News 2003年4月22日 11:50 PM 更新

自作PCは廃棄できなくなる?――暗雲立ちこめる「PCリサイクルシステム」

電子情報技術産業協会(JEITA)が先日説明会を実施した「家庭系PCの自主回収・再資源化システム」。回収対象PCの判断基準などに課題が残るこの新システムを、ユーザーの視点で整理してみた

 今年10月1日から「家庭系PCの自主回収・再資源化システム」がスタートする。先週4月18日には、電子情報技術産業協会(JEITA)が、同システムについて説明会を行なった(別記事を参照)。

 JEITAによると、メーカーによって回収の対象となる“PC”の定義(製品範囲)は、資源有効利用促進法施行令 (第6条/別表第6)で定められた「パーソナルコンピュータ(重量が1キロ以下のものを除く)」および、PCの判断基準を定める省令(第1条)での「パーソナルコンピュータ(その表示装置であってブラウン管式又は液晶式のものを含む)」としている。

 この回収対象には、ソニーのバイオWやNECのVALUESTAR FSのような「モニタ一体型PC」も含まれるほか、メーカー出荷時に同梱されていた標準添付品(マウス/キーボード/スピーカー/ケーブル類など)は「PCの付属品」として回収の対象となる。また上記の定義だと、ソニーのバイオUのような1キロ以下の軽量モバイルノートPCは回収の対象とならないことになるが、JEITAでは「実際には1キロ以下だからといって回収しないメーカーはないだろう」とみているようだ。

 回収対象となる製品は、各メーカーで販売した“家庭向け”のデスクトップPC/ノートPC/PC用ディスプレイ(CRTおよび液晶ディスプレイ)。家庭系PCの回収・再資源化システムを構築するPCメーカーは現時点で21社に及び、JEITAは「国内で販売されるPC製品のほとんどは、同システムの対象となる」と述べる。

PC以外の回収は“法律違反”

 ただし、21社のメーカーが販売する家庭向け製品であっても、プリンターやスキャナなどのPC周辺機器やワープロ専用機、PDAなどは回収対象となならない。「むしろ現行の法律では、メーカーが勝手にPC以外のものをリサイクルのために集めてはいけないことになっている。つまりPC以外の製品を今回のシステムで回収すると、廃棄物処理法の認められた範囲を超えてしまうため“法律違反”となるのだ」(JEITA)。

 ここで、今回のPCリサイクルシステムでの、“PC”の判断基準のあいまいさが露呈する。例えば、最近増えているホームサーバやセットトップボックス(STB)のような「中身はPCだがパーソナルコンピュータと呼ばれていない製品」は、回収対象とならないケースも出てくるという。

 「だが、仮にSTBやホームサーバでも、各メーカーの判断で『STB(パソコン)』と商品に明示してあれば、回収の対象になり得る。今回は法律のもとにPCとモニタのみを対象にしたが、将来的にはその枠が広がり、ホームサーバやPC周辺機器なども回収対象となる可能性は高い」(JEITA)。

 また、すでにPCリサイクルシステム制度が施行されている事業者系PCは、“家庭系PC”を対象とした今回のシステムでは回収できない。

 事業者系PC/家庭系PC、それぞれの処理の違いは以下の通りだ。

事業者系PC家庭系PC
排出者企業などの事業者一般家庭
制度施行2001年4月1日2003年10月1日
メーカー回収産業廃棄物処理者の広域指定を取得して実施一般廃棄物処理者の広域指定を取得して実施
回収業者各メーカーが個別に業者を選定して実施参加メーカー共通で日本郵政公社を採用
無償回収の義務無償回収の義務なし制度施行日以降に販売するPCに無償回収の義務

 この事業者系PC/家庭系PCの区分けも難しいところ。例えば、ビジネスモデルと呼ばれる企業向けPCを個人で使っているケースもあれば、逆に個人向けPCをビジネス用途に使っていることも多い。どのモデルを家庭系PCとして回収対象とするかは、すべて各メーカーの判断に任されているようだ。

 「インストールされているOSで判断するという選択肢もメーカー案にはあった。例えばWindows XPなら、Homeは家庭系だが、Professionalは事業者系という区分けをするというもの。だがこれも一概には当てはまらないため、各メーカーごとに検討している段階」(JEITA)。

 また、ユーザー側で増設した周辺機器を付けたまま回収に出した場合や、回収前にメモリやHDDなど使えそうな部品を取り除いてから排出した場合に回収対象となるかという判断も各メーカーに任されるなど、不確定要素も多い。

 「購入時のままの状態で回収することがリサイクル率にもつながるので、なるべく部品は抜き取らないようにしてもらいたい。だが現実問題として、一部の部品が抜けていた場合でも、メーカーは細かいところまで目くじらはたてないとは思う」(JEITA)。

自作PCの行き場がなくなる?

 そのほか、JEITAが示した“回収対象とならないPC”には、倒産企業やPC事業を撤退したメーカーの製品、個人輸入品、そして自作PCなどがある。これらは「義務者不在」として扱われ、今回のリサイクルシステムでは回収できない。そのため従来通り、粗大ゴミとして自治体などに廃棄を依頼することになる。

 だが10月1日の新システム施行以降、粗大ゴミとしてのPC回収を取りやめる自治体も出てくる可能性もあるのだ。そうなると、自作PCなど「義務者不在」製品の廃棄方法が断たれてしまうことになる。

 「実際にPC回収を廃止するという自治体の声も聞いている。JEITAでは、新システムの理解を深めてもらうため、自治体向けなどに説明会を今後積極的に行っていく予定で、新システム施行後も義務者不在製品の受け皿を作ってもらえるよう理解を求めていく方針」(JEITA)。

 このような“行き場のない”義務者不在のPCを回収するようなシステムを、JEITAが作ることはできないのだろうか。

 「今回のような回収システムは、“メーカー”が一般廃棄物処理者の広域指定を取得して、はじめて実施できるもの。JEITAはメーカーではないので、一般廃棄物処理者の広域指定を取得できない。かといって現行の法律では、自社製品でないPCを、関係ない企業が勝手に集めて処理することもできない。このあたりが難しいところ」(JEITA)。

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関連リンク
▼ PCリサイクル関連サイト
▼ 電子情報技術産業協会(JEITA)

[西坂真人, ITmedia]

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