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　Windows 95，Windows 98，Windows NTでは，TCP/IPアプリケーションの名前解決方法が拡張されている。Unixに代表される一般的なTCP/IPインプリメンテーションでは，HOSTSファイルとDNSによる名前解決を試みる。しかしWindowsの場合は，これに加えてNBTによる名前解決も利用するようになっている。DNSキャッシュ，HOSTSファイル，DNSの順に検索して名前解決に失敗すると，NBTのノードタイプに従って名前解決を試みるのである。したがって，HOSTSファイルやDNSサーバーがなくても，TCP/IPアプリケーションで名前解決できる場合がある。

　たとえば，コマンドプロンプトからftpコマンドを実行した場合について説明してみよう。

　まずは，DNSに登録されているホストと接続するときのトレースを見てほしい。biblo.dsl.privateというのがDNSサーバーである。[1]でDNSに対して問い合わせ，[2]で回答が戻ってきている。名前解決に成功したため，[3]でftpのセッションを確立しようとしている。なお，dsl.privateというのは架空のドメイン名である。

[1] lily.dsl.private.1060 > biblo.dsl.private.53: 1+ (35)
[2] biblo.dsl.private.53 > lily.dsl.private.1060: 1* 1/1/1 (92)
[3] lily.dsl.private.1061 > biblo.dsl.private.21: S 8030612:8030612(0) win 8192  (DF)
[4] biblo.dsl.private.21 > lily.dsl.private.1061: S 1628197891:1628197891(0) ack 8030613 win 32120  (DF)
[5] lily.dsl.private.1061 > biblo.dsl.private.21: . ack 1 win 8760 (DF)
[6] biblo.dsl.private.21 > lily.dsl.private.1061: P 1:93(92) ack 1 win 32120 (DF) [tos 0x10]
[7] lily.dsl.private.1061 > biblo.dsl.private.21: . ack 93 win 8668(DF)

　次に，DNSに登録されていないサーバーへの接続を試みた場合を見てほしい。[1]で DNSに対して問い合わせ，[2]でDNSに登録されていないという回答を得ている。そのあと，[3]でftpクライアント側から，UDPの137番ポートを使用してブロードキャストしているのがわかる。これが，NBTによる名前解決のパケットである。ftpクライアントとなっているコンピュータはbノードであるため，ブロードキャストを利用して名前解決している。[4]でbibloというコンピュータから回答を得て名前解決に成功し，[5]でftpのセッションを確立しようとしていることがわかる。

[1] lily.dsl.private.1062 > biblo.dsl.private.53: 1+ (38)
[2] biblo.dsl.private.53 > lily.dsl.private.1062: 1 NXDomain* 0/1/0 (109)
[3] lily.dsl.private.137 > 192.168.1.255.137: udp 50
[4] biblo.dsl.private.137 > lily.dsl.private.137: udp 62
[5] lily.dsl.private.1063 > biblo.dsl.private.21: S 8653610:8653610(0) win 8192  (DF)
[6] biblo.dsl.private.21 > lily.dsl.private.1063: S 2297233530:2297233530(0) ack 8653611 win 32120  (DF)
[7] lily.dsl.private.1063 > biblo.dsl.private.21: . ack 1 win 8760 (DF)
[8] biblo.dsl.private.21 > lily.dsl.private.1063: P 1:93(92) ack 1 win 32120 (DF) [tos 0x10]
[9] lily.dsl.private.1063 > biblo.dsl.private.21: . ack 93 win 8668(DF)

　また，Windows 95，Windows 98，Windows NTでは，DNSに問い合わせた結果をキャッシュしている。いったん名前を解決すると，TTL（Time To Live）の有効期限が切れるまで，DNSサーバーに対して問い合わせることはなくなる。ただし，DNSに対する問い合わせのキャッシュは，NBTのようにシステムレベルで保持されるのではなく，アプリケーションごとに保持される。

　NBTと同様に，TCP/IPの名前解決手順も変更することができる。Windows NT 4.0の場合は，HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM
\CurrentControlSet\Services\Tcpip
\ServiceProviderに，Windows 95/98の場合は
HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM
\CurrentControlSet\Services\VxD
\MSTCP\ServiceProviderに，Table 1-4のパラメータをDWORDタイプで設定する。値が小さいほど，優先度が高くなる。