エンタープライズ:インタビュー 2003/12/19 01:26:00 更新


Interview:「次の照準はホスティング」とOracleのロズワット執行副社長

エリソンCEOのビジョンを開発サイドで支え、実現しているサーバテクノロジー部門のトップ、ロズワット執行副社長がOracleWorld Tokyoのために来日した。今後、力を注ぐのはホスティングだと話す。

 3年ぶりの開催となった「OracleWorld 2003 Tokyo」の目玉は間違いなく「グリッド」の名を冠した「Oracle 10g」だった。Oracle 10gは、単なるバージョンアップではなく、コンピューティングのスタイルを変えてしまうイノベーションだとOracleは強調する。もちろん、同社のビジョンの大半は総帥、ラリー・エリソンCEOから生まれるものだろうが、それを開発サイドで支え、実現しているのはサーバテクノロジー部門だ。OracleWorld Tokyoのゼネラルセッションのために来日した同部門担当のチャック・ロズワット執行副社長に話を聞いた。

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かつてはDEC Rdbの責任者だったロズワット氏


ZDNet Oracleのグリッド技術をマーケティングメッセージに過ぎない、と非難するベンダーもいますが、どこまでリアリティのあるものなのでしょうか。

ロズワット 私自身はそのようなことを言うベンダーを承知していませんが、われわれのグリッドは、さまざまなパートナーと一緒に実現しているものです。米国ではHewlett-Packard、Sun Microsystems、Dell、EMC、Cisco Systems、日本でも日立製作所、NEC、富士通らと協力してグリッドを実現しています。彼らはグリッドを構成するサーバ、ストレージ、そしてネットワークのベンダーたちです。

 Oracle 10gは、グリッドのための最初のインフラソフトウェアであり、コンピュータやストレージという資源を高速ネットワークによって接続し、アプリケーションが必要とするキャパシティを確保できるようにする役割を果たします。

 このようにソフトウェアによってグリッドを実現しようとしているのはわれわれOracleだけです。マイクロソフトには、グリッドのかけらも見られません。その代わり、Windowsによって40年前のメインフレーム(SMP構成の巨大なサーバ)を再構築しようとしているのです。また、IBMは高い給料で雇っているコンサルタントを使い、ゼロからグリッドを構築するつもりです。

ZDNet ラリー・エリソンCEOは、時としてエキセントリックとも思えるビジョンを打ち出してきました。例えば、1990年代半ばからユーティリティーコンピューティングを唱えてきましたし、既に将来のコンピューティングも見据えていると思います。そうした彼のビジョンを具現化する技術とはどのようなものでしょうか。

ロズワット われわれは、サーバベースで考え、クラスタによってサーバを統合しようとしています。そうすることによって、最高の可用性、最高の信頼性、そして最高のセキュリティを最低限のコストで実現できます。これがここ5年間変わることのないラリーのメッセージです。

 テクノロジーサイドでも、彼のメッセージに合わせて開発を進めてきています。今後、われわれが力を注いでいく分野の1つとして、ホスティングがあります。これはユーティリティーコンピューティングの範疇に入るかもしれません。

 ホスティングにはグリッド技術が必須となります。たくさんの顧客のアプリケーションを数多くのコンピュータ上で走らせ、それぞれデータを管理していかなければならないからです。したがって、ホスティングとそれを管理する機能、そしてさらに高度なグリッドの機能が開発面で力を注いでいく分野になります。

 もう1つの分野としては、ビジネスインフォメーションがあります。近い将来、耳にするかもしれませんが、これまで以上に質の高いビジネスインフォメーション引き出せるようにアプリケーション製品やテクノロジー製品を強化していきます。

ZDNet 来年1月のOracle AppsWorld 2004 San Diegoで何かそれに関連する発表があるのでしょうか?

ロズワット AppsWorldの発表では、ビジネスインテリジェンスの機能強化が目玉となるでしょう。Oracle Database 10g、Oracle Application Server 10g、そしてE-Business Suite 11iが統合され、うまく連携することで、そうした機能強化が実現されます。

ZDNet 久々の来日と聞いています。日本の顧客についての印象を聞かせてください。

ロズワット 数年ぶりですが、長年、多くの日本の顧客とお付き合いをしてきました。それは、1994年にOracleに移る以前のディジタルイクイップメント(DEC)時代からのことです。

 日本の顧客らは高い品質を要求し、ベンダーにコミットメントとその実現を厳しく求めてきますが、その反面、とても意義のあるフィードバックを返してくれる存在でもあります。

ZDNet DECといえば、Oracleは1994年に「DEC Rdb」を事業ごと買収していますね。

ロズワット はい、私はそのDEC Rdbの責任者でした。

ZDNet DECとOracleでは、技術に対する考え方など違いがありましたか。

ロズワット DECはハードウェアにフォーカスしていましたが、どちらも製品主導のベンダーだったため、Oracleに慣れるのは容易でした。特に私はDEC Rdbを担当していましたから。

ZDNet 現在のRAC(Real Application Clusters)の多くは、DEC Rdbからの技術で実現されているのではないでしょうか。

ロズワット Oracleの最初のパラレルサーバ製品は15年前にリリースされ、それはVAX VMSで稼動しました。したがって、DECのクラスタリング技術と非常に関連性があるということは言えるでしょう。

ZDNet エリソンCEOが見据える将来のコンピューティングのために、新しい技術が必要になった場合、買収によって手に入れることも考えられますか。

ロズワット 製品がより良くなる技術であれば、買収を否定するものではありませんが、自社で開発する方が容易なことが多いと思います。われわれはすべての製品が緊密に連携できることが重要だと考えています。データベース、アプリケーションサーバ、Oracle Collaboration Suite、そしてOracle E-Business Suiteでは、使うのも、インストールするのも、そして管理するのもすべて一括してできるようにしています。こうしたことを実現するためには、買収によって得た技術では、その統合のためにかなりのエンジニアリングが必要になってしまうからです。



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[浅井英二,ITmedia]

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