インタビュー
2004/05/13 23:24 更新

Interview:
キーワードは「X+V」? OPERAが携帯を見据えて進める次世代ブラウザ

OPERAは次のバージョンアップで、音声を使ったブラウザ操作を可能にすることで、携帯電話市場での優位性を高めようとしている。セールス&ディストリビューション部門担当のバイスプレジデント、Lars Boilesen氏にOPERAの今後について聞いた

 PC向けWebブラウザのシェアでIEの後塵を拝するOPERAだが、IEにない機能を持って携帯電話などの市場で大幅に躍進しようとしている。Opera Software ASAセールス&ディストリビューション部門担当のバイスプレジデント、Lars Boilesen氏に今後のOPERAについて聞いた。

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「ブラウザはコンテンツを見るためだけのものではない」とBoilesen氏

軸足をPCから移し始めたOPERA

ITmedia OPERAは現在、PC向けWebブラウザのシェアでは一桁台ですが、このままPC向けの市場を狙っていくのですか?

Boilesen 確かにシェア的にはそのとおりです。それでも現在、OPERAを使用しているユーザーは1000万近く存在しています。私たちは今、デスクトップPC上のWebブラウザとしての存在から携帯電話やSTBなどへの搭載を狙ったビジネスモデルに変化しているところです。具体的には携帯端末のベンダーからUIの部分の開発を受注したりしています。

 そのほか、パートナーを作っていくことを着実に進めています。OPERAの最新版ではGoogleのAds by Googleを採用したほか、AdobeやMacromediaのオーサリングツールの中でもOPERAのレンダリングエンジンが使われるなどしています。

ITmedia デスクトップPCから携帯電話などに軸足を移すということですが、それらの領域でOPERAの強みはどこにありますか?

Boilesen 携帯電話などでは、メモリのフットプリントが小さく、またプロセッサの能力も低いのが現状です。OPERAはもともとメモリの使用量も抑え、軽快に動作するように設計されており、この分野との相性がいいのです。また、マルチプラットフォーム対応なのも強みですね。

 また、小さな画面向けに最適化された形でレンダリングを行う弊社の技術「Small Screen Rendering」(SSR)は非常にこの市場に即したものだと思います。こうしたレンダリングはOPERA自身がクライアント側で行うため、Webサイトの運営者は携帯向けにHTMLの書き換えなどを行う必要がありません。もちろん意図的にmediaタイプ別の記述を行うことで企業のポリシーに沿った形での表示も可能ですが、SSRを使うなら運営上の新たなコストは発生しないことになります。

ITmedia 携帯電話などをターゲットに据えるのであれば、PC版を出し続ける意義はどこにあるのですか?

Boilesen バグ出しの部分ですね。現状では1000万人近いユーザーがPC上でOPERAを使用しています。弊社にはそうしたユーザーから毎日のようにソフトへのフィードバックが受けられることでより質を向上させることができます。PC版で新機能を試してみて、安定しているようなら3カ月後に他のプラットフォームにも実装するといった開発方針を採っています。

今年中には開発人員を約2倍に

ITmedia 現在の開発体制はどうなっていますか?

Boilesen 現在弊社の社員は150名ほどですが、そのうち110名が開発に携わっています。このうち、70名弱がコアの部分の開発に従事し、残りのメンバーが数名単位でプラットフォームごとの部分の開発にあたっています。全体の90%以上のファンクションはコアの部分で網羅されており、移植性が損なわれるような設計を取らないように注意しています。

ITmedia 御社は今年の2月にオスロ証券取引所に上場し、キャッシュフロー的にも余裕がある状態だと思います。今後どの部分にお金を投資していくのですか?

Boilesen 開発人員の増強ですね。現在の110名体制から、今年中には200人体制にまで拡大したいと思います。

ITmedia 現在の最新バージョンとして7.5が発表されましたが(5月13日の記事参照)、今後のロードマップを教えてください。また、日本語版は7.23とバージョンのズレがでてきていますが、この部分は改善されますか?

Boilesen 2バイト圏向けに関しては、おっしゃるとおり若干リリースに遅れが生じています。今後、開発体制が拡充されればできるだけ同じタイミングでのリリースが可能になると考えています。とはいえ、ブランチオフィスとして日本に開発人員を配置するといったことは考えていません。ただ、UIの部分を日本のベンダーと協力して開発していくことも将来的にはあるかもしれません。

 7.5以降の予定としては、7月ごろを目処に次のバージョンを予定しています。このバージョンではX+Vという音声によるブラウザ操作の機能を盛り込む予定です。

ITmedia X+Vは「XHTML」と「Voice XML」を組み合わせたものですね。これによってどのようなことが可能になるのでしょう。

Boilesen X+Vは2001年にIBMと米モトローラ、そして弊社がW3Cに提出した仕様です。携帯などを見ても明らかですが、今後のコンピューティングはキーボード依存型から脱却していくことになるでしょう。その際に音声による操作を可能にするこの技術は非常に重要です。

日本の携帯市場と今後のOPERA搭載端末の予定

ITmedia 日本の携帯市場をどう見ていますか?

Boilesen グローバルの観点から見ても非常に先進的でかつエキサイティングであると思います。現在の携帯というのはソフトウェアドリブンな面がありますが、日本ははるかに先進的だと思いますね。弊社にとって非常に重要な市場であると認識しています。

 OPERAの技術を使えば、オンラインコンテンツを表示させるなど携帯電話のUIをダイナミックなものにすることが可能です。私たちが狙うのは携帯電話上でOPERAを標準のUIにしていくことなのです。

ITmedia 日本では京セラからOPERAを搭載したPHS端末「AH-K3001V」が発売されます(4月22日の記事参照)。こうした動きは他にもありますか?

Boilesen 京セラの件に関しては、すでに中国向けにOEMしていたものにOPERAが搭載されていましたが、国内での発表はこれが初です。ライセンスの形態としては、1台あたりいくら、といったロイヤリティベースのものです。

 ちなみに、AH-K3001VではμITRON上でOPERAが動作していますが、当然Symbian OSなどでも動作します。同じ市場で同様の発表が今後1、2週間以内に行えるかもしれません。

ITmedia OPERAはW3Cへの準拠を強く唱えていますが、現状では、未実装だったりバグなどによって必ずしもそうではない部分もあります。また、W3Cに準拠していないWebサイトも多いですが、そのあたりをどう考えていますか?

Boilesen われわれがストリートHTMLと呼んでいるようなW3Cに準拠していないWebサイトはそれこそ星の数ほどあります。これらに対して啓蒙活動を行っていくことは重要ではありますが、あまりに数が多すぎることで、その効果は知れています。われわれとしては、啓蒙活動と平行して、そういったWebサイトでも問題なく表示できるようにしていくことも大事であると考えています。



[聞き手:西尾泰三,ITmedia]

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