「パワフルでフレンドリー」――FileMaker Pro 11の狙いを聞く:ついにグラフを作成可能に!
FileMaker Proの最新版となるバージョン11の国内発売に合わせ来日した、米FileMakerのドミニーク・グピール社長に話を聞いた。
米国時間の3月9日、米FileMakerはその主力製品であるデータベースアプリケーション「FileMaker」の最新版、FileMaker Pro 11を発表した。日本での発売を直前に控え、来日したドミニーク・グピール社長に話を聞いた。
ITmedia バージョンアップの要点は。
グピール 今回、ユーザーおよびデベロッパーの両者から長く要望を受けていた「グラフ&レポート」機能を実装できた。これによりFileMaker Proのレイアウトから直接、(Excelのような)表計算ソフトを使うのと同様に集計したり、ビジュアルなチャートを作ったりできるようになった。報告書や資料の作成手順が簡略化されたことで、ユーザビリティーの向上を実感してもらえるはずだ。
もともとFileMakerは、直感的なユーザーインタフェースを備えるなど“使い勝手”を重視してきた。同時に“ユーザビリティーの良さと機能のパワフルさは、相反するものではない”というポリシーを持っている。今回のように、機能の拡張が使い勝手を改善したケースは、このポリシーを象徴することだと考えている。
対象は“ワークグループ規模”の市場
ITmedia FileMakerが主な対象とする中堅中小企業には、長引く不況に苦しむところも多い。
グピール: まず、われわれがデータベース市場をどう捉えているかについて説明したい。エンタープライズ規模の大企業にとってはOracle DBやDB2といった選択肢があり、それらと競合するつもりはない。またコンシューマーを対象としたパーソナルデータベース分野には、MacとiPhone、そしてiPadをプラットフォームとするBentoを投入している。
ではFileMakerが対象とするデータベース市場はどこか? それは5人から200人規模での利用が中心となる“ワークグループ”規模の市場だ。ここではまだ、機能やメンテナンス性が十分でない表計算ソフトをデータベースとして利用していたり、逆に価格的にも開発するにも負荷の高いRDBMSが使われていたりする。
表計算ソフトの利用には、いずれビジネスが成長した際にRDBMSに切り替えなければならないという問題があるし、いきなりRDBMSを入れてしまうと、DBA(Database Administorator:スキルを有したデータベース管理者)の雇用や育成にコストが掛かってしまう。そもそもITコストの大きな部分を人件費が占めているという問題もある。
だがユーザビリティーと多機能さを両立したFileMakerなら、中堅中小企業のニーズとコスト意識にマッチし得ると自負している。ボリュームライセンスでの購入についても、従来「10ライセンスから」だったものを「5ライセンスから」としハードルを下げた。またFileMaker Pro 11には、導入してすぐ業務で使ってもらえるよう、Starter Solutions(いわゆるテンプレート)として「請求書」を追加している。
ITmedia 市場におけるポジショニングは理解した。だがBentoにはWindows版がないため、パーソナルDB市場をカバーできていないとも考えられるが?
グピール BentoをMacのプラットフォームで提供することには幾つかのメリットがある。まず“Apple”というブランドの強みを利用できること。加えて、OSであるLeopardを始め、iCalなどAppleの優れたテクノロジーと連携させられること。そして(iPhone版をApp Storeで購入できるなど)Appleの流通ネットワークを利用できることだ。
BentoはiPhoneまたはiPad単独でも利用できるので、Macユーザーでなくとも、ぜひ使って欲しい。だがデスクトップ版Bentoと連携させられた方がより便利だという意見については、理解する。
ITmedia 「Webビューア」機能を使ったTwitterなどソーシャルメディアとの連携も提案しているが?
グピール 商品データベースをもとに顧客とコミュニケーションするケースなどが考えられる。ちなみにわれわれ自身も、そしてデベロッパーコミュニティーにおいても、Twitterはかなり使われている(笑)
ITmedia 日本では特にクラウド、SaaSといったキーワードが注目されている。実際、中堅中小企業を対象にした業務会計パッケージのSaaS化なども進んでいる。現状、FileMakerはパッケージ展開だけだが、将来的なSaaS化について計画はあるか。
グピール われわれはBento 3とFileMaker Pro 11をリリースした。ここで話せるのはそれだけだ。
2010年3月30日付けで日本法人社長に就任した石井元 氏とドミニーク・グピール社長。2009年10月に国内初開催となったFileMaker Conferenceを今年も実施するのか? という質問に対しては「イシイサン シダイデス(笑)」とグピール氏
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