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Chapter 4:DNS(Domain Name System) 〜委任と内部ルート〜

4.3 DNSサーバーの種類

 DNSサーバーには,その挙動や役割によって,いくつかの種類が存在する。バックアップの目的で利用される「セカンダリサーバー」や,ほかのDNSサーバーにRecursiveな問い合わせを送信する「フォワーダ」や「スレーブ」などは,その例である。ほかにも,ゾーンを管理せず,問い合わせの負荷分散だけを目的としてキャッシュ専用サーバーを構築することもできる。キャッシュ専用サーバーは,問い合わせの負荷を分散させるだけではなく,ルータ間のDNSトラフィックを軽減したり,インターネットに対するDNSの問い合わせを減少させたりするために利用されることが多い。

 ここでは,挙動や役割に応じたDNSサーバーの種類について説明する。

4.3.1 プライマリとセカンダリ

 DNSサーバーがダウンしてしまうと,そのゾーンの名前を解決できなくなってしまう。このため,バックアップ用のDNSサーバーを最低でも1台は用意するのが一般的となっている。DNSには,ファイルやレジストリからゾーンの情報を読み込む「プライマリサーバー」と,プライマリサーバーからネットワーク経由でゾーンの情報を読み込む「セカンダリサーバー」の2種類が存在する。バックアップ用にDNSサーバーを用意する場合,一般的にセカンダリサーバーを利用する。プライマリサーバーとセカンダリサーバーを用意した場合,そのゾーンに対する権威を双方が持つようにNSレコードを構成しなければならない。プライマリサーバーしか記述されていないと,セカンダリサーバーには問い合わせが送付されないので,バックアップとしての役割を果たすことができない。

 クライアントや,そのほかのDNSサーバーから見た場合,プライマリサーバーとセカンダリサーバーとのあいだに違いはない。どちらも,そのゾーンに対して権威を持つDNSサーバーとして認識される。プライマリサーバーとセカンダリサーバーの違いは,ゾーンの情報を記述したファイルやレジストリを保持しているか,それともネットワーク経由でプライマリサーバーからゾーンの情報を読み込むか,という点だけしかない。

 セカンダリサーバーは複数作成することができる。あるゾーンを管理しているプライマリサーバーが,別のゾーンのセカンダリサーバーとなることも可能である。耐障害性を高めるために,地理的に離れた場所にあるDNSサーバーをセカンダリサーバーにすることもある。プロバイダと契約しているのであれば,プロバイダのDNSサーバーがセカンダリサーバーを提供してくれることも多い。

 ところで,プライマリサーバーを複数作成することもできる。すでに述べたとおり,セカンダリーサーバーとプライマリサーバーの違いは,ゾーンの情報をネットワーク経由で読み込むか,ファイルから読み込むかという点にある。プライマリサーバーを複数作成した場合,ゾーン情報を変更するときに,すべてのプライマリサーバーの設定を変更する必要がある。これにより,ゾーン情報の変更がすぐに反映されるという利点がある半面,管理コストは上昇する。また,プライマリサーバーを複数作成するためには,すべてのプライマリサーバーに対する管理者権限を所持する必要がある。このため,バックアップ用のDNSサーバーを作成する場合には,プライマリサーバーを複数作成するのではなく,セカンダリサーバーを複数作成するのが普通である。

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