エンタープライズ:ニュース 2003/09/30 11:04:00 更新

Oracle vs. DB2――仁義なき戦い データベース編
第7回「DB2 ICEこそ真のLinuxクラスタソリューション」と日本IBM

Oracle9i RACに限界あり、として日本IBMは、リニアな性能向上が期待できるLinux向けDB2クラスタソリューション「ICE」を売り込む。DB2製品を担当する中川氏らに話を聞いた。

 日本アイ・ビー・エムはLinuxWorldカンファレンス開催中の9月24日、Linux向けDB2クラスタソリューション「The DB2 Integrated Cluster Environment」(ICE)を発表した。これは、「DB2 for Linux」、インテルプロセッサ搭載の「eServer xSeries」やOpteron搭載の「eServer 325」、そしてSuSE、Turbolinux、Red HatいずれかのLinux OSの組み合わせによって提供されるもの。

 このソリューションでは、DB2が扱えるノード数が3ケタであることから理論上は1000ノードまでのクラスタリングが可能で、米国では既に40ノードでSAPアプリケーションが稼動中だという。

 日本IBMソフトウェア事業部の中川いち朗インフォメーションマネジメント事業部長はICEのスケーラビリティ、パフォーマンスについて次のように話す。

 「日本でも16ノードまでのクラスタリング環境でリニアな性能向上を確認した。それに比べるとOracle9i RAC(Real Application Clusters)で実現されているクラスタリングはまだ4〜8ノード。素晴らしいアーキテクチャだと思うが、シェアードディスクの限界が感じられる。われわれのパフォーマンスはシェアードナッシングだから出せるもの。現在においてもこのアーキテクチャには優位性があり、同じ構成ならDB2の方が5倍は高速と確信している」

 DB2 ICEはまた、Oracle9i RACに比べて低コストだという。

 「ハードウェアを含めた2ノードの最小構成で、Oracle9i RAC(サーバはDell)が1万8000ドルであるのに対し、DB2 ICEは9000ドルと半分。製品ライセンスだけを見ても、Oracleの46%だ」と中川氏。

 企業がIT投資に対するコスト意識を強める中、Linuxはオンデマンド環境の実現をアピールするIBMにとって非常に重要なOSだという。今回の発表はまた、企業へのLinuxシステム導入をIBMがソリューションベースで支援するという意味合いも持つ。

 「企業がLinuxの積極採用に転じないのはサポートに不安を感じるから。しかし、IBMはLinux開発コミュニティーに開発者を大勢投入しており、そのためバグなども実質的に自分たちで直すことが可能だ。IBMが積極的にコミットすることで、企業は安心してLinuxを導入することができる」と話すのは、日本IBMでクロスブランド事業を推進する前薗裕二氏はこう話す。

 OSとしての重要性だけでなく、パートナービジネスという側面からも、LinuxはIBMにとって魅力的だ。この分野では主要ハードウェアベンダーやシステムインテグレーターの戦略も、まだ定まりきっていない。ソフトウェア事業部が提供する既存のソリューションと競合するということもないため、彼らがこうしたパートナーと協業しやすいという側面もある。

 日本IBMでは、協業の主要な舞台として、箱崎事業所の7階リバーサイドに「Linuxコンピテンスセンター」も開設している。国内最大級のLinux検証施設として、DB2 ICEを含めたLinuxソリューションのデモ、Linux関連セミナーの提供、IBMとISVの製品を組み合わせたソリューションの検証、他社製プラットフォームからのLinuxへの移行検証や技術相談などを展開するという。

 「ただ、われわれはOracleと違って、なんでもかんでもLinuxのクラスタリングで解決しようとは思っていない。基幹システムを含めて、より高いレベルの堅牢性を求められるシステムは依然としてある。そこはUNIXなどのサーバできちんとカバーする。両方品ぞろえして、顧客のニーズに合わせて提供するのが真のオンデマンド・サービスだ」(中川氏)。

 「米国の事例でも明らかなとおり、DB2 ICEは既に現実のソリューション」とDB2チームは強調する。

 「IBMは全社を挙げてLinuxにコミットしており、DB2も商用データベースで最も早い段階からLinux対応を果たすなど、この新興OSに親和性がある。しだいに顧客のLinuxニーズも高まってきており、ICEを突破口に、“LinuxならIBM”という評価をできるだけ早く確立していく」(中川氏)

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[吉田育代,ITmedia]