独特のパースが楽しめる、明るい超広角ズーム――タムロン「SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD」:交換レンズ百景
極端なパースペクティブが楽しめることは超広角レンズのメリットの1つ。タムロンの手ブレ補正付き超広角ズームを使って、構造物の造形美を狙ってみよう。
ワイドな焦点距離と安心の手ブレ補正を両立
タムロン「SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD」は、全域F2.8の明るさを誇る超広角ズームレンズだ。キヤノン用とニコン用が2014年に、ソニー用が2015年にそれぞれ発売。選択肢が少ないフルサイズ対応の大口径超広角ズームの分野では、手ブレ補正内蔵という個性が光る逸品である。
ちなみに純正の大口径超広角ズームでは、2007年発売のニコン「AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED」(市場価格20万円前後)が高評価を得ているが、タムロンのSP 15-30mm F/2.8 Di VC USDはその約半分となる求めやすい価格が魅力の1つ。希望小売価格は14万円(税別)で、実売価格でいうと10万円前後で入手できる。
まずは基本スペックを確認しておこう。焦点距離は15〜30ミリで、開放値は全域F2.8。レンズ構成は、複数枚の非球面レンズや異常低分散レンズを含む13群18枚。超低屈折率のナノ構造膜を持つ「eBANDコーティング」によってゴーストやフレアを抑えつつ、防汚コートによって付着した汚れや水滴を素早く拭き取れるように配慮されている。
手ブレ補正には独自の補正機構「VC(Vibration Compensation)」を内蔵。AFは超音波モーター「USD」によって静かにかつ高速に作動し、フルタイムマニュアルも行える。絞りは9枚羽根の円形絞り。レンズ前部が大きく突き出た構造のため、フィルターの装着はできない。サイズは最大径98.4×長さ145ミリ(キヤノン用)で、重さは1100グラムとなる。
最初の写真は、展示された船のエンジンルームを15ミリ側で捉えたもの。広範囲にピントを合わせるため絞りはF8に設定。シャッター速度は1/4秒の低速になったが、手ブレ補正の効果もあり、手持ちながらシャープな描写が得られた。
次の4枚も同じく船の内部だ。対角110度を超える広い画角は、こうした狭い場所での撮影に重宝する。張り巡らされた配線や配管の艶めかしい様子を狙いどおりに再現できている。
マニュアル(F11、1/20秒)、ISO400、焦点距離:15mm、ホワイトバランス:太陽光、カメラ:EOS 6D
最短撮影距離は全ズーム域で28cmに対応。最大撮影倍率は1:5(焦点距離30ミリ時)。特に接写に強いというほどではないが、フルサイズ用の超広角ズームとしてはまずまず寄れるといっていい。
次のカットは、ズームの15ミリ側を使って最短撮影距離付近で写したもの。被写体は、長さ約20センチの金属製看板だ。ワーキングディスタンスは実測で約15センチ。絞りを開放値のF2.8にセットすることで、背景となる木漏れ日の部分にきれいな玉ボケを作り出した。超広角ズームながら開放値が多少明るいので、こうしたボケの表現も可能だ。
シャープな描写と超広角ならではのパースペクティブ
写りは、ズーム全域でのシャープな解像を実感できた。次のカットは、ズームの15mm側を使って絞り開放値で写したが、画面中央から周辺まで精密でくっきりとした描写を維持できている。
歪曲は15ミリ側でタル型、30ミリ側で糸巻き型が見られる。倍率色収差は少なめ。周辺減光は、15ミリ側の開放値でやや大きいが、2段程度絞り込むと気にならない程度まで低減できる。
用途としては、目の前に広がる風景や建造物をすっぽりと捉えたり、狭い室内の状況をきっちりと伝えるのに打ってつけだ。大きくて重いため、スナップ用に持ち歩くのは少々疲れる。だが、標準ズームとはひと味違った、超広角ならではの強いパースペクティブとデフォルメ効果を生かして、都会の1コマを切り取るのは結構面白い。今回の試用では、撮影中に重さを忘れてしまうくらい、超ワイドな視覚を楽しむことができた。
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