1社単独のビジネスでは、先は見えている:情報マネージャとSEのための「今週の1冊」(6)
世界規模でスピーディに市場環境が移り変わる中、リーマンショックにも負けず、堅実に成長路線を歩み続けている企業も存在する。「場」を提供することであらゆるニーズに答え続ける彼らの戦略には、業種を問わず学ぶべき部分が多い。
プラットフォーム戦略
リーマンショック以降、多くの企業が苦戦を強いられている中でも、アップルやアマゾンなど、成長路線を堅持している企業は存在する。彼らに共通するポイントとは何か? それは「複数のグループを『場』(プラットフォーム)に乗せ、さまざまな機能を提供」したり、「検索や広告などのコストを低減させ、クチコミなどの外部ネットワーク効果を創造する」“プラットフォーム戦略”を採用していることである――。
このように言われれば、アップルのアプリケーションストアや楽天のような分かりやすい事例が身近にあるだけに、それがどのような戦略なのか、具体的にイメージすることは難しくないだろう。ただ、本書は彼らのビジネスをストレートに分析した作品ではない。彼らの用いるプラットフォーム戦略がどの業態にも応用できるものであり、そうしたアプローチを取り入れることが、業績を高める策になるのではないかと提案しているのである。
注目すべきは、いまプラットフォーム戦略が求められている「4つの理由」だ。まず「技術の進歩の速さ」「顧客ニーズの拡大」により、1社だけでは、いま求められている技術・サービスをすべてカバーすることが難しくなっている。このため、プラットフォームの考え方を採り、すでに必要な要素を持っている企業とアライアンスを組んだ方が、あらゆるニーズに効率的に対応できる。また「ITの進化による外部ネットワーク効果の迅速かつ広汎な拡大」により、特にBtoCの世界では、クチコミやつぶやきをはじめとするユーザーの評価・評判が、ビジネス上、重要な位置を占めるようになった。その点、プラットフォームを構築すれば、参加企業間、ユーザー間で情報をやり取りするなど「外部ネットワーク効果」をより活性化させやすい。
そして最も重要なのが、「コンテンツと、それらにかかわるハードウェア、ソフトウェアなど、多くの産業の垣根が取り壊されていき、再び新しい産業へと収れん(コンバージェンス)」しつつある状況を指した「デジタルコンバージェンスの進化」だ。
例えば、オリンピックの試合を見たいとき、消費者は「パソコン、テレビなどのデバイスにかかわらず、試合というコンテンツそのものを早く、じっくりと見る」という要件を求める。だが、ハードウェアなど「個別の製品の性能を高める」だけではこのニーズには応えられない。つまりアップルのアプリケーションストアの例のように、「コンテンツとソフトウェア、ハードウェアを一体としてとらえ」、“常に付加価値のある新たなサービスを届けられる体制”を提供することが求められているのだ。換言すれば、「コンテンツ、ソフトウェア、著作権管理をするミドルウェア、製品デバイスが一体となって構築するプラットフォーム」になって初めて「それぞれの価値が増す状況になっている」のである。
筆者はこの4つ目の理由から、日本のメーカーは「モノづくりこそが主役であり、ソフトウェア開発は下請け事業、受託事業」という「垂直的なピラミッド状の企業組織体制」から発想を転換する必要があるのでは、と提言する。ただ、世界規模で激しく市場が変化している現在、他社とアライアンスを組んで必要な要素を確保する、外部のステークホルダーをビジネスに巻き込むといった“横のつながり”を考えるアプローチは、メーカーに限らず確かにどの業種にとっても重要といえる。
本書では、「勝てるプラットフォーム」を作るための「3つの特徴」と、それを実践するための「9つのフレームワーク」を紹介している。その際に筆者が「あなたの会社の事業、製品、サービスをプラットフォーム化することができるか、という視点で考えてほしい」と前置きしているように、自社の市場環境とビジネスモデルを、ぜひもう一度見直してみてはいかがだろうか。
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