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2004/04/20 00:06 更新

第九回
Webパーツとは何か 〜Webパーツギャラリー (2/2)


Visual Studio .NETによるWebパーツ開発

 前述のとおり、WebパーツのインフラストラクチャはASP.NETを基盤にしており、ASP.NETの派生クラスもしくは拡張クラスを含むオブジェクトモデルである。つまり、Webパーツは従来のようなスクリプトベースではなく .NET Frameworkベースのテクノロジーなので、C#やVisual Basic .NETなどの言語を使用して開発することができる。

 Webパーツそのものは、Webパーツアセンブリファイル(dll)とWebパーツ記述ファイル(dwp)ファイルの組み合わせで構成されている。Webパーツは、インターネットやイントラネットで配布されることを前提に設計されているため、アセンブリファイルにはセキュリティを考慮して厳密名(strong name)を付与する必要がある。

 厳密名とは、アセンブリのIDやデジタル署名から作られた、アセンブリを一意に識別できる名前を意味する。厳密名が付与されたアセンブリは、グローバルに一貫性が保証され、開発された後に改ざんやなりすましなどが行われていないことを証明できるのだ。Webパーツがセキュリティに優れていると言われる理由の一つは、アセンブリに厳密名がついているため、そのWebパーツの素性が確かなものだと認められるからだ。

 開発する対象という観点から見ると、WebパーツとはASP.NETのサーバコントロールである。開発者は、マイクロソフトのサイトからWebパーツテンプレートをダウンロードし、開発環境にインストールすると、Visual Studio .NETの環境でカスタムWebパーツを開発できるようになる。テンプレートを使用すると、ビジネスロジック部分のコーディングのみで開発できるため、一から実装する場合に比べると、開発コストを削減できる。また、Webパーツはリアルタイムにデバッグすることも可能だ。

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画面4■Visual Studio .NETの新規プロジェクト作成時に、Webパーツライブラリプロジェクトを選択する。これは、マイクロソフトのダウンロードページからWebパーツテンプレートをダウンロードし、インストールすると追加される。


 Visual Studio .NETで開発が可能であることと、ASP.NETをベースにしていることによって、開発者は一般に広く普及した技術でWebパーツの開発を行える。さらに、Webパーツは、SPSのオブジェクトモデルを利用できる。つまり、SPS固有の機能をWebパーツから呼び出せることになる。SPSの既定のWebパーツに、それぞれの業務に適した機能を追加したカスタムWebパーツを開発することができるのだ。

 Webパーツの開発に有用な情報は、マイクロソフトのWebサイトから取得できる。このページからは、開発手順やサンプルの作成に関するホワイトペーパー、SDKなどが取得できる。Webパーツの開発を行う際には、ぜひとも参考にしてほしい。

 開発を行い、作成されたWebパーツをセットアップすると、WebパーツはWebパーツギャラリーに登録される。Webパーツギャラリーとは、ユーザーが使用できるWebパーツのカタログのことだ。サイトの管理者がWebパーツをセットアップすると、サイトの[Webパーツの追加]メニュー選択時に表示されるWebパーツの一覧リストに表示されるようになる。

 Webパーツギャラリーには、次の4種類がある。

  • 仮想サーバギャラリー
  • ギャラリー
  • オンラインギャラリー
  • Webパーツページギャラリー

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画面5■ポータルサイトの[共有ページの変更]メニューで[Web パーツの追加]-[参照]を選択すると、Webパーツギャラリーを一覧できる。


 WebパーツギャラリーにどのWebパーツを登録するのかは、あくまでも管理者の判断に委ねられている。ユーザーは、登録されたWebパーツの中から個人やチームで使いたいWebパーツを選択し、自由にサイトを構成する。はじめにサイトの管理者による選別が行われることによって、サイトを利用する全ユーザーやシステムに悪影響を与えるような、不正なWebパーツを取り込むことを防ぐ。アセンブリレベルとはまた異なるレイヤーでのセキュリティも確保できるのだ。

 SPSの既定にないWebパーツを手に入れるには、自ら開発する以外にも方法がある。マイクロソフトのSharePoint Portal Server 2003 WebパーツとWebコントロールサイトには、さまざまな機能を持つWebパーツが無償で提供されている。例を挙げると、実行ファイルへのパスを指定するとポータルサイトからローカルコンピュータ上のアプリケーションを起動できる「アプリケーションランチャーWebパーツ」や、エリア内のドキュメントライブラリを一括してツリー表示できる「ドキュメントツリービューWebパーツ」など、どれもかゆい所に手が届くユニークな機能を持っている。SPSだけでなくロータス ノーツのデータベースなど、他のシステムと連携するWebパーツも豊富に用意されている。詳しい利用方法はReadmeで紹介されているので、興味を持ったWebパーツがあればダウンロードしてみてほしい。

 このサイトには、随時新しいWebパーツが提供される予定だ。業務で使える便利なWebパーツが提供されているか、定期的にチェックするとよいだろう。

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[佐々木 優美子,ITmedia]

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