エンタープライズ:ニュース 2003/11/20 21:31:00 更新


オラクルとソフトバンクBB、ユーティリティーコンピューティング時代の幕開けを宣言

オラクルとソフトバンクBBは、Oracle 10gとブロードバンドネットワークを組み合わせ、ユーティリティーコンピューティング時代を招来することを宣言した。「いよいよ機は熟した」と孫社長は話す。

 日本オラクルとソフトバンクBBは11月20日、都内のホテルで「BBユーティリティーコンピューティング戦略フォーラム」を開催し、両社の提携によって実現される新しいネットワークコンピューティングの世界を描いてみせた。ソフトバンクBBはグリッド機能を備えたOracle 10gによって「BBユーティリティーセンター」を構築し、ブロードバンドネットワークを介して企業向けにさまざまなアプリケーションやコンテントを提供していくという。

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ステージに並ぶ日本オラクルの新宅正明社長(左)、Oracleのジョン・ホール上級副社長(中)、ソフトバンクBBの孫社長


 ソフトバンクBBの孫正義社長は、冒頭の1時間に及ぶセッションを「いよいよ機は熟した」と切り出した。Oracleの総帥、ラリー・エリソンCEOとは、4年前から新しいコンピューティングのビジョンを共有してきたと明かしたが、実際には高速で安価なネットワークインフラとサーバソフトウェアの進化を待たなければならなかった。

 その時点からさらに数年遡る1996年1月、千葉・幕張で開催されたOracle OpenWorldにエリソン氏は黒い小さなNetwork Computerを携えて来日している。Oracleは、インターネットという潮流に乗るべく、複雑さをすべてサーバに移し、WebブラウザだけのThinクライアントを活用するインターネットコンピューティングを提唱した。日本列島がWindows 95の出荷で大騒ぎをした数カ月後であり、彼のビジョンは、従来の枠から抜けきれない人たちからは常軌を逸したように思えたのだが、そのビジョンの多くはいろいろと形を変えて実現されている。

 今回、ソフトバンクBBとの提携によって実現に一歩近づいたユーティリティーコンピューティングも彼が一貫して唱えてきたビジョンの一つだ。複雑さをサーバに移し、それらの管理や運用を専門家に任せることによって、信頼性の高いコンピューティングをだれでも簡単に利用できるようにする考え方だ。

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今回はビデオでの登場となったエリソンCEO


 10月末時点で340万ユーザーを超え、全国に高速かつ完全なIPネットワークを構築するソフトバンクBBは、そのビジョンを実現するうえで最良のパートナーに違いない。ユーティリティーコンピューティングの実現を妨げていたボトルネックが、ネットワークの高速化と低価格化によって解消されたからだ。

 ソフトバンクBBの孫氏は、すべての家電製品が電源プラグを差し込めば使えるようになる、という故松下幸之助の「水道哲学」を引き合いに出し、ユーティリティーコンピューティングは、まさに「“電子版”水道哲学」だとする。

 「2000年に過度の期待が崩壊し、大きな落胆を経たインターネットだが、100年に一度の革命はこれから始まる」と孫氏は依然強気だ。

 ステージでは、ユーティリティーコンピューティングの事例として、「BBケーブルTV」やビデオオンデマンド(VOD)サービスのほか、ゲームやアプリケーションのストリーミング配信、エックスドライブ・ジャパンが提供を予定しているファイル共有サービス、ドクターネットによる「遠隔読影ASPサービス」などがデモされた。

 映画や音楽のストリーミングはよく知られているが、ネットワークがローカルのサーバにアクセスするのと変わらないほど高速になれば、ゲームやアプリケーションもその対象となる。プログラムをブロックごとに分け、必要なときにストリーミング配信を受けて利用できる米Stream Theoryの「Stream Theory System」を利用するものだ。アプリケーションは保存できないため、不正使用が防止できるだけでなく、ユーザーもインストールやバージョンアップの知識が不要で、使った分だけ料金を支払うことも可能になるという。

 ソフトバンクは20数年間、パソコンのソフトウェア流通を事業の柱として創業した。今もリテール市場で販売されるソフトウェア製品の7割から8割は同社の取り扱いだという。

 「全く新しいソフトウェア流通の形態が生まれるが、実はこうしたソフトウェアのネットワーク配信は、われわれの原点。ソフトウェアを1カ所に格納し、ユーザーは使いたいときに必要なだけ使うことができる。社名の“ソフトバンク”もそうした意味を込めた」と孫氏。

 また、330万ユーザーを突破し、個人のIP電話市場では92%という圧倒的なシェアを誇るBBフォンが、来年1月から法人向けにも提供が始まるという。企業からPBXやボタン電話装置を撤去し、代わりにBBユーティリティセンターのIPセントレックスサーバで処理するもので、複雑さをネットワークやサーバに移す考え方は共通だ。管理の負担を減らし、コストも大幅に引き下げることができるという。

 「それぞれの企業に技術者がいて、ITシステムを構築しているのは、ダムや発電機を持っているようなもの。自動車や食品の会社がなぜコンピュータの技術者を確保していなければならないのか」と孫氏は疑問を投げかける。

 BBユーティリティセンターでは、ハードウェア、OS、ミドルウェア、ネットワーク機器、アプリケーションを用意し、企業顧客のニーズに応じて、例えばアプリケーションサーバやデータベース、ストレージなどをオンデマンド型のサービスとして提供していくという。

 「ユビキタスなコンピューティングが人々の仕事や生活を変えていく。日本発で世界を変えていく」と孫氏は宣言した。

 なお、BBユーティリティーセンターの構築にあたっては、日本オラクルのほか、インテル、NEC、デル、および日本ヒューレット・パッカードがパートナーとして協力する。

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関連リンク
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[浅井英二,ITmedia]