NEC、世界初の算出技術を利用した「土砂災害予兆検知システム」を開発
NECは、土砂に含まれる水分量から土砂斜面の崩壊の危険性の“見える化”を実現した「土砂災害予兆検知システム」を発売する。
NECは6月28日、「土砂災害予兆検知システム」を製品化し、発売した。同システムは、土砂に含まれる水分量から土砂の重量・粘着力・摩擦・土中の水圧という状態を表す4種のパラメータを算出するデータ解析技術を活用。この技術は同社が世界で初めて開発したといい、島根県津和野町など全国約10の自治体で実証実験を行っている。
同システムは、土砂斜面に設置して土砂に含まれる水分量を測定するセンサー子局、複数のセンサー子局の測定データをまとめてクラウドに送信する中継局、測定データを蓄積・解析するクラウドサービスから構成されている。センサー子局はバッテリー稼働で電源工事は不要。2年程度の長期間稼働が可能だ。通信も免許申請が不要な920MHz帯の特定小電力無線を利用する。
土砂に含まれる水分量を測定するセンサー子局を斜面に設置するだけで、リアルタイムに土砂斜面の崩壊の危険性を可視化する。時間雨量や土砂に含まれる水分量の変化状況を蓄積し、過去の災害発生時および災害には至らなかった場合と、現状の測定値との比較もできる。
同システムの価格は、1斜面あたり初期費用690万円、月額7万円から(いずれも税別、センサー子局3台、中継局1台、設計・設置工事費込みの参考価格)。販売目標は今後3年間で200システムを目指している。
自治体向け災害対策ソリューションは、どれだけ住民の避難時間や安全の確保に貢献できるかが鍵になる。都道府県と気象庁が共同で発表する「土砂災害警戒情報」に加え、土砂斜面に設置した監視カメラや傾斜計、ワイヤーセンサーなどの情報も収集し、判断している自治体もあるが、この方法では前兆現象を把握してから実際に土砂斜面の崩壊が起こるまで、わずかな時間となることもある。また、そこで得られた情報を利用したシミュレーションシステムはコスト高となるケースも多い。
今回「土砂災害予兆検知システム」に搭載されている新技術は、土砂斜面の崩壊の危険性を求める解析モデル「斜面安定解析式」に必要な4種のパラメータを、土砂に含まれる水分量のみから算出するため、よりリアルタイムに状況を低コストで可視化できると期待されている。土砂崩壊の前兆をできるだけ早めに、正確に把握できれば、迅速な避難勧告・指示の実現につながる。
一方で、NECを始めとする大手国内ベンダーが提供する自治体向け災害対策ソリューションでは、価格面での競争も激しい。ここで利用されるIoTおよびクラウド技術は、災害検知力の向上だけでなく、コスト圧縮にも大きく貢献している。今後は、洪水などその他の災害を含めた総合的な対策システムの中に、土砂災害予兆検知システムも組み込まれ、「トータルソリューションとしていくら」という競争が始まると予想される。
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