課題が分からない? 「情報通信白書」にみる日本企業の深刻なクラウド事情:Weekly Memo(1/2 ページ)
総務省が先頃、日本のICT産業における現状や課題をまとめた「平成30年度版 情報通信白書」を公表した。その中から、日本企業の深刻な課題が浮き彫りになったクラウド事情を取り上げたい。
企業のICT投資とクラウドサービスの関係
総務省が毎年、この時期に刊行する「情報通信白書」は、今回で46回目を数える。国内のICT関連統計資料として最も長期かつ広範囲に網羅しており、一部を除いてオープンデータとして利用できるようになっている。
最新版では「人口減少時代のICTによる持続的成長」と題した特集が組まれ、「世界と日本のICT」「ICTによる新たなエコノミーの形成」「ICTによる生産性向上と組織改革」「ICTによるインクルージョン促進」といった話題とともに、ICTの産業や政策についての動向がまとめられている。
本コラムでは、その中から、日本企業の深刻な課題が浮き彫りになったクラウド事情について、これまでのおさらいの意味も含めて取り上げたい。ちなみに、平成29年版および平成28年板もそれぞれ本コラム連載で取り上げてきたので、参照していただきたい。
白書では、クラウドサービスを図1に示すように、IaaS、PaaS、SaaSの3つのサービス内容と、パブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウドの3つの利用形態として定義している。つまり、パブリッククラウドだけではないということだ。
企業がクラウドサービスを利用する効果としては、「システム構築の迅速さ・拡張の容易さ」「初期費用・運用費用の削減」「可用性の向上」「利便性の向上」の4つを例として挙げている。
そして、それぞれの効果の目的として、最初に挙げたシステム構築の迅速さ・拡張の容易さは、売り上げ増加などに資する「攻め」のICT投資とする一方、他の3つについては、コスト削減や既存システムの性能向上に資する「守り」のICT投資のケースが多いとしている。
また、企業のICT投資の推移として、「従来、一定規模以上の企業は情報システムに投資してサービス基盤を整備するのが一般的。一方で、資金力が十分でない企業は情報システムを業務に利活用することが困難だった」と説明。図2に示すように、全体の設備投資額に占めるソフトウェア投資比率を見ると、大企業が10%程度なのに対し、中小企業は4%程度だった。
中小企業にとっては厳しい実情だが、クラウドサービスを利用すれば初期投資や運用投資を削減する効果があるため、事業を行う際の投資のハードルは大きく下がってくる。これにより、これまで費用面で情報システム投資が難しかった中小企業やスタートアップでも情報システムの導入が進むとともに、大企業でも新事業への参入や新製品の開発が容易になることが期待されているとしている。
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