交換レンズ百景
プラス5度の余裕がある大口径の新標準レンズ――タムロン「SP 45mm F/1.8 Di VC USD」
大口径単焦点ではクラス最高を誇る近接能力
タムロンから、画質にこだわる新「SP」シリーズの単焦点レンズとして「SP 45mm F/1.8 Di VC USD」が登場した。これまでの同社製品とはひと味違う新デザインを採用しつつ、手ブレ補正機構「VC」や超音波モーター「USD」、防汚コート、簡易防滴構造などを備えたフルサイズ一眼レフ対応の標準レンズである。
まず注目したいのは“45ミリ”という珍しい焦点距離だ。かつてフィルムの一眼レフの時代には「Carl Zeiss Tessar T* F2.8 45mm」や「AI Nikkor 45mm F2.8P」「XR RIKENON 45mm F2.8」といった製品があったが、デジタル時代になってからはフルサイズ対応の45ミリ単焦点レンズというのは、特殊なシフトレンズ以外ではほとんどない。
標準レンズとして一般的な50ミリレンズに比べると、焦点距離は5ミリ短い。画角で言うと、50ミリの対角線画角が約46度であるのに対して、45ミリは約51度。その差は約5度だ。小さな違いではあるが、ふだん50ミリの画角に慣れている人なら、プラス5度の広さによって少し違った感覚が味わえるだろう。もちろん、広いといっても広角と呼べるほど広くはない。画角にちょっとだけ余裕がある標準レンズ、といったところだ。どんな写りをするのか、早速実写を見てみよう。
最初の写真は、屋外のテーブルに置いた書物と眼鏡を捉えたもの。被写体までの距離は約50センチ。椅子に座ってカメラを構え、目の前のテーブル全体は写さず、その一部分を切り取る感覚でフレーミングするのに使いやすい画角だと感じた。絞りは開放値のF1.8を選択。ピントを合わせた部分はシャープに解像し、そこから前後に向かって滑らかなボケが生じている。
次も同じく絞り開放値で撮影したもの。標準レンズとして抜群に明るいというほどでないが、ボケ表現を楽しむには十分な開放値といえる。ボケのフチにはマゼンタとグリーンの軸上色収差がやや見られるものの、ボケ自体は滑らかで美しい。
最短の撮影距離は29センチで、最大の撮影倍率は0.29倍(1:3.4)に対応。単焦点の標準レンズとしてはかなり寄れるといっていい。次の2枚は、植物園の温室で写したフウリンブッソウゲとランの花。こうしたこぶし大の花ならクローズアップで捉えることが可能だ。
写りは、画像中央部では開放値からくっきりと解像する。四隅はやや甘いが、絞り込むと全域でシャープな描写となる。次のカットは絞りF10で撮影。屋根飾りの細かい部分まできっちりと再現できている。
撮影自由度を広げる簡易防滴構造と防汚コート
レンズ鏡筒は高品位な金属素材となる。全体をうっすらとしたツヤのある黒の光沢仕上げでまとめつつ、根元の部分には淡い金色のリングを配置。さらに、これまでとはデザインが異なる新しい「TAMRON」のロゴマークを採用したり、SPの文字を刻んだエンブレムを側面にあしらったりすることで、新ブランドの上品で洗練されたイメージをアピールしている。
レンズのサイズは、最大径が80.4ミリで長さが91.7ミリ。重量は540グラム(いずれもキヤノン用の場合)。フィルター径は67ミリ。近接性能を実現するためのフローティング機構を採用し、フルサイズの標準単焦点では初となる手ブレ補正機構も内蔵しているため、開放値F1.8の標準レンズとしてはやや大きくて重い。ただ持ち運びが苦になるほどではなく、今回使ったカメラ「EOS 6D」装着時のバランスは悪くない。
フォーカスリングには、回しやすい幅広のものを装備。ゴムローレットは手にしっくりとなじみ、適度なトルクを感じながらマニュアルフォーカスの操作がスムーズに行える。AFスピードについてはまずまずといったところ。超音波モーター駆動なのでAF作動音は比較的静かだ。
多少の水ぬれは問題ない簡易防滴に対応することや、最前面のレンズに防汚コートが施され、付着した汚れも簡単に拭き取れることは使い勝手を高めるポイントとしてありがたい。また、反射防止として独自のeBANDコーティングを採用。逆光条件でも、フレアやゴーストが気になることはほとんどなかった。
本レンズはフルサイズ対応だが、APS-Cサイズのカメラにももちろん使用できる。その場合は約70ミリ相当の中望遠レンズとして利用可能だ。次の2枚は、マウントアダプターを介してAPS-Cサイズ機キヤノン「EOS M3」に装着して撮影したもの。四隅までの精細な写りが味わえる。
今回の実写では、光学的な誇張が目立たない自然な画角を生かしつつ、身の回りの風景やスナップ、マクロ撮影を気軽に楽しむことができた。特に、ほかの標準レンズよりわずかに短い焦点距離と、対象物にグッと近寄れる近接性能に面白さを感じた。既に50ミリレンズを持っているユーザーでも、ちょっとだけ視点を変えたいなら試す価値はあるだろう。
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