News 2003年6月11日 07:14 AM 更新

“ソニーのバイオ”はどこに行く?――彼らが目指す“ホンモノ”(4/4)


前のページ

 「家電業界には、AV家電をフロントエンドとするホームネットワークは、自分たちの領域だと主張する向きもあります。しかし、私はこれが間違いだと思っています。AV家電ベンダーは、まだホームネットワーク製品で市場を作ってはいません。現在、ホームAVネットワークという領域に適応できる技術を持っているベンダーが、入り込み始めているだけです」

 「AV家電ベンダーはAV家電のノウハウと技術を持っている。対してパソコン業界のベンダーはネットワーク技術に長けている。パソコン業界がネット家電に入り込んだからといって、家電業界が領域を侵害していると怒るのは筋が違っています。しかし、まだ誰も成功してはいないが、ホームAVネットワークという市場があることは間違いありません。そこには、ユーザーの生活に変化を与えるパワーがある。Microsoftもソニーも参入してきている」

 MicrosoftはMedia Center Editionで、AVネットワークの中におけるパソコンの役割を定義しようとしている。しかも、Media Center Editionは、すべてのWindowsパソコンベンダーがその技術を利用できる。そうした中で、バイオは、どのような立ち位置を見つけるのか?

 「バイオがOSとしてWindowsを使っているように、Microsoftの提案するもののうち、良いものはバイオの中で積極的に使います。しかしMicrosoftの向かう方向が、必ずしもユーザーに受け入れられるわけではありません」

 「ホームAVネットワークというカテゴリーの中で、われわれはあるアイディアを持っています。ネットワーク、ソフトウェア、ハードウェアを融合させたソリューションです。Media Centerは、われわれももちろん評価を行っていますが、われわれが考えているエリアに対するソリューションやビジョンを、Microsoftは持っていません。バイオはMicrosoftの技術を受け入れながらも、自分たち独自の展開も行います」

 ソニーはホームネットワーク構築の基盤技術でもあるUniversal Plug&Play(UPnP)に強くコミットしている。UPnPの会合の中で、ソニーはその普及や標準化の過程で重要な役割を果たしているとして、UPnPのボードメンバーでもある他社、MicrosoftやIntelからの評価も高い。

 「今はまだホームネットワーク市場は存在していません。市場を創り出すためには、ファウンデーションとなるスタンダードは必要不可欠です。そうした分野は市場創出を行うためにも、リーダーシップを取って提案を行っていきます」

 「ここ数年、ITバブル後に業界は変わりました。Microsoft、Intel、そしてパソコンベンダー各社は、互いに協力してパソコンというプラットフォームを前進させようとしています。例えばUPnPは、Microsoftが起案し、一部ベンダーの主導で普及の糸口を作り、今ではパソコン、家電を問わず業界全体が推し進める規格に変わりました」

 パソコン業界の不景気が、パソコン業界の構造を変えた?

 「ここ2年ほどの間、パソコン業界は、製品の売り方、開発手法、流通など、あらゆる面で過去にないぐらい速い速度で前進しています。この2年は景気が悪いため、結果としてそれらは表面化していません。しかし、水面下では歴史上ないほどの変化がありました」

 「不景気のトンネルを抜けると、驚くほどガラッと変化するはずです。(それは)すべてのデジタル製品に影響を与えます。パソコンの使われ方はもちろん、業界構造が変化するくらいの“事件”が発生します。言い換えれば、われわれのバイオ事業にはまだまだ未開拓のエリアがあるということです」



関連記事
▼ 「SSMS」が示す新しいコンシューマーPCの方向性
ソニー「バイオ」シリーズの夏モデルに搭載される「SonicStage Mastering Studio」(SSMS)は、音楽レコーディングの現場で使われている技術を駆使して、可能な限り品質の高いデジタル音楽データを作り出すソフトだ。この“ホンモノ”の技術が、コンシューマーPCの新しい方向性を示してくれる。

▼ 「いい音」の復権はPCから
最近、“音をいじる”人の裾野が広がってきた。「音が悪い」といわれてきたPCでも、いろいろ工夫をする動きが目立っている。そんな人に注目してほしいのが、夏バイオのほとんどに搭載された「SMS」だ。アナログやオーディオCDなどの音源を、Windowsの制約を超えてブラッシュアップできるのだ。

▼ ソニーが「VAIO Media」で描く未来
今年の夏バイオのウリの一つは、自宅のサーバからWANに向かってストリーミングし、出先のクライアントから視聴できるようになったことだ。その核となるのがものが「Vaio Media」。これはいったい何なのか。ソニーはそれで何を目指しているのだろうか?

▼ 心に訴える“こだわりのモノづくり”――ソニー「QUALIA」
ソニーがコストや生産性を度外視して“モノづくり”にこだわったハイクオリティ志向の新ブランド「QUALIA」を発表した。デフレの荒波によって価格破壊が加速し、あらゆる商品がコモディティ化しているエレクトロニクス製品の流れに、この高級製品ブランドは一石を投じられるのだろうか。

▼ 新型バイオUに見る超小型PCの行方
強力なCPU、薄型バッテリ、広くなった液晶モニタなど“Mobile PC”として見るべき点の多い新型バイオU「U101」。だが、筆者には1つだけ「違和感」を感じざる得ない部分がある

▼ Net MD搭載は“バイオWらしさ”を生かす進化形
液晶・キーボード一体型の人気モデル「バイオW」が、モデルチェンジを行った。Net MDを新たに搭載し、新色を揃えた“新バイオW”の狙いや苦労話などを開発者に聞いた

▼ 「テレビとDVDが熱い」夏のバイオは全ラインアップでビデオデッキPC化
▼ 「一枚板」と「連続感」――“モノづくりにこだわった”新バイオノート
▼ やっぱりオープンスタンダード? “非公開”VAIO Mediaの不思議
▼ 新バイオUの“あのCPU”を載せたC1が欲しい
▼ 国内PC市場シェア、デルが4位に
▼ ソニー、“未来バイオ”のコンセプトモデル発表
▼ ネットワークAVサーバに進化したバイオMX
▼ Microsoftの家電戦略で浮上した“AVリモート端末”
▼ Media Center PCはこの先どうなっていくのか
▼ “ひとり勝ち”ではなく“共生”を目指す――MSの「情報家電戦略」
▼ マイクロソフトが描く、情報家電の近未来像
▼ 本田雅一氏のその他の記事

[本田雅一, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページ | 4/4 | 最初のページ