MVNOが生き残るために必要なことは? ジャーナリストとIIJ中の人が徹底討論:IIJmio meeting 20(2/3 ページ)
IIJが、20回目となるファンミーティング「IIJmio meeting 20」を7月14日に東京で開催した。「ジャーナリストが本音で語る、MVNOここだけの話」というテーマで、トークセッションを実施。業界動向、通信品質、料金・サービストレンドについて語り合った。
MVNOの通信品質はどうすれば向上するのか
現在、MVNOの弱点といえば、ランチ時や夕方の帰宅時間帯に通信速度が極端に遅くなること。以前から言われてきたが、改善されていない。また、通信速度を改善しようとして、“通信の最適化”に踏み込むMVNOもある。mineoはユーザーに事前告知せずに最適化を行ったせいで騒ぎになり、謝罪をする事態となった。
石野氏は「買った帯域とユーザー数のバランスが崩れると速度が遅くなる。ピーク時に合わせて帯域を買うことはできないという仕組みは、理解できるが納得はできない」と1ユーザーとしての実感を述べた。石川氏も「格安スマホの注意点を聞かれたら、昼の時間帯は利用を避ける方がいいと言わざるを得ない状況。抜本的に変える仕組みが必要」とし、「接続料の在り方を考え直してもいいんじゃないか」と提言した。業界関係者の中でも、接続料の計算方法や仕組みを変える必要があると考える人がいて、吉澤社長は、MNOとMVNOで比較的自由に契約を締結できる「卸(卸電気通信役務契約)で借りた方が柔軟なプランを作れる」という発言をしているという(卸電気通信役務契約については、こちらの記事を参照)。
石野氏は「時間帯で借りる帯域をダイナミックに変えるような話も出ているけれど、技術的にかなり難しいので、吉澤社長は本当にできるか分からないというスタンス。一方で、卸の事例は法人向けやIoT向けが多く、格安SIMに対して適用できるかは疑問もある」と説明した。
佐々木氏は接続料について「MVNOがここまで日本で数を増やした一番の功労者といえる制度」と評価している。今すぐ接続料を廃止することはないとしながらも、「接続料という制度が、身の丈に合わなくなってきた」と考えている。接続料は日本通信が2007年に総務大臣裁定をして出来上がった制度で、当時のMVNOと現在のMVNOが置かれている環境は大きく異なる。「もっと自由度の高い制度にする検討はしたい」と期待をにじませた。
なお、mineoの通信の最適化に関する騒動については、「通信速度の低下があれだけ著しくなると、気持ちとしては分かるが、ファンファーストと言っているmineoらしくない対応。言っていることとやっていることが矛盾する部分もある」と石野氏はmineo側の対応に疑問を呈した。
MVNOの料金は安すぎる?
2、3年前のMVNOの料金競争は、現在は落ち着いており、3GBで900円、音声通話機能をつけて1600円くらいがスタンダードだ。他に、端末や電話かけ放題をセットにして、1480円、1980円、2980円で提供するプランも増えてきた。LINEモバイルのカウントフリー(データフリー)やビッグローブのエンタメフリーのようなサービスを提供するMVNOも増えている。
石川氏は「プランが多いとユーザーは自分に合ったプランが分かりにくく、少ないと分かりやすいが、自分に合ったものが選べない」と料金プランの難しさを指摘。複雑化とシンプル化を繰り返してきていると説明した。そんな中、アグレッシブなのが楽天モバイルで、「MVNOでありながらY!mobileを意識した料金プランになっている。格安スマホ市場は、Y!mobileがいて、それをマネするUQ mobileがいて、さらにそれを追いかける楽天モバイルという構図になっている」(石川氏)
石野氏は「3GBで900円は下げ過ぎた気もする」と指摘。ユーザーが満足する通信速度を実現できず、それでも赤字になっている状態は「ユーザーから適切な料金を取っていないということ」だが「値上げはすごく難しい。最初に下げたことが、今になって問題を大きくしている」と分析した。
石川氏も同様に、「接続料が下がったら、どこかが料金を下げ、他もそれに対抗する。結果、黒字化が遠のき、撤退に追い込まれる可能性もある。安すぎることが良いことなのかを考える必要がある」と指摘。
太田氏は、ユーザーにとって価格競争は良いこととしながらも、「行き過ぎは問題。価格以外のところで、MVNOそれぞれの特徴を生かしたサービスの作り方もあると思う。大手と違うことをやって、MVNOの特色が見えるといいと思う」と特徴あるサービスでの差別化に期待した。
石野氏は特徴あるMVNOのサービスとして、IIJのフルMVNO化と、トーンモバイルが子どもやシニアに特化していることを挙げている。
なお、MVNOの料金に関しては、石川氏から、MVNOによるキャッシュバックの影響でドコモからユーザーが流出しているという吉澤社長の話が紹介された。石野氏も、キャッシュバックを行っているサブブランドがあることと、業界内でやり過ぎだという意見が出ていることを述べた。
佐々木氏は「キャッシュバックも1つのマーケティング」という考え。サブブランドという形で料金が値下げされてからは、「むしろMVNOとしては20万円とか30万円のキャッシュバックをしてくれていた頃の方が、はるかに戦いやすかった」と明かした。「キャッシュバックについて、ぜひたたいてくれと言われることが結構ある。しかし、キャッシュバックよりも、MVNOとMNOの多様性の方がずっと大事だということを原理原則に頑張っていきたい」と意気込んだ。
また、料金を下げすぎたという石野氏の指摘に対しては「耳が痛い」としながらも、佐々木氏は「通信品質を犠牲にしても料金を下げなければ、競争からはじき出されてしまった。通信品質と価格のバランスについては、MVNOが決めたのではなく市場が決めた」と語った。Y!mobileとUQ mobileは、「全然違うところから全然違う方々がエイリアンみたいに攻めて」きて、MVNO各社は「額を集めて、どうしようかと相談している状況」。接続料の制度が時代にマッチしなくなり、MVNOにとっての状況が過去と異なる現在、「汗をかいて血を流して、新しいチャレンジをしなくてはいけない。新しい通信品質と価格のバランスを提供していかなくてはいけない立場にいる」と決意を語った。
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