米国ではテレビ番組やゲームの中の暴力表現などが子供に悪影響を及ぼし,暴力傾向を強めたり,犯罪に走らせる要因になっているという報告書が上げられ,結果的に“V-chip”法案を可決するに至った。このV-chipを組み込まれたテレビは,そういった暴力シーンなどを映し出すことができないようになる。これは米国だけの話ではなく,日本でもV-chipの導入を政府は検討しているのだ。
しかし,暴力シーンと犯罪という関連付けを否定する報告が,米トロント大学心理学教授ジョナサン・フリードマン氏から上がってきた。これを報じた米ABC NEWSによれば,今回フリードマン教授が発表した481ページにわたる報告書のほかにも,ピューリッツァー賞受賞者でもある科学作家リヒャルト・ローズ氏の最新の著作“Why They Kill”で「メディアで擬似暴力を目にすることが,人を攻撃的に変えるという意見にはいかなる証拠もない」と言及しているという。また同氏は「それは逆に人々をより平和的にするという証拠がある」とも記している。
フリードマン教授はV-chip法案を可決するに至った各医療団体の報告書で,1000件以上の調査を行っているという点に関し「実際には1000以上の調査をしていない。それらにはどちらとも受け取れる200件程度の調査結果があるだけ」だという。同教授は「過去15年分にわたる英語で公開された暴力的な番組その他を全て分析した。結果(その報告書が)科学的にも何の証明をしていない」と結論付けている。
ABC NEWSでも最終的な結論は避けているが,いずれにせよ論争の行く末が大いに気になるところだ。
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