毎週3分、情シスドリル コレ1枚で分かる「ERPシステム」:即席!3分で分かるITトレンド
ERPシステムは、企業内のあらゆる経営資源を統合的に管理し、経営活動をより効率化する手法としてとして注目されてきました。具体的にどんなメリットがあるのか、従来型システムと比較しながら見ていこう。
この連載は
カップめんを待つ間に、電車の待ち時間に、歯磨きしている間に“いまさら聞けない”ITトレンドが分かっちゃう! 今さら聞けないITの最新トレンドやビジネス戦略を、体系的に整理して分かりやすく解説する連載です。「この用語、案外、分かっているようで分かっていないかも」「IT用語を現場の社員にもっと分かりやすく説明できるようになりたい」――。情シスの皆さんのこんな課題を解決します。
ERPで経営資源を一元管理
ERP(Enterprise Resource Planning)とは、企業経営の基本となる資源要素(ヒト・モノ・カネ・情報)を会社全体で一元的に把握し、それを適切に分配して有効活用する計画手法であり、その計画を重視する経営手法のことです。このERP経営を実現するための情報システムが、ERPシステムです。
業務ごとに個別に作られた情報システムは、それぞれ、台帳や帳票などを収めたマスターファイルと業務処理を行うためのプログラムで構成されています。このようなシステムの場合、個々の業務処理には最適化されていますが、他の業務間との連係がうまく行えなかったり、似たような業務を重複して行っていたり、データの不整合や二重入力といった弊害が増えたりと、さまざまな問題を抱えることになります。
例えば「顧客情報」は、顧客の購買情報を管理し、販促キャンペーンでチラシを郵送するための販売システムで利用します。また、顧客に荷物を輸送する場合は物流システムで使いますし、請求書を発行し、入金を確認するための会計システムでも使います。
しかし、マスターファイルを個別に管理していると、顧客情報が変更されたり商品の販売に伴って情報が更新された場合、関係する全てのデータを個々に書き換えなくてはなりません。また、ある業務システムのプログラムが修正された場合、影響を受ける他の業務システムのプログラムを洗い出し、それを修正することになります。
ERPシステムは、会社全体で統合化されたマスターデータベースを用意し、全ての業務処理に、この統合されたデータベースを使用します。そのため、データの一貫性は保証され、データの不整合や二重入力の手間はかかりません。また、データ相互の関連は、業務の流れ(ワークフロー)と一体となってデータベースに格納されるので、業務プロセス全体の整合性も保証されます。
さらに、データは全て一元的管理され、常に最新の状態に保たれていることから、会社全体の動きや状況をリアルタイムで捉えることができます。
ただ、このようなERPシステムを構築するためには、業務ごとに個別最適化された既存の業務プロセスを見直し、会社全体で最適化された業務プロセスに再構築しなければなりません。このような取り組みをBPR(Business Process Re-engineering)といいます。
また、個別に作られたマスターファイルも整理し、統一のデータベースに作り直さなければなりません。
さらに、既に個々の業務の現場に最適化されたシステムが稼働している場合は、それに慣れている人たちからの抵抗にあう恐れもあります。
実効性のあるERPシステムの構築は、会社全体が抱える課題や現状についての危機感を正しく共有し、経営トップの強力なリーダーシップの下に取り組まなければ困難といえるでしょう。
著者プロフィル:斎藤昌義
日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィルはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤリティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら。
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