめのディスクを認識し、5つのディスク間でロードバランシングを開始する様子が披露された。

 次にASMで実現する高可用性を示すもうひとつの例として、フラッシュバック・リカバリと呼ばれる機能が紹介された。これはユーザーの操作エラーなどによって削除されたデータを、時間をさかのぼって取り戻すというもの。データベース担当シニアバイスプレジデントのアンドリュー・メンデルソン氏はこれを「ビデオの巻き戻し機能」にたとえた。

 リカバリ・マネジャーでスクリプトを書くことなく、OEM 10gからプルダウンメニューで戻りたい時間を指定するだけで、データが回復される様子がデモされると、会場からは大きな拍手が沸いた。

Oracle Application Server 10gの新機能の一例として紹介されたのは、OEM 10gのGrid Controlを利用したアプリケーション・パフォーマンス・モニタリングの機能だ。クラスタを構成しているOracle Application Server 10gのパフォーマンスが、グラフィカルなインジケータにより継続的に報告されており、どのようなキャパシティ管理が必要なのか、データベース管理者がひとめで把握できるようになっていた。

 また、フェイルオーバー・ノーティフィケーションと呼ばれる、アプリケーション・サーバとデータベースとGrid Controlが連携して実現する機能も実演された。従来は、RAC環境のOracleデータベース、複数のOracle Application Server で、データベースのRACクラスタのひとつがダウンすると、データベース自体はフェイルオーバーするものの、中間層の間でそれを伝えあう機能がなかったため、アプリケーションとしては利用できないサービスが生じてしまっていたという。

 しかし、10gから加わるこの機能を利用すると、迅速にフェイルオーバーが伝達され、ユーザーにノードのダウンを知られることなく、サービスが継続できるようになるというわけだ。「これは競合他社のアプリケーション・サーバとでは実現できない独自の機能」とロズワット氏はステージ上で胸を張った。

 このOracle Application Server 10gは、Oracle Database 10gより早く、今年の10月ごろに出荷される予定。

 そのほか、ビジュアルデータモデリングの機能を強化し、ドラッグ・アンド・ドロップベースの操作でWebサービスやITポータルの開発を支援するJdeveloper 10gのデモも行われ、同じく会場の随所から歓迎の声が挙がっていた。

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[吉田育代,ITmedia]