多数の遠隔拠点でも3秒で同期――富士通から“デジタル会議室”の新技術
富士通研究所は、ネットワークを介した「仮想的な大部屋」を実現し、複数拠点間での共創活動を支援する技術を開発。海外拠点などの遠隔拠点間でも迅速な課題共有や意思決定が可能になるという。
富士通研究所は、2015年に開発した部屋全体をデジタル化する空間UI技術を拡張し、遠隔拠点間をネットワークでつなぐ“仮想的な大部屋”を構成し、複数拠点間の円滑な共同作業を可能にする技術を開発した。
2015年に開発した技術は、1つの拠点内で、複数の画面と端末を連携させるものだ。会議などの場で、PCやスマートデバイスとその場に設置された表示機器を自動的に連携させる。壁や机上など、広い空間に仮想的なウィンドウシステムを投影し、情報の表示や共有を可能にする。
今回、同社は空間UIの技術を複数の拠点間で利用できるように拡張。ネットワークを介した遠隔拠点間で共有できる仮想的な大部屋を実現したという。例えば、ものづくりの分野において、設計現場と国内工場、海外工場、品質保証部門などをつなぐタイムリーな課題共有と迅速な意思決定を行うのに有効としている。
空間UI技術の拡張にあたり、同社は複数拠点で同一データを共有しても操作感に影響を与えないネットワークの技術「分散データ共有技術」と、操作競合を軽減するUIの技術「アウェアネス伝搬技術」を新たに開発した。
分散データ共有技術では、画面操作やアプリケーションのデータを、クラウドではなく、各拠点ローカルに持ち、必要なデータだけを同期するようにした。これにより、円滑な操作や共有を実現したという。
ユーザーのアプリケーション操作は、同じ拠点内のディスプレイや端末にはそのまま共有されるため、リアルタイムに滑らかな操作や共有が行える。他拠点とのデータ共有では、各拠点までのネットワーク遅延状況に応じて、コンテンツを動かした際の軌跡など、不要なデータを削除することにより、効率的な通信を実現する。
この技術について実験を行った結果、多拠点間のデータ共有における遅延は、同技術適用前に比べて約9割短縮し、3拠点で最大2.1秒、6拠点で最大3.1秒で同期されたという。一方で、ローカルのデータ共有は拠点が増えても一定(0.3秒以下)であることを確認した。
アウェアネス伝搬技術は、操作競合の問題に対するもので、遠隔側の操作状況が分かるようにするもの。相手先が操作しているコンテンツをフラッシュ表示させたり、相手先の人の影を表示させたりして、遠隔側の状況を知らせる。これにより、相手先が操作中のコンテンツへの操作を自粛するように気付きを与え、操作競合を削減できるという。
この技術を用いて、2拠点で写真や手書き付せんを分類するタスクを行う実験を行った結果、同技術を適用しない場合と比較して操作競合を約5割抑制でき(操作競合:同技術適用なし22回、適用あり11回)、作業効率を約26%改善(操作回数:同技術適用なし329回、適用あり241回)できることを確認したという。
これらの技術によって、複数拠点間で互いの画面を1つの画面のように共有しながら、円滑なコラボレーションを図れるとしている。
今後、同社は発想支援の有効性を検証する実証実験を進める。ものづくりの現場に加え、オフィスにおけるテレワークや、教育現場における学校間交流による遠隔アクティブラーニングなどへの活用を見込み、2018年度中の実用化を目指すとしている。
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