キャリアの脅威になる? IIJmioの「eSIM」が業界に与えるインパクト:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
IIJは7月18日から、個人向けのeSIM対応データ通信サービスを開始する。6GBプランしかなく、対応端末も限られるが、オンラインで気軽に“2回線目”を追加できるのは魅力だ。サービス詳細や、市場に与えるインパクトを検証する。
DSDSを生かし、「2回線の方が安い」を打ち出したIIJ
もっとも、いくら手軽に使えるとはいえ、料金や通信速度など、回線としての魅力がなければユーザーの食指は動かない。また、今のところ、加入者管理機能を使ったフルMVNOのサービスはデータ通信限定になるため、ユーザーが電話のできるメインの回線を移すことはできない。iPhoneの場合、SIMカードスロットに入れた1回線目で電話の待受けをしつつ、2回線目のeSIMでデータ通信ができるが、IIJが取ったのは、その2回線を取っていくという戦術だ。ユーザーにとっては、MNPなどの煩雑な手続きをする必要なく、料金を抑えられるのがメリットになる。
ライトスタートプラン(eSIMベータ版)は、月6GBまで高速通信が利用でき、料金は1520円(税別、以下同)。普通に考えると、2回線の方が1回線より高くなりそうだが、MVNOであるIIJmioのデータ通信料金は、MNOよりも割安に設定されている。データ通信だけを2回線目に任せるようにすれば、トータルで料金を下げられるというわけだ。実際、IIJは1回線目にauの「新auピタットプラン」、2回線目にIIJのライトスタートプランを使ったときのシミュレーションを公開していたが、au回線を1GB未満に抑えれば、全体で7GBまで使えて、料金は3500円に収まる。
新auピタットプランを家族3人で契約し、4GB以上データ通信を使うと、料金は4980円になる。1回線だけで使うよりも、2回線目を加えた方が、毎月1480円も安くなるというわけだ。auには、月7GBの「auフラットプラン7プラス」もあるが、こちらも家族3人で契約したときの料金は4480円で、2回線目にIIJmioのライトスタートプラン(eSIMベータ版)を使った方が安い。発表会で披露されたのはauのケースだけだったが、ドコモの新料金プランも新ピタットプランに近い、段階制の「ギガライト」が主力になっているため、同様に料金を抑えられる。
ソフトバンクも、「ミニモンスター」を選択すれば、1GBまでの料金は1年目限定で1980円、2年目以降は2980円になる。ライトスタートプラン(eSIMベータ版)と合算すると4500円(2年目以降)になり、ドコモやauで家族割引を適用したときより料金は高くなるものの、ミニモンスターで5GB以上使うと料金が8480円(2年目以降)になるため、単体で契約するより4000円近く料金が安くなる。ミニモンスターは、ソフトバンクが主力とする「ウルトラギガモンスター+」と比べてお得感がなかったが、ライトスタートプラン(eSIMベータ版)との組み合わせであれば、選択する価値もありそうだ。
もちろん、同様のことはDSDS(デュアルSIMデュアルスタンバイ)に対応したAndroid端末を使い、2スロット目にIIJmioのSIMカードを挿せばできたが、現状、キャリアの販売するAndroid端末は、全てシングルSIM仕様のため、DSDS対応のSIMロックフリー端末を別途購入しなければならない。大手キャリアが販売するiPhoneのSIMロックを解除するだけで、そのままeSIMが利用できるインパクトは非常に大きい。しかも日本では、iPhoneの販売シェアが約4割と抜群に高い。約4割のうち、全てが最新のiPhoneというわけではないが、今後も徐々に対応機種が増えていくことを考えると、決して影響は小さくないはずだ。
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