レーザーが液晶テレビの“色”を変えた? 鮮やかなシアターテレビ“REAL LASERVUE”の実力を麻倉怜士が探る麻倉怜士の三番勝負(4/5 ページ)

» 2012年07月23日 10時00分 公開
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麻倉氏: REAL LASERVUEでは音が良いことに感心しました。非常にクリアで特性もワイド。しかも解像感も高い。ちょっとびっくりするような音が出ます。この音の秘密、NCVスピーカーについて改めて教えてください。

三菱電機京都製作所・AV機器製造部 設計グループ専任の林智之氏

林氏: NCV(Nano Carbonized high Velocity)は、カーボンナノチューブに数種類の樹脂を配合した素材を振動板に使用するスピーカーです。ご存じの通り、カーボンナノチューブは、ナノサイズの直径を持つ管状の細い炭素繊維で、アルミニウムの半分の軽さで、鋼鉄の20倍の強度を有する最先端素材です。

 私がNCVを知ったのは、数年前に「カーボンナノチューブという先端素材を使えば音が良くなる」という話を聞いたのが最初でした。材料に関しては兵庫県尼崎市の「先端技術総合研究所」――昔のダイヤトーンスピーカーの素材や要素を開発をしていたところですが――と、カーオーディオを担当している兵庫県三田(サンダ)市の「三田製作所」がジョインして開発を進めていました。最初にスピーカーの振動板素材としてカーボンナノチューブを活用してみようと提案したのも先端技術総合研究所のメンバーでした。

 製造方法などコアな部分については、トップシークレットのため、われわれも教えられていないのですが、NCV振動板は5000メートル/秒以上というチタンに匹敵する高速伝搬性と、紙と同程度の内部損失という“スピーカーの理想”に近い特性を持っています。つまり、音信号が入ったときには振動板全体にすばやく振動を伝え、音信号が消えたときには余分な残響を残さずに振動を抑える、相反する特性を併せ持っているのです。

NCV振動板はチタンに匹敵する高速伝搬性と、紙と同程度の内部損失という“スピーカーの理想”に近い特性を持つ(左)。10個のNCVスピーカーユニットが露出すると壮観(右)

 チタンやアルミニウムなどの金属振動板は、伝搬速度は早くても内部損失が少なく、音がにごりやすいという欠点がありました。紙の振動板は、適度な内部損失を持っていますが、伝搬速度が遅くて高い周波数の振動に対応できません。一般的な2Wayのスピーカーでは金属振動板のツィーターと紙(パルプ)のウーファーという組み合わせが多いですが、異なる素材を使った2Wayスピーカーを聴くと、私には大抵2種類の音が聞こえます。金属なら金属系、紙はニュートラルだけど音が遅いといった具合ですね。

麻倉氏: それでテレビにも採用したわけですね。

林氏: 三菱電機には、カーオーディオを担当する三田製作所とテレビ/レコーダーを担当する京都製作所、DIATONE技術者がいる三菱電機エンジニアリング、素材/材料を研究する先端技術総合研究所、当社自前の音響信号処理を開発/研究している情報技術総合研究所など、当社音響に関係するキーマンが月に1度集まり、新技術の情報交換を行う「音響技術連絡会」があります。ここでは単なる情報交換にとどまらず、できる限り実際に音を出し、“音”での情報共有を目指しています。そこでNCVスピーカーを試聴し、“抜群の音”と評価されました。また、製品評価などで音をチェックする場合は大抵高級アンプで駆動すると思いますが、NCVはテレビ用の一般的なアンプを使っても音が良かったのです。

 もう1つ、NCVの良いところは、射出成形が可能であることです。特別な精密機械を使い、0.2ミリという隙間の中に樹脂を注入して成型します。高度な技術が求められるため、以前は材料があっても作れる工場がなかったのですが、それを見つけたことで開発が進みました。

 カーオーディオを担当している三田製作所から2010年の秋には、NCV振動板を採用した「DS-G50」という16センチウーファーと3センチツイーターの車載用スピーカーを発売しました。ウーファーとツィーターに同じ素材を使用したため、2Wayなのに、まるで1つのフルレンジスピーカーを聴いているようで、圧倒的な情報量で音が早くて切れもいい。

麻倉氏: 昨年の「MDR2シリーズ」はウーファーだけ紙の振動板でしたが、今年の「MDR3シリーズ」と「LCD-55LSR3」は、10連のスピーカーがすべてNCVになり、音色が見事にそろいましたね。

楕円(だえん)形のユニットはウーファー。10個すべてのユニットに同じ素材の振動板を利用できるのは大きなメリットだ

林氏: 素材の力は大きいです。昨年のMDR2シリーズでは、まず「音で売りたい」というコンセプトがあり、最近では珍しいパンチングメタルを使って中のスピーカーが見えるようにしました。NCVは光を反射しますから。ウーファーは楕円形のものを使い、デザイン上許される範囲で、スピーカーを増やしています。他社製品に6〜8個のスピーカーを搭載した製品があったので、うちは10個でいこうと(笑)。

別府氏: 私も以前は一緒にスピーカーの設計をやっていましたが、昔はわざとスピーカーを隠していました。一昨年、MDR2シリーズに向けてテレビの意匠を何パターンか作った中で、音のヌケを良くなるパンチングメタルを選択しました。スピーカーもあえて見せよう、ここで転換しようと考えたのです。LCD-55LSR3も、その流れをくんでいます。

三菱電機京都製作所・AV営業統括部マーケティンググループ専任の別府智氏

麻倉氏: とにかく三菱は異端ですね。でも、絶対にユーザーニーズには合っています。テレビに対する不満の上位に“音の悪さ”がありますから。音作りは苦労しましたか?

林氏: NCVは高い伝搬速度の効果で人の可聴領域を超えた周波数特性を確保しています。さらに音の作り込み段階で日本語の「さ行」をきれいに出せるようにチューニングされています。ダイヤトーンの音響思想は「人の声」を中心にしていて、余裕があれば低域、高域とバランスよく広げていきます。

 また、われわれは音を良くする技術を自前でもっています。音の超解像技術「DIATONE HD」などですが、それを各機種に合わせてチューニングしていきます。女性の声のツヤ感を重視して、最後は聴感で合わせるのです。

麻倉氏: これなら新しいステレオ文化ができるのではないでしょうか。最近はイヤフォンやヘッドフォンが全盛で、空気中で音を聴くことがあまりなくなっています。しかしNCVスピーカーを搭載したテレビなら、新世代のリビングオーディオができると思います。しかもBDドライブまで持っているわけですから。

別府氏: MDR3シリーズは、従来の「3 in 1」(テレビ、HDD、BD)にステレオを加えた「4 in 1」というコンセプトでやっています。最近はご家庭のリビングルームにはミニコンポすらありませんが、Bluetooth対応として、スマートフォンの音楽なども気軽に流すことができます。

麻倉氏: こうなると、きちんと画面の横にスピーカーを付けて、オーディオテレビのような製品も作ってほしいですね。

林氏: NCVは非常に音がいいと評価いただいています。S/Nも良く音の通りが良い。従来のテレビでは音がこもっていて、お年寄りがボリュームをあげてしまうこともありますが、NCVは聞きやすい、お年寄りにも良いと言われます。やってみて良かったと思いますね。また立体感もあるので、3D映像の視聴にも合っていて、かなり楽しめると思います。今後は、このいい音をリビングでより楽しめるように提案していきたいですね。

別府氏: 三菱電機は「オンリーワン」を目指していますので、NCVとレーザーでハードウェアの部分で差別化していきたいですね。世の中はスマートテレビなどの方向性が話題ですが、それでは三菱電機の良さは出ません。開発にはどちらもお金がかかりますから、それなら私たちは購入した人に本当に喜んでもらえる、本質的な部分で差別化していきたいと思っています。レーザーとNCVは今後も三菱電機のオリジナルとして伸ばしていきます。

麻倉氏: 「オンリーワン」ができるということが、研究所ありの総合メーカーの強みですね


 最近のテレビは、スタイリッシュな外観にこだわるあまり、ここ数年で急激に音が悪くなりました。しかも改善の見込みがありません。実際にスタイリッシュデザインを優先させた製品の音を聴いてみたところ、特定の周波数で位相が回転しているような印象で、変な空間感がありました。昔のVHSと異なり、Blu-ray DiscのHDオーディオは情報量が多いのに、多くの薄型テレビはそれを活かせないのです。

 しかし、REAL LASERVUEの音には驚きました。まさに本格的といっていい音です。1つには周波数レンジが広いためで、かなり高域側にも延びていてます。Blu-ray Discの再生はもちろん、解像感も良好なのでオーディオとしても楽しめるでしょう。


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提供:三菱電機株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2012年8月31日