■いちばん近道なLinuxマスター術
第7回:ADSLによるLinuxサーバ構築
 最近では国内において,ADSLがサポートされるエリアが急速に広がっている。ADSLは常時接続環境であることから,個人でもサーバを構築すれば,自宅で全世界に向けて情報を発信することも可能となる。
 今回はADSL回線を使ってLinuxで構築するサーバをインターネットに接続し,インターネット側からアクセスできるようにする方法を解説しよう。


本稿はサーバに使用するOSとして,Red Hat Linux 6.2日本語版を想定する。またADSLは,NTT東日本/西日本が提供する「フレッツ・ADSL」サービスを利用するものとする。しかしADSLに関する設定は,どのADSLサービスでも基本的には同じなので,フレッツ・ADSL以外でも,ほぼ同様な方法で利用できるはずである。プロバイダごとの違いといえば,IPアドレスの振り分け方法ぐらいだ。

ADSLの接続形態

 まずはじめに,ADSLの接続形態を説明しよう。ADSLの接続(提供)形態としては「1. モデム」(ブリッジ)タイプと「2. ルータ」タイプの2種類がある(Fig.1)。


NTTが提供しているフレッツ・ADSLの場合にはモデムタイプの契約しかない。東京めたりっく通信やイーアクセスなどの他社のADSLサービスでは,モデムタイプとルータタイプのどちらかを契約者が選択できる場合が多い。

Fig.1 ADSL接続の形態
fig01
  1. モデムタイプ
     1台のパソコンを直結するタイプ。複数台のパソコンを接続するためには,「ローカルルータ」と呼ばれる製品を使い,その製品が備えるIPマスカレード機能(NAT機能)を使って実現する。
     直結するパソコンの代わりにLinuxサーバを使い,サーバに2枚のネットワークカードを装着してローカルルータとしても利用するという方法もある。Linuxサーバをローカルルータとして利用する方法は,次回の後編に紹介する。

  2. ルータタイプ
     複数台のパソコンを接続可能なタイプ。しかし多くのADSLサービスでは,インターネット上から割り振られるIPアドレス(グローバルIPアドレス:インターネットで利用可能なIPアドレスのこと)は1つだけであり,ルータ下に接続されたパソコンは,ルータがもつIPマスカレード機能(NAT機能)を使って,192.168.0.xなどのプライベートアドレス(IPアドレス)に変換される。
     標準のルータ設定では,機器の配下に接続されたクライアントパソコンがインターネットに接続することはできるものの,逆にインターネット側からルータ配下につながっているパソコンにはアクセスできない。
     しかし,ルータに搭載されている機能の1つであるIPマスカレード(NAT)を設定することで,ルータ配下の一部のパソコンへもインターネット側からアクセスできるようにすることもできる。
     ルータ配下にサーバを構築し,外部に公開したいのであれば,ルータのIPマスカレード機能の設定を変更する。

 本稿では,前述した「1」のモデムタイプの接続形態を解説していこう。つまりFig.2のようにADSLモデムとLinuxサーバとを直結し,その直結されたLinuxサーバ上で動作させる各種サービス――http,ftpなど――を外部に公開することを目的とする。

Fig.2 本稿で説明するネットワーク構成
fig02

 ADSLモデムとLinuxサーバとを接続する方法は,ADSLモデムの種類(もしくは契約するADSLプロバイダやサービス)によっても異なる。今回は,Ethernet接続タイプのADSLモデムであると仮定する。つまり,Linuxサーバに1枚のネットワークカードを装着し,それとADSLモデムとをEthernetケーブルで接続する形態である。

 ADSLサービスによってはUSB接続のADSLモデムも選べることもあるが,USB接続のADSLモデムをLinuxから扱うのは困難なため,今回の用途のような場合には選択肢に入れないほうが無難だ。

 もし読者がルータタイプの契約をしているのであれば,ルータのIPマスカレードの設定次第で,ルータの配下に設置したサーバを外部に公開できる。しかしルータのIPマスカレードの設定は機種により異なるため,本稿ですべてを解説することは困難である。

 また,企業向けの接続サービスでは,複数のIPアドレスを利用できる契約もある。そういった契約の場合,設定はADSL以外のOCNなどの専用線接続と同じであり,ADSL固有の部分は何もないので,本稿では対象外とする。

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