橋の振動データからディープラーニングで内部の損傷度合いを推定――富士通の新技術
富士通と富士通研究所は、AI「Zinrai」を活用し、橋の振動データから内部の損傷度合いや劣化状態を推定できる分析技術を開発。損傷の初期段階での推定も可能になるという。
富士通と富士通研究所は、同社製のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を活用し、橋の表面に取り付けたセンサーで得た振動データから、橋内部の損傷度合いを推定するセンサーデータの分析技術を開発した。
現在、橋の点検業務は主に目視で行われているが、目視による情報だけでは、表面に現れた変化しか捉えることができず、内部の損傷度合いを把握するのは難しい。
近年、点検業務のIT化に向けて、床版(橋を通る車両の重みを橋桁や橋脚に伝えるための構造物)の表面にセンサーを取り付け、振動データから損傷の評価を行う試みがされているが、従来の手法では、床版内部の損傷度合いの正確な把握には課題があったという。
今回開発した技術は、時系列データを高精度に分析する富士通独自のディープラーニング技術を拡張したものだ。変動の激しい振動データから抽出した幾何学的特徴を学習させ、正常な状態からどれだけ離れているかを示す「異常度」や、状態の急変を表す「変化度」を数値化し、異常の発生や特徴的な変化を検知する。
本技術を検証するため、モニタリングシステム技術研究組合(RAIMS)が2015年に行った、橋床版の疲労劣化過程における加速試験(輪荷重走行試験)で取得した振動データを利用したところ、振動データから抽出した幾何学的特徴が、健全時はまとまっているのに対して、橋に内部損傷が発生した際には形状が変化するという結果が得られた。
さらに、幾何学的特徴を数値化し、そこから算出された異常度と変化度の結果と、床版内部測定用に埋め込んだ、ゆがみセンサーの測定結果との一致を確認し、有効性を立証したという。
同技術は、橋表面の1カ所に取り付けた加速度センサーのデータ解析結果から広範囲の橋内部の損傷度合いを推定できるうえ、内部のゆがみの発生を検知できることから、損傷の初期段階での推定が可能となり、早期対策につながるという。今後は実証実験を重ねて推定の精度を高めていく予定で、2018年頃の実用化を目指すとしている。
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