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海外の携帯コンテンツ市場にどうやって進出するか──。国内で成功したコンテンツプロバイダにとって、これは判断の難しい問題だ。さまざまな選択肢があるなか、BREWプラットフォームを活用すれば、海外展開はかなり容易になる。 “CDMAあるところにBREWあり”──。世界のCDMA通信事業者が利用するQUALCOMMのチップセット上で動作するBREWは、今やCDMA圏の標準的なアプリケーションプラットフォームとなってきた。 国内のKDDIをはじめ、米Verizon Wireless、中国の中国連通(China Unicom)、韓国KTFなど有力CDMAオペレータが続々とBREWサービスを開始しており、既にBREWに対応した携帯電話は90機種以上、1400万台以上が販売されている。アプリケーションのダウンロード数は5500万件以上になっている。
これら複数の国々、複数のオペレータに向けてコンテンツを展開する際に、まず気になるのは移植性だ。端末メーカーや各オペレータが独自拡張を施し、端末自体の性能も異なるJavaと異なり、BREWは極めて均一なアプリケーションプラットフォームといえる。基本的にBREWはQUALCOMMチップ上で動作し、APIもQUALCOMMが整備しているからだ。
ハードウェア/API両面に渡る共通プラットフォームにより、BREWアプリケーションの互換性は極めて高い。 KDDI向けにパーソナルナビゲーションシステム「EZナビウォーク」のアプリケーションを提供しているナビタイムジャパンは、中国連通向けにもナビゲーションアプリ「igogo」を今年7月から提供を始めた。 「BREWは全世界共通でAPIが整備されているので、現地に地図さえあれば、アプリケーションをすぐに動かすことができました。JavaなどではCPUが異なるとアプリの動きが変わるので機種ごとにカスタマイズが必要なケースが多いですが、BREWはCPUもQUALCOMM製に統一されているので、同じアプリでスピーディに海外展開できるメリットは大きいです」とナビタイム。QUALCOMMの共通プラットフォームにより、容易かつ短いスパンで海外展開が可能であったことを明かす。 また海外向けアプリの場合、現地での実機を用いた開発と試験が一つのハードルとなるが、クアルコムジャパンが海外の窓口としてサポートすることで負担が軽減される(BREWデベロッパーラボ参照)。 北米でISmart Extension(国内ではE-アニメータ/MotionART)を展開しているシャープは、「実装依存部などの不明点に関してもクアルコムが窓口となってくれるため、煩雑な手続きを行わずに済み、効率よく開発を行えました。また、NSTLによるTRUE BREW認定の枠組みにより、日本での検証が不可能な網アクセス関連の機能についても十分なテストができ、安心してリリースできたと考えています」と話す。 もう一つ、忘れてはいけないのがコンテンツ管理の問題だ。日本国内だけを見ても、コンテンツの管理はキャリアごとに異なっており、それだけコンテンツプロバイダの負担は増す。
「BREWプラットフォームでない場合、キャリアごとに課金方式やコンテンツフォーマットが異なるため、複数の仕様に対応するコスト、そしてコンテンツを制作する上でスケールメリットが出しにくいという問題があります」と、BREWプラットフォームを使って16和音の着信メロディの配信を北米で行っているフェイス(米Faith West)は、QUALCOMMが仕様を統一・整備したことが大きな効果をもたらすと見ている。 BREWでは、QUALCOMMが用意した管理システムを各キャリアが共通で利用する仕組みになっており、コンテンツプロバイダの負担が大きく軽減される。さらに、著作権保護の仕組みなどが確立されている点も重要なポイントだ。 「海外ではJavaを採用したキャリアの場合、DRM(Digital Rights Management)の導入が確立されていなかったり、認証課金システムやダウンロードサーバの仕様に違いがあったりと、キャリアに対する個別対応が思いのほか手間になります。BREWを採用したキャリアの場合にはBREWサーバの仕様が統一されており、またBREW Extranetを通じて一律にコンテンツのセットアップや現在のステータスが取得できるため、大変に助かっています」。こう話すのは、北米Alltel向けに「Pengo」などのゲームをBREWで提供しているSEGAだ。 最後に、これまで端末メーカーやキャリアに採用してもらうしかなかったミドルウェアにも、BREWプラットフォーム上であればビジネスチャンスがあることを指摘したい。「BREW Extension」だ。
Extensionは、ほかのBREWアプリから利用できるライブラリモジュールを指す。WindowsでいうDLLやUNIXのDSOなどに当たる。 シャープが提供している「ISmart Extension」は、その具体例の一つだ。2Dベクターグラフィックス描画エンジンであるISmartは、国内では「E-アニメータ」の名称で組み込みソフトウェアとして複数の端末に採用されていたものだ。これがBREW Extensionとして提供されることで、各コンテンツプロバイダはISmartの描画エンジンを利用したBREWアプリケーションを提供することが可能になる。 ユーザーはExtensionを意識する必要はなく、あるBREWアプリケーションがExtensionを必要としていれば自動的にExtensionもダウンロードされる。 秀逸なのはExtensionの課金プランだ。Extensionを利用するBREWアプリの売り上げに対するレベニューシェアの形で、Extension開発者が設定できるようになっている。「例えば、“アプリケーションの1回のダウンロードにつき10円”とか、“アプリケーションの売上の5%”などの形で設定できる」(クアルコムジャパン) 優秀なミドルウェアの技術を持っていても、キャリアや端末メーカーが採用してくれるかどうか──。かなり政治的な要素も強かった組み込みソフトウェアの世界でも、実力勝負ができる環境がBREWには用意されているわけだ。
こう見てくると、CDMA圏と呼ばれている地域は、コンテンツプロバイダにとって“一つのBREW市場”と呼んでもよさそうだ。言語の違いだけは残るものの、アプリケーションのAPI、コンテンツの著作権保護、課金システムなどの面で、BREWは均一な共通環境を提供している。Javaなどと異なり、世界進出が容易でオープンな環境が既に整っている。 そしてBREWに対応する端末は急速に増え、BREWプラットフォームを採用する地域・オペレータは今後もますます増加していくことは間違いない。 関連記事
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