News 2003年5月12日 03:49 AM 更新

Microsoftの家電戦略で浮上した“AVリモート端末”(2/2)


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 接続すべきPCが存在しない場合でも、ローカルにインストールされたアプリケーションが動作する(Smart DisplayでWindows CE用のIEが動作するように)。さらにサーバとなるPCにアクセス可能な状態であれば、PC上で動作するアプリケーションが、あたかもAVリモート端末で動作しているかのように動くわけだ。

 Media Center PCの家電風ユーザーインタフェースがそのまま利用できるのはもちろんだが、テレビなどディスプレイから離れた場所で操作するユーザーインタフェースを備えるサードパーティ製のアプリケーションも、ここで利用可能だ。PC上でWindowsの機能をフルに生かし、DirectDraw、Direct3Dなど、さまざまなAPIを用いてアプリケーションを構築できる。

 新しいAV機能付きのリモートアクセス機能では、Windows XPのあらゆる描画、動画、サウンド機能を、リモートであることを意識せずにプログラムできる。例えばビデオ表示、例えば3Dグラフィックスの描画、例えばオーディオなど、すべてはローカルPCとほぼ等価なのだ。

 AVリモート端末側には、メディアリッチな機能がレスポンス良く動作するように、メディア処理用DSPなどのコプロセッサの利用を推奨している。3Mbps以上のSDカード上の、あるいは7MbpsクラスのHDD上にあるWindows Media VideoやHD品質のビデオデコード、480iフォーマットのWindows Media Video 9エンコード、ビデオスケーリングなどの能力を持つプログラマブルなメディア処理エンジンをスペックとして求めている。

 またオーディオに関しては、Windows Media AudioやドルビーAC3、DTS、MP3、DVD-Audio、SACDのデコードや16チャンネルのデジタルミキサなどをサポートできるプロセッサを要求する。

 グラフィック機能に関しては、DirectX 8レベルの2D/3Dエンジンを搭載させる。3Dグラフィックのサポートを重視しているのは、将来のWindows(おそらくMedia Center Edition Ver.2)において3Dのリモートレンダリングをサポートするためだ。

 Microsoftは初期段階でDirectX 8レベルの3Dグラフィックス操作をネットワーク経由で端末に送り、端末側でレンダリングを行うソリューションを提供する。さらにLonghornではWindows自身が、すべての描画を3Dオブジェクトとして行うようになるため、リモート端末に対しても3D命令のストリームを送ることですべての画面描画を行うようになる。

 ワイヤレス機能に関しては802.11a/gのサポートを推奨。オンチップのコンテンツプロテクション機能も要求される。Microsoftの担当者は、ワイヤレス機能に関して802.11aを推奨していくつもりという。

 電子レンジが2.4GHz帯を使っているのは広く知られた事実だが、米国ではコードレスフォンが同様の周波数帯を用いており、動画再生中に通信が途絶えるなどのトラブルを避けるため、5GHz帯への移行が必要との見解だった。

 シンプルな端末に対して、コンテンツを送信するだけといったソニーのRoomLinkのようなソリューションではなく、メディアリッチなPC上で動作するアプリケーションのユーザー体験を、そのままネットワーク経由でリモート端末に適用するというアイディアは、いかにもMicrosoftらしい。

 アプライアンス向けの仕様としては、かなり規模の大きな回路が必要となる仕様だが、MicrosoftはATI Technologiesの家電向けグラフィックチップ「Xilleon」を用いたリファレンスモデルを完成させていた。

 Microsoftの担当者は、最初に提供する時期には、それなりに高いコストが必要となるとの見方を示したが、Longhornが市場に投入される2005年程度の時期には、ここで要求されているスペックを満たしながら、(具体的な数字は出さなかったが)かなり安価に仕上げることができるだろうとの見解を示している。



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[本田雅一, ITmedia]

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