News 2000年12月22日 11:59 PM 更新

21世紀に間に合った快適なメガビット環境

 DSLは開通したものの,ノイズに悩まされて……,というところまでが前回のお話。アドバイスを含めて,何通かのメールをいただいたが,中には“誤解を生む原因になってDSL普及を阻んでしまう”というようなご指摘もあった。念のために補足しておこう。

 正しい接続,つまり,壁のモジュラージャックにスプリッタを接続し,そこにルータと電話機をつなぐだけであれば,全くノイズはない。通常の電話回線にDSLの信号を重ねることを「重畳」というが,重畳による問題は皆無だ。

 しかし,回線がいくつかに分岐され,その先に1台でも直に電話機がつながっていると,その電話機では,使いものにならないくらいのノイズが出るし,スプリッタに接続した電話機にも多少のノイズが乗ってしまう。

 したがって,回線にはスプリッタだけを接続し,そこからすべての電話機に回線を配線するという正しい方法で接続すれば,問題はない。

 ところが,多くのマンションでは,そういう配線をするには,新たな工事が必要になる。今回は,サポートに出したメールにも返答がなかったため,東京めたりっく通信の広報を通じて,追加のスプリッタとノイズフィルタを借りた。各電話機の直前に接続して評価してみたところ,その結果,ノイズはなくなった。こうしたケースを考慮し,フィルタ類の別途供給を追加オプションとして提供するようにしてはいかがかと思う。

 DSLはダメだというような意図は全くない。その実用性を高く評価した上での提案である点を理解していただきたい。


ADSLのスプリッタ(左)とノイズフィルタ(右)。意外と小さい

 と,いろいろあったはあったが,DSLの導入による環境の変化は劇的だ。現在は,ユーザー数が少ないという面もあるのだろうが,ダウンロードなどをしてみても,170Kバイト/秒程度をコンスタントに叩き出す。うちに来ているもう1つのインターネット経路であるOCNエコノミーのほぼ10倍という感覚だ。

 今回,利用を開始した「Family1600」サービスの場合,料金は,東京めたりっく通信に対して8000円,重畳使用のために,NTTへの支払いが800円となる。また,これとは別に,初期費用として3万2000円が必要だ。初期費用は結構高いと思うのだが,この料金の中には,ルータの使用料も含まれることを考えると仕方がないともいえる。

 ルータをスプリッタ経由で回線に接続し,電源を入れると,数十秒間の自己診断のあと,DHCPにより,グローバルIPアドレスを1個取得し,WAN側はこれが使われる。このグローバルIPアドレスは不定で,ルータの電源をオンオフするたびに再取得されて別のものになってしまう。

 また,このルータのLAN側のネットワークは,192.168.1.0/28で,使えるIPアドレスは計16個。そのうち192.168.1.0と192.168.1.15はLAN側のネットワークに使われ,さらにルータ自身が192.168.1.1を使用する。したがって,残るIPアドレスは13個で,ハブを経由すれば,合計13台のPCを接続することができる。NATを使って自由にインターネットを利用することが可能だ。

 ルータに関する設定内容は公開されていない。telnetでログオンしようとしてみたが,パスワードを要求されるので,自分で再設定することもできない。東京めたりっく通信では,サポートをいっさい受けられなくなることを了承すれば,設定変更のためのツールを配布する計画もあるようだが,現時点ではまだ用意ができていないようだ。

ADSL,調査依頼も非対称?

 同社を訪れたときに聞いた話によれば,12月20日時点で,東京23区にあるNTT収容局すべて(105局)の工事が終了し,申し込み済みのユーザーに対して,順に机上調査を申請しているという。この机上調査は,使用する回線がメタルであるかどうかをチェックするものだが,NTT東日本では,その調査依頼をファクシミリでしか受け付けていない。しかも,結果もファクシミリで返送されるらしい。持ち込みもダメなら宅配もだめという状況で,1日あたり200件程度の調査依頼しか送信できないために,未処理件数はたまる一方だという。

 1.6Mbpsの回線を開通させるための調査依頼が9600bpsとは,いくらADSLだといっても,あまりにも非対称だ。現時点で4000件が開通,バックオーダーは1万8600件程度あるというが,同社では,年明けにはなんらかの手段で調整し,未処理分を速やかに解消できる状況に持っていきたいとしている。同社は,DSL市場の中で,約62%のシェアを確保しているとのことだが,ここはひとつDSL業界のパイオニアとしてがんばってほしいものだ。

 東京ふぁいばあ通信(12月15日の記事を参照)も始動し,今後はDSLサービスのバックボーンも自前敷設でギガビット帯域を確保できるようになる。その際には,現DSLサービスを増速し,限りなく8Mbpsに近い帯域を提供することも考えているという。増速でもDSLモデムをいじる必要はなく,センター側で対応するだけ。朝起きたらスピードが上がっているという手間知らずのアップグレードが可能だそうだ。

 今のところ,ブロードバンドコンテンツといっても300Kbps程度のものが各サイトに散在している程度だ。決してリッチなコンテンツとはいえない。やはり,1Mbps帯域の動画をテレビのように気軽に流しっぱなしにできるようにならなければなるまい。その要求がさらに高まるのが2001年だ。アクセス回線,バックボーンのバンド幅,そして肝心のコンテンツなど課題も多いが,なんとかがんばってほしいと思う。

 初めてパソコンを使うようなユーザーも,DSLを申し込み,お店でDSLモデムやルータを購入してきて,イーサネットやUSBで接続すれば,すぐにブロードバンドインターネットを利用できるようになる。はっきりいって,モデムを使ってダイヤルして,プロバイダーと契約し,つないで切ってといったことをやるよりも,ずっと簡単にインターネットの利用を始められる。解決しなければならない問題があるとすれば,その料金だ。これは,まだまだ安くしなければならないだろう。

 ちなみに,今,この原稿を書いているパソコンで,12月22日17時現在のZDNetトップページを開いた場合と,それをローカルに保存したものを開いた場合,両方をリドローしてみると,再描画に要する時間は倍くらい違う。速いのはもちろんローカルのハードディスクだが,双方ともに1秒に満たない。

 20世紀のうちに,快適なメガビット環境が自宅で得られたことを幸せに思いたい。こうした環境を,日本国民全員が平等に得られるような社会のために税金を使ってほしいものだ。300bpsのパソコン通信時代に,最高15万円/月もの電話料金を支払った経験を,いまさらながら懐かしく思う。

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関連リンク
▼ 東京めたりっく通信

[山田祥平, ITmedia]

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