エンタープライズ:ニュース 2003/09/12 11:47:00 更新


基調講演:HPのフィオリーナCEO「Oracleのグリッドに真にコミットできるのはHPだけ」

OraleWorld 2003の最終日。爆弾騒ぎもいたずらであることがわかり、予定通りHPのフィオリーナCEOが基調講演を行った。同氏はHPがすでに自社の製品と環境を使って商用のユーティリティ・データセンター(UDC)を運用しているという事実をアピールした

 同時中枢多発テロから2周年を前に、突然のテロ予告騒動で揺れた今回のオラクル・ワールド。だが単にいたずらだったと見られ、一夜明けた9月11日は何事もなく、カンファレンスも通常どおり行われた。登場したのは、Hewlett-Packard(HP) 会長兼CEO カーリー・フィオリーナ氏である。

 同氏は冒頭、「今日IT業界におけるグッドニュースとは、ある共通のゴールへ技術の方向性が収斂しつつあることだ」とテーマを投げかけた。それは創造的で、オープンで、より高い信頼性、可用性、俊敏性、安全性、IT投資に対する最大のリターンを提供するテクノロジーであるという。

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UDCとRAC、そして10gの連携によるグリッドコンピューティングの優位性を訴えたフィオリーナCEO

 それはまた、次の主要なITの構造的転換を呼び、次世代のデータセンターを構成する要素技術であるという点で、非常に重要だと訴える。もちろん、彼女が意味しているものはグリッドだ。

 「ある一部の人々は、自分たちが主流であるかのように見せかけようとしているが、注意してほしい。ここで必要なのは標準への準拠の度合いであり、仮想性であり、実用性だ。みなさんは本当のテクノロジーカンパニーと話をしなければならない」とまずは競合ベンダーを牽制した。

 フィオリーナ氏がスピーチで訴えたのは、HPはすでに自社の製品と環境を使って商用のユーティリティ・データセンター(UDC)を運用しているという事実だ。

 「グリッド機能と等価のテクノロジーを採用した、高度にチューニングが施された、資源共有型の、信頼でき、安全で、自動化された、未来志向のデータセンターが今日ここにある」そういって、自社のUDCをビデオで紹介した。

 これまでデータセンターといえば、背の高いラックが所狭しと林立し、ラック内のマシンの裏側は電源ケーブルや接続ケーブルでびっしりと覆われ、その景観はあまり美しいものではなかった。ところがHPのUDCでは、仮想ワイヤリングが実装されており、見苦しいケーブル類はどこにも見られない。

 また従来は、マシンを保護するために空調がかなり低く保たれており、データセンターというのは人間にとって居心地のいい場所ではなかった。しかし、ここでは最新のマシン冷却技術の採用により、室内温度は比較的高くても問題ないのだという。それだけでなく、設備を冷やしすぎないことによって空調コストの大幅な削減が可能だとしている。

 フィオリーナ氏は、「HPのUDCは、少なくともIBMのオンデマンドやSun ONEより18ヶ月リードしている」というガートナーのコメントを紹介。Oracleの提唱するグリッド・テクノロジーに真剣にコミットできるのは、ハードウェア分野におけるリーディングカンパニーであるHPだけと、テクノロジーの先進性を強調した。

 同時にOracleとの良好なパートナーシップにも言及し、講演を締めくくった。

 「20年の長きにわたって、われわれは1つのアクシデントもなく、緊密な協業関係を保ってきた。HPとOracleは、顧客のためにも、この業界の未来のためにも、手を携えて進むのが好ましい。グリッドは大きな鉱脈と信じている。ITとビジネスの要件が完全にシンクロしたテクノロジーであり、研究開発をドライブし、業界を発展させるエンジンとなる」

 余談だが、彼女は見るたびにスピーチがうまくなっている。以前は演壇に執着し、下を向きながら原稿を読んでいた印象があったのだが、今日はステージを右に左に移動しつつ、時に聴衆を笑いに誘いながらフリーハンドで一時間話し切った。シリコンバレーを代表するテクノロジーカンパニーのトップとして、日に日に自信を深めている様子が伺えた。

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[吉田育代,ITmedia]