ロボットにも履歴書や出勤管理システムを 住友林業流、RPAロボ管理術(1/2 ページ)
情シス主導のRPA導入に成功し、成果も着々と上がっているところで突然、ロボットの開発を中断した住友林業の成田さん。なぜ、このタイミングでブレーキをかけたのか。
情シス主導でRPAを導入、成果も着々と上がっている――(前編の記事参照)。そんな住友林業グループが今、ロボット開発を一時中断しているという。なぜ、このタイミングでブレーキをかけたのか。住友林業情報システム ICTビジネスサービス部のシニアマネージャー、成田裕一さんに聞いた。
ロボットにも履歴書や出勤管理システムを
RPAのパイロット導入を経て、社内で実践を進めていくうちに、さまざまな部署からロボットの作成依頼が舞い込むようになった成田さんのロボット開発チーム「ロボ・ラボ」。住友林業のグループ会社にも浸透し、まさに「これから」というときに成田さんが開発を中断したのは、「このまま拡大していけば、RPAの運用が難しくなる」と考えたためだ。
「いずれは1000体、2000体といった『人数』のソフトウェアロボットがさまざまなシステムに組み込まれて『働く』ようになります。そうなったときに、彼らをどう維持し、管理していくのか。今の時点で先のことを考えておかないと、気付いたらメンテナンスに膨大な時間と労力がかかってしまうような事態になりかねません」(成田さん)
こうした背景からロボ・ラボでは現在、「ロボットを管理する仕組み作り」に注力している。
成田氏が考えた管理法は、ちょっと変わっている。ロボットを擬人化し、ロボットの履歴書や、作業状況を管理するシステムを作ったのだ。
人間の勤怠管理は、出社や有給、ケガなどによる休暇、休職中であるか否かなどを管理する。ロボットに対しても同様に、現在、どこで稼働中なのか、いつまでメンテナンスするのかを一元的に把握できるシステムを開発した。そうやって1人の社員を管理するように、1つひとつのロボットが現在、どんな状態にあるのかを把握できるようにした。
擬人化して管理する理由は2つある。1つは改修の履歴と働く場所を把握しやすくするためだ。
ロボットは、Webやワークシート、システム上の操作を自動で行うよう設計されており、ベースの部分に仕様の変更があると、それによってロボットが動かなくなったり、指定された作業を完全に実行しないまま作業を終えてしまったりといった不具合が発生するリスクがある。
そのため、それぞれのロボットがどういう機能を持っているのか、どんな変更が加えられたのか、どこで使われているのかといった、“人間でいうところの履歴書”にあたるような情報を把握しておかないと管理が難しいという。
履歴書で管理することで、システムに改修が加えられたときには、その改修の影響を受けそうなロボットを抽出して動作確認をするといった迅速な対応も可能になる。
同社ではさらに、各ロボットのログも一元管理し、それをチェックする“上司ロボット”もRPAで開発している。エラーログを出力したロボットがあれば、それを人間のスタッフに通知して、対応を求めるのが彼らの役割だ。
もう1つの理由は、そもそも、人が行っていた作業を任せているので、「そのロボットを単なるソフトウェアとはみなさず、あえて人間に置き換えてみたほうが、管理方法をイメージしやすいのではないか」と思ったからだ。
「Aさんが仕事を休んだら、部署内の誰がどう仕事を分担するのか――といったように、人間の社員同士なら当たり前にやっていることを、ロボットでもできるようにしなければならないと気付きました。ロボットが正常に動かなくなったら、どこにアラームが来て、その仕事を他のどのロボットが肩代わりするかなど、人間の社員に置き換えて考えると、リスクヘッジを含めて数多くのロボットをどう管理すれば良いのかがとても分かりやすかったのです」(成田さん)
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