News:アンカーデスク 2003年3月6日 06:05 PM 更新

っぽいかもしれない
「インタラクション2003」、実はわたしも出かけていたのだった(4/4)


前のページ

CoBIT(*10

 産業技術総合研究所の西村拓一氏、中村嘉志氏、伊藤日出男氏、山本吉伸氏、中島秀之氏(*11)による「無電源小型情報端末を用いた位置に基づく情報支援システム」(2002年8月の記事参照)。

 博物館などで、来館者に貸し出されるような小さな音声端末、展示物の前に来るとそれにあった内容の音声が聞き出せるようなもの。あれを極限まで簡単にして、なおインタラクティブ性も持たせたというものだ。

 流したい音声はアンプを通して直接赤外線LEDに送られる。音声の振幅がそのままLEDの光の強弱になるというわけ。このLEDは展示物の脇に置かれる(光量を出すためにいくつも並んでいるけど)。


 音声端末は、太陽電池に直接イヤホンがつながっている。それだけ。全体が1ユニットなので、耳の前側に太陽電池がくることになる。これに音声で変調されたLEDの光が当たって発生した電圧でイヤホンが直接駆動されるというわけ。あいだに能動部品はなんにもない。もちろん他に電源もない。

 最初は駆動が簡単で安価なクリスタルイヤホンを使っていたが、装着感に個人差があり、また壊れやすいという欠点があったので(*12)、耳かけヘッドホンタイプに改良された(太陽電池の面積は少し大きくなった)。でも、基本はいっしょ。


 これでちゃんと聞えるのだ。発表展示では、ちょっと音が小さい傾向があったけど、これはLEDが改良されれば(あるいは数を増やせば)解決される。

 CoBITの太陽電池のまわりには、反射シートが貼られていて、LEDの光をよくはね返す。だから赤外線カメラで撮影するとそこだけがとても目立つようになる。動きをとらえるのも簡単。

 CoBITは直接耳に取りつけられているから、装着者が首を動かすと、その動きはそのままCoBITとその反射シートの動きになる。うなづけば縦に動くし、横に振れば横に動く。画像処理で求めるのは簡単だ。これで、インタラクティブ性もOK。最低限だけど、これ以上が必要なことはあんまりないのかも。

 とにかくシンプルさが美しい。端末側は極めて安価に(数百円?)できてしまうというのもすてきだ。


*10 Compact Battery-less Information Terminal
*11 伊藤、中島の両氏は北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科にも所属。また、端末デザインは山中俊治氏(MORPH3の!)による。
*12 ドラえもん展(2002年7月13日−9月23日、大阪サントリーミュージアム)で実際に試験運用された。



関連記事
▼ 私は、サイボーグ
コンピュータに関わるインタフェース技術全般をテーマとした「インタラクション2003」が27日から28日まで東京で開催された。その招待講演に登場したのが英国のKevin Warwick教授。自らの左腕にチップを埋め込み、センサーと神経をつないで義手を操作するという実験で知られる気鋭のサイバネティックス研究者だ

▼ アクセスした時刻を覚えている引き出し――ユビキタスのリアルな形
最後にアクセスした時刻を覚えている。中身の書類を写真に撮ってデータベース化したり、それを離れたところに送ったりできる。そんな“ドラえもん”的な「引き出し」は、玉川大学の椎尾一郎教授の描いた日用品コンピューティングの具体的な形「Digital Decor」の一例だ

▼ “無電源100円通信端末”で実現する情報支援システム――CoBIT
端末の位置や方向を考慮して、適切な情報を音声で提供する情報支援システム「CoBIT」。超軽量・小型の通信端末はバッテリレスで動作し、将来的には1台100円以下で手に入るという。このシステムの開発者に話を聞いた

[こばやしゆたか, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページ | 4/4 | 最初のページ