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2006年10月30日 00時00分 更新

本当にモバイルWiMAXでいいのか──IEEE802.20とモバイルWiMAXの大きな違い (1/3)

次世代のモバイルブロードバンド技術として注目されている「モバイルWiMAX」だが、本当にモバイルWiMAXを採用すれば未来は開けるのか。クアルコムジャパンはIEEE802.20との比較を通し、そこに疑問を呈す。

 この秋は、番号ポータビリティー(MNP)制度の開始により、最新端末や最新サービスの発表合戦が熾烈を極めた。しかし、それも一段落して、あとは審査員たるユーザーの裁定を待つばかりだ。

 一方、携帯電話の基礎技術を作る人々は、そろそろ3Gの次に来る携帯電話技術の議論をしなければならない。来年以降の携帯電話では、数世代前のパソコンと変わらない高性能なプロセッサーやVGA以上の高解像度ディスプレイも当たり前になる。データ通信機能も、それに見合った「ブロードバンド」水準に進化することが必然の流れである。

 まもなく、乗り物に乗りながらでもGoogle Earthのような高解像度の映像アプリケーションが使える夢の時代がやってくるかもしれないと夢が膨らむ。

 しかし、そんな夢が今、危機に瀕していると「待った」をかける呼び声がある。

Photo クアルコムジャパン ワイヤレスブロードバンド事業推進室ディレクターの川端啓之氏

モバイルWiMAXの未来は本当にバラ色なのか!?

 現在、モバイルのブロードバンド技術の急先鋒として注目されるのが、米Intelらを中心とした350社以上の企業が標準化を進めている「モバイルWiMAX」だ。モバイルWiMAXは、仕様上は最大75Mbpsでの通信が可能で、時速120キロで移動しながらでも使える。同技術を使えばADSLを上回る速度で無線通信ができ、夢のワイヤレスブロードバンドが現実になると言われている。KDDIも同技術を既存の3Gネットワークと組み合わせて利用することを検討している(2月9日の記事参照)

 しかし一方で、このモバイルWiMAXの採用が、ワイヤレスブロードバンドの未来を閉ざしてしまうかもしれない、と危惧する声もある。その声は、モバイルWiMAX陣営が主張しているスペックはあくまでも理論上の数値で、現実からはかけ離れているものだと警鐘を鳴らす。問題を指摘するのはクアルコムジャパン。モバイルWiMAXと競合すると目される高速無線通信技術「IEEE802.20」を推進する企業だ。

 クアルコムジャパン ワイヤレスブロードバンド事業推進室ディレクターの川端啓之氏によれば、モバイルWiMAXの性能は「3Gで使われている方法でシミュレーションを行うと、通信速度は基地局のすぐ近くでも20Mbps程度」だという。わざわざ「基地局のすぐ近く」と限定したのは、2.5GHz帯では基地局から離れると信号の減衰が著しく、別の基地局からの電波の干渉も受けやすいからだ。同じシミュレーションによれば、電波を3波使っても、基地局から1.4キロの距離での通信速度はなんと32Kbps程度にまで落ちてしまうという。これでは数世代前のPHSの通信速度だ。

Photo モバイルWiMAXでは、セルの周辺部で電波が受信できない可能性がある。電波を3波使っても、基地局から1.4キロの距離での通信速度は32Kbps程度 ※【参考文献】資料2021-WG4-8、4-8-1、4-8-2、4-8-3(BWA5/26作業班資料)

 実はこの電波の干渉問題のせいで、基地局と基地局との間には、通信できないエリアができる可能性も高いという。モバイルWiMAXは、今日の携帯電話のように、周囲一帯にくまなく電波が届くわけではないのだ。しかも電波を1波使った場合では何と基地局から600メートルのエリアしかカバーできない。

 この指摘は、「競合企業の言いがかり」に聞こえるかもしれないが、実はIntelやKDDIの提示している資料やインタビュー記事を読んでみると、両社もこれらの問題点を認めていることがわかる。

 例えばIntelは、モバイルWiMAXは広域のホットスポットのようなものと位置づけており、携帯電話のネットワークのようにいつでもどこでもつながるネットワークというよりは、Wi-Fiのホットスポットの広域版のようなものをイメージしているようだ(9月29日の記事参照)。一方KDDIは、電波が届かないエリアがあることを認めており、そうしたエリアではCDMA2000 1x EV-DO(CDMA 1X WIN)のネットワークに切り替える利用法を提示している(2005年7月15日の記事参照)。イー・アクセスも、モバイルWiMAXをHSDPAの補完として利用する構想を持つ(2005年5月23日の記事参照)

Photo モバイルWiMAXのサービスエリアはホットスポットのように基地局の周辺部だけになる可能性がある。これに対して802.20は途切れることなく面でエリアをカバーできる ※【出展】クアルコムジャパン

 しかし、それではいつまでも今日の通信技術に頼らなければならないうえ、携帯電話とモバイルWiMAXの2つの通信システムをサポートする必要があり、消費電力や端末コストの点で不利になる。

 今後、高速なワイヤレスブロードバンド通信インフラを活用する便利なサービスが登場したとしても、それをモバイルWiMAXで利用するためには、最寄りのアンテナを探す必要がある、なんてことになったら、今あるホットスポットのサービスとあまり変わりがない。本当にこれを「モバイル」サービスと呼んでいいのだろうか。

技術は長期的視野で考えるべき

Photo

 モバイルWiMAXが唯一のワイヤレスブロードバンド技術で、これ以外に選択肢がないなら「そういうもの」としてあきらめるしかない。だが、他にもっと接続性も高く、移動中の通信にも強い技術があったとしたらどうだろう。

 現在、モバイルWiMAXと同じ2.5Ghz帯を使う通信システムの候補はほかに3つある。1つめはクアルコムジャパンが推す、IEEE802.20ベースのMBTDD-Widebandという技術。2つめは同じIEEE 802.20ベースだが、京セラが推すIEEE802.20 MBTDD-625kMCという技術、そして3つめは次世代PHSの技術だ。

 クアルコムが推す、IEEE802.20 MBTDD-W(以下802.20)はアンテナ直近での通信速度は18Mbpsと、モバイルWiMAXの実測値をわずかに下回るが、その代わりアンテナ間の距離が2.5キロという設定で、ブラックアウト無しの100%のカバー率を達成する。つまり、基地局間で途切れることなく高速通信ができる。

Photo IEEE802.20では100%のカバー率を確保でき、基地局間で途切れることなく通信が可能だ。※【参考文献】資料2021-WG4-8、4-8-1、4-8-2、4-8-3(BWA5/26作業班資料)
Photo 携帯電話キャリアT-Mobileは欧州で高速鉄道車両を使ったFlash OFDMの実験を行っている。(時速300キロ)

 川端氏は「802.20なら、セルラー(携帯電話)並みのカバー率を実現できる」と話す。しかも、もっともパフォーマンスが落ちる2つの基地局の間(セル端)でも、約1.9Mbps程度の高速通信が保てるという。高速移動での利用についても、時速250キロを超える移動速度でも対応可能で、モバイルWiMAXを大きく上回る。これは米QUALCOMMがFlash OFDM(後述)で実証している。

 「WiMAXは、もともとFixed Wireless Access(FWA)、固定無線アクセスの技術として誕生しました。モバイルWiMAXは、FWAの需要がそれほど高くなかったので、これをモバイル用に拡張したものなんです」(川端氏)

 FWAは、ADSLなどの導入が難しい家屋向けのブロードバンドソリューションで、例えばマンションの近くの電柱に置いた基地局とベランダに置いたアンテナを結ぶ通信の技術だ。日本ではスピードネットがこれを採用していたが、今年になってサービスを終了している。

 「これに対して802.20は、当初からモバイル通信のために開発された技術です。次世代携帯電話の標準化団体である3GPP2でも、高速化インタフェースとして採用される見込みです。移動しながらの利用なら、802.20が断然有利です」

 「WiMAX」のような響きのよい愛称こそないが、「802.20は誕生時から高速な『モバイル通信用』の技術として開発されてきた技術で、技術としての素性は確か」と川端氏は話す。

 こうした優れた候補があるにも関わらず、携帯キャリアなどの事業者は「モバイルWiMAX」一辺倒に傾きつつある。こうした規格は、一度決まってしまうと、後からそれを覆すのはなかなか難しい。一時の趨勢に任せてシステムを選んでしまうことで、将来の発展が妨げられる可能性もある。それだけに「結論を急がずに、可能性を今一度、慎重に議論して欲しい」というのが川端氏を始めとするクアルコムジャパンの切実な願いだ。

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提供:クアルコムジャパン 株式会社
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2006年12月11日