インタビュー
2003/11/21 18:58 更新


AMD Opteronの魅力を語る――ぷらっとホーム、ソフテック、AMD関係者 座談会

HPCクラスタ向けのAMD Opteronプロセッサ搭載システムを提供するぷらっとホーム、HPCクラスタソリューションのパートナーであるソフテック、Opteronを提供する日本AMDの各関係者による座談会で、それぞれの視点からOpteronの魅力を語っていただいた。

 東京流通センター内にある、ぷらっとホームファクトリーにおいて、HPC(High Performance Computing)クラスタ向けのAMD Opteronプロセッサ搭載システムを提供するぷらっとホーム、HPCクラスタソリューションのパートナーであるソフテック、Opteronを提供する日本AMDの各関係者による座談会が開かれた。ここでは、それぞれの視点からHPCクラスタで発揮されるOpteronの魅力を語っていただいた。

 今回の座談会に参加された方は、ぷらっとホーム ワークス事業本部 技術部 製品開発課 プロダクトマネージャの三宅雅也氏、ソフテック 技術統括部次長 HPCソリューション部長の山口佳紀氏、日本AMD CPGマーケティング本部 CPGプロダクトマーケティング部 部長代理の秋山一雄氏である。

――まず、ぷらっとホームとソフテックの事業関係について教えてください。

三宅 ぷらっとホームは、これまで数多くの出荷実績を誇るプライベートブランドサーバで培った技術とシステムインテグレーションの経験を生かし、最高性能が得られるPCパーツを厳選し、お客様の求めるハードウェアを確実にご提供します。ただし、HPCクラスタに使用するパーツは、お客様の使用目的や設置場所、アプリケーションの特性などによって大きく変化します。そこで、クラスタソリューションにおいて数多くの実績と技術力を持つソフテックさんに協力していただくことにより、PCクラスタに関する幅広いコンサルティングもご提供できるようになりました。

ぷらっとホーム三宅氏

ぷらっとホーム ワークス事業本部 技術部 製品開発課 プロダクトマネージャの三宅雅也氏


山口 ソフテックは、クラスタ技術を利用した高可用性かつ高速な負荷分散型アプリケーションの開発、クラスタシステム移行へのコンサルティング、インテグレーションを専門に行うサービスプロバイダです。お客様のアプリケーション、必要な処理性能、予算などを総合的に判断しながら、お客様の環境に最適なハードウェア構成の提案、システム設計や実装など、HPCクラスタのコンサルティングから実動までをぷらっとホームさんとともにトータルサポートします。

――さて、今回Opteronを搭載した計算ノードを導入されましたが、Opteronの利点はズバリどこにあるのでしょうか?

三宅 まず、64ビット化によって計算処理の速度を高められること、そして4Gバイト(実質的にはシステム予約領域を除いた3Gバイト)を超える大容量のメモリを扱えることがOpteronの大きな利点として挙げられます。

山口 そうですね。特に大容量メモリのサポートは重要です。ソフテックのお客様は、大学や研究機関、企業の研究室が多いのですが、その用途は大規模な科学技術計算や画像処理など、大容量のメモリを使用するものがほとんどです。このため、IA-32が抱えているメモリ領域の制限が大きな足かせとなる案件も多く、このようなときにOpteronの64ビットプラットフォームが威力を発揮します。

秋山 Opteronは、64ビット化による大容量メモリのサポートに加え、メモリそのものの搭載形態も大容量化に適したものになっています。Opteronにはメモリコントローラが内蔵されており、CPUごとにメモリを搭載できます。つまり、クラスタ構成によってCPUの数が増えれば、そのぶんメモリの搭載容量もリニアに増えていくわけです。大容量メモリを必要としている方にとって、Opteronは救世主となってくれるでしょう。

――Opteronを搭載した計算ノードは安定して動作していますか?

三宅 今のところ非常に安定していますね。他のCPUを搭載したクラスタの事例ですが、かつてお客様にクラスタシステムを納入した際に、プロセスが落ちるなど、いわゆる安定しないノードが見つかって対応に追われた経験があります。安定しないとはいっても、ストレステストで検出されないようなトラブルですから、ハードウェアが悪いのか、ソフトウェアが悪いのか、それとも周辺の環境が悪いのか、なかなかトラブル原因を突き止められませんでした。結局、空調の弱い環境に配置していて放熱不足に陥っていることが原因と分かりました。Opteron搭載クラスタについても、放熱にさえきちんと気を配れば、非常に安定して動作すると思います。

――クラスタ環境でのOpteronのパフォーマンスはいかがですか?

山口 ソフテックで計測したHPL(High-Performance Linpack)のベンチマーク結果が分かりやすいと思います。HPLは、TOP500をはじめ、世界で広く使用されている分散メモリ対応のベンチマークテストです。ガウスの消去法によって密行列の線形代数問題を実際に解かせ、その処理性能を計測します。問題サイズ(N)とブロックサイズ(NB)はユーザが指定しますが、今回はN=31000、NB=224(64ビット)、NB=240(32ビット)としました。

OpteronシステムによるHPLベンチマーク結果

OpteronシステムによるHPLベンチマーク結果(計測:ソフテック)


 ソフテックが計測に用いた計算ノードは、Opteronモデル242(動作周波数 1.6GHz)を2基、8Gバイトのメモリ(PC2700 DDR SDRAM)を搭載したマシンです。これを1ノード(1CPU)から2ノード(4CPU)、4ノード(8CPU)へと増やしていき、それぞれの環境でHPLを実行しました。OSにはSuSE Linux Enterprise Server 8.1、コンパイラにはPGI Compiler for x86-64、さらにライブラリとしてATLAS library、メッセージパッシングインタフェースにMPICHを使用しています。

 グラフを見ていただくと分かるように、64ビットバイナリの場合、1CPUでは2.8GFLOPSであるのに対し、4CPUでは3.7倍の10.5GFLOPS、8CPUでは6.7倍の18.8GFLOPSと、ほぼCPUの個数に比例してリニアにパフォーマンスが向上しています。また、32ビットバイナリの場合、1CPUでは4Gバイトの制限により計測不可(実行には7.2Gバイトのメモリ領域が必要なため)、4CPUでは8.4GFLOPS、8CPUでは15.2FLOPSとなり、64ビットバイナリよりも性能が落ちています。裏を返せば、同じプログラムでも64ビットバイナリに切り替えることで、容易にパフォーマンスを高められるわけです。

 なお、このグラフには含まれていませんが、1ノードで2CPUにした場合の性能は1CPUの約1.95倍となりました。理論最大値は2倍ですから、ほぼ理論値に近い性能をはじき出しています。ちなみに、インテルXeonプロセッサでは1.6倍前後となります。

秋山 Opteronは、高速なHyperTransportによるポイント・ツー・ポイントのCPUバスを採用しているため、デュアルプロセッサ構成とした場合でもリニアに性能が伸びます。Xeonは共有バスを採用していますので、ここで大きな差が生まれたのでしょう。

三宅 ぷらっとホームもこれまでさまざまなプロセッサを搭載したマシンを手がけてきましたが、デュアルプロセッサにしてここまでキレイに性能が向上するプロセッサは久々に見たという感じですね。今回はデュアルプロセッサ(2CPU)のマシンを4ノード使用して8CPUとしましたが、クワッドプロセッサ(4CPU)のマシンを2ノードにしたら、さらに性能が向上するでしょう。OpteronのHyperTransportや分散メモリの環境が活きてきますし、CPUバスよりも低速なノード間のメッセージ通信を削減できますので。

秋山 AMDでは、クワッドプロセッサに対応したAMDリファレンスデザインの4Uラックマウントシステムをご用意しています。ぜひ、こちらのシステムを使用して評価していただけたらと思います。

――ノード数はどれくらいまで増やすことができそうですか?

山口 動作させるアプリケーションにもよりますが、1つのプログラムを並列実行する場合は、16ノード前後、頑張っても32〜64ノードが限界ではないでしょうか。一般的に、ノード間で頻繁にデータをやり取りするようなアプリケーションでは、ノード数を増やしても高い性能は得難いと思います。ノード間の通信に用いるインターコネクトには、Fast Ethernet、Gigabit Ethernet、クラスタ向けのMyrinetやGiganet、最近登場した10Gbit Ethernetなどがありますが、Myrinetや10Gbit Ethernetはコストが1〜2桁も違いますから、コストパフォーマンスを考えるとGigabit Ethernetを選択し、いかにパフォーマンスを最適化するかにかかっています。

ソフテック山口氏

ソフテック 技術統括部次長 HPCソリューション部長の山口佳紀氏


三宅 そういう意味でも、クワッドプロセッサのマシンでノード数を少なめに設定するというアプローチは、高速化の面で何か役立つことがあるかもしれません。

――今回、コンパイラとしてPortland GroupのPGI Compiler for x86-64を使用しましたが、フリーのgccでも代用できるはずです。PGI Compilerの利点はいったいどの辺にあるのでしょうか?

山口 ご指摘のように、gccでもクラスタ環境に対応できます。しかし、PGI Compilerは、これからお話しするようなさまざまな機能を備えており、HPC業界では非常に定評のある製品となっています。また、ソフテックはPGI製品の正規代理店ですから、サポートの面でも安心していただけると思います。

 PGI Compiler は、C/C++に加え、Fortran 90/77、データ分散言語のHigh Performance Fortranコンパイラをサポートしています。Fortranについては、GNUもGNU Fortran 77(g77)を用意していますが、PGI Compilerと比較すると完成度がまだ低いのが現状です。古くからプログラミングを行っている方はFortranのソースを数多くお持ちでしょうから、Fortranに強いPGI Compilerは最適な選択肢といえます。また、すべての言語でOpenMPによるSMP自動並列化をサポートしています。OpenMPを利用することで、Opteronなどのマルチプロセッサ搭載マシンの処理性能を最大限に発揮させることができます。

三宅 PGI Compilerに関連してSuSE Linuxについても補足しますと、今回OSとしてSuSE Linuxを採用した理由は、PGI Compiler for x86-64の動作保証環境として指定されていたためです。先日、AMD Athlon 64を含む32/64ビットプラットフォームに対応した次世代のSuSE Linux 9.0が発表されましたが、こちらは11月中旬ないしは下旬までに入手できるようになると思います。なお、ぷらっとホームは、SuSE Linuxの正規代理店ですので、他にもご質問等ございましたら、お問合せ下さい。

――Opteronにまつわる今後の展開を教えてください。

三宅 ぷらっとホームでは、安価に高性能なPCクラスタを導入し、安心してお使いいただくためのクラスタパッケージをご用意しています。このパッケージは、高性能なPCクラスタに加え、お客様の目的別に最適化されたクラスタソフトウェア、コンパイラの提供、システムの導入とチューニングなどもプラスしたトータルソリューションです。

 これまでは、Pentium 4やXeonを搭載したIA-32ベースのクラスタシステムが中心でしたが、今後はOpteronを搭載した64ビットシステムにも力を入れていきます。冒頭でお話ししたように、クラスタで使用したいというお客様のほとんどは、とにかく大容量のメモリを必要としている方ばかりです。このようなお客様には、積極的にOpteron搭載クラスタをお勧めしたいと思っています。

 それから、クラスタからちょっと離れますが、ワークステーションレベルで64ビットシステムを提供することも考えています。最近では、高性能デスクトップPC向けのAMD Athlon 64やAMD Athlon 64 FXも発売されましたが、弊社のお客様は価格よりもパフォーマンスや実績を優先される方が多いため、まずはOpteronを搭載したワークステーションを投入したいところです。また、お手元に置いても邪魔にならない静粛動作を実現するための改良も前向きに検討しています。

山口 ソフテックは、クラスタコンピューティングで培った知識を活かして、最高レベルのクラスタ環境およびグリッドコンピューティング環境を提案してまいります。直接マシンを販売する立場にはありませんが、ぷらっとホームさんの強力なサポーターとなれるように日々頑張りたいと思います。

日本AMD秋山氏

日本AMD CPGマーケティング本部 CPGプロダクトマーケティング部 部長代理の秋山一雄氏


秋山 AMD Opteron プロセッサの導入実績はここ半年でかなり堅固なものになりましたので、あとは多くの皆様にOpteronの素晴らしさをもっと知っていただくことが何よりも大事だと考えています。AMDは、Opteronの認知度をさらに高められるように、ぷらっとホームさんやソフテックさんのようなインテグレータの皆様と協力しながら、マーケティング活動をいっそう強化していきたいと思います。

――本日は、どうもありがとうございました。

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[構成:伊勢雅英,ITmedia]

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