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Chapter 1:クライアント/サーバーアプリケーションの仕組み

見出し 1.2 Windows DNAによるクライアント/サーバーアプリケーションの構築

 クライアント/サーバーアプリケーションを開発する場合の概念については,前節の説明で理解していただけたものと思う。1)複数のユーザーが同時にアクセスした場合の問題を避けるため,必要に応じてトランザクション処理を実装する,2)柔軟で堅牢なシステムにするためには,2階層アプリケーションモデルではなく3階層アプリケーションモデル(N階層アプリケーションモデル)を採用する,というのが主な論点であった。

 では,実際にプログラムを開発するには,どのようにすればよいのだろうか。

 トランザクション処理については,ADODB.ConnectionオブジェクトのBeginTransCommitTransRollbackTransという各メソッドを使えば実現できるだろう。問題は,3階層アプリケーションモデルにしたときの通信システムである。3階層アプリケーションモデルでは,クライアントとサーバーが何らかの手段で通信し,データをやり取りする必要がある。では,開発者が自らネットワークで通信するようなアプリケーションを開発しなければならないのだろうか。もしそうだとすれば,3階層アプリケーションモデルを選択することによる開発者の負担は極めて大きくなり,2階層アプリケーションモデルを選択せざるを得ないだろう。

 確かに,一般論としてみればそのような結論になるかもしれないが,Windowsプラットフォームで開発する場合には,もっと手軽に3階層アプリケーションを構築することができる。なぜなら,Microsoft社が3階層アプリケーション(N階層アプリケーション)を開発するためのサーバー製品や開発ツールを提供しているからである。3階層アプリケーションやN階層アプリケーションの構築を支援するためにMicrosoft社が提供しているテクノロジの総称を,「Windows DNA(Windows Distributed interNet Applications Architecture)」と呼ぶ。

 本節では,Windows DNAによって何が簡単になるのか,そしてWindows DNAに従って3階層アプリケーションやN階層アプリケーションを構築するにはどのようにすればよいのか,について説明する。


One Point! Windows DNA自体は,1997年のMicrosoft PDC(Professional Developers Conference)で発表された概念であり,1999年のMicrosoft Strategy Dayでは新たなインターネット戦略の一環として「Windows DNA 2000」が発表されている。Windows DNA 2000は,Windows 2000上で提供されるアーキテクチャであり,分散環境をコントロールするAppCenter Server(容易な負荷分散に対応したCOM+対応アプリケーションサーバー),XML(eXtensible Markup Language)ベースのビジネスプロセス統合をサポートするBizTalk Server,IBMのメインフレームやUNIXなどとの相互接続を実現するBabylon Integration Server(次期SNA Server)などの新しいテクノロジが投入される予定である。Windows DNA 2000のキーワードは「XML対応」であり,SQL ServerやSite Server, Commerce Server EditionはXMLをネイティブにサポートしたものへとバージョンアップされるようである。しかし,Windows DNA 2000の全容はまだ明らかとはいえないので,新たな情報が提供された時点で解説することにし,ここでの説明は割愛する。

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